2019年06月04日 10:52 弁護士ドットコム
今、タピオカミルクティーが空前のブームになっている。東京では、原宿や渋谷、新宿などで、若い世代を中心にテイクアウトしたタピオカミルクティーを飲みながら歩く姿がみられる。InstagramなどのSNSには、「#タピる」「#タピ活」などというハッシュタグとともに、おしゃれな容器に入ったタピオカミルクティーの写真が数多く投稿されている。タピオカミルクティーの店舗情報やレビューが掲載された専門のアプリもある。
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TBS系「マツコの知らない世界」(5月28日放送)でもタピオカミルクティーを特集。都内だけでも300店舗以上あり、中でも激戦区である渋谷区には78店舗がひしめいていると放送された。しかし、ブームの影で、Twitterなどでは「タピオカミルクティーの容器がポイ捨てされている」という報告も増えている。
6月の週末、記者がブームの最先端である渋谷からキャットストリートを通って原宿まで歩いてみた。そこで見つけたのは、道端に放置されて飲み残されたタピオカが腐り、清涼飲料水容器の回収ボックスに突っ込まれているタピオカミルクティーの残骸だったーー。(弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)
渋谷の宮下公園のあたりから、原宿方面へと伸びる遊歩道がある。通称、キャットストリート。1km程度の道には、おしゃれな店舗が立ち並び、週末ともなれば大勢の人がぶらぶらと歩いている。渋谷からキャットストリートに入ってまず驚いたのは、タピオカミルクティーを持っている人の多さだ。若い女性だけでなく、若い男性、年配の人たち、海外からの観光客、とにかく道ゆく人が手にしている。
しかし、キャットストリートに入ってすぐ、「渋渋」の愛称で知られる渋谷教育学園渋谷中学高等学校付近の建物の植え込みに、捨てられたタピオカミルクティーの容器を2つ見つけた。容器の底にはたくさんのタピオカが残っている。何日放置されているのかわからないが、腐っているようだった。小さな虫もたかっていた。
また少し進むと、清涼飲料水の自動販売機があった。傍らに設置された「自販機専用空容器リサイクルボックス」に近づいて中をのぞくと、やはりタピオカミルクティーの容器が詰まっていた。写真を撮ろうとカメラを用意しているうちにも、2人の若いカップルが目の前でタピオカミルクティーの容器をボックスに無理やり押し込んでいった。
植え込みの間にもタピオカミルクティーはあった。近くには、渋谷区が設置した「ポイ捨て禁止 やめよう!タバコ・ガム・空き缶のポイ捨てを」「マナーを守り、まちをきれいに」という警告の看板が立っていた。
結局、表参道に到着するまで、30分程度歩いただけでも、10個ほどの容器が不適切な場所に捨ててあった。もちろん、他のゴミもあったが、タピオカミルクティーの容器の多くは中に飲み残しのお茶やタピオカが残り、より不衛生に感じた。
その後、表参道や明治通りの周辺に集中しているタピオカミルクティーの店舗をいくつか見てみた。どのお店も人気店らしく、行列ができている。店舗によってはエントランスにゴミ箱を設置しているところもあったが、多くの人が買って立ち去っていたようだった。
もちろん、キャットストリートだけでなく、表参道や明治通りにも容赦なくタピオカミルクティーの容器は捨てられていた。
「現状、困ってます」。開口一番、話すのは渋谷区環境政策課の担当者だ。渋谷区では、かねてより来訪者が多いことから、ゴミのポイ捨てに悩まされてきた。1998年から「きれいなまち渋谷をみんなでつくる条例」を施行、主要な駅の周辺を「環境美化・浄化推進重点地区」として指定するなど、ゴミのポイ捨てをなくす活動を進めている。
重点地区である渋谷駅周辺では1日に数回、業者による清掃を行なっているほか、多くのボランティアもゴミ拾いに協力しているが、タピオカミルクティーの容器のポイ捨てで新たな問題が起きているという。
「ボランティアの方たちからの報告で最近、とても多いのがタピオカミルクティーの容器です。飲み残しが多く、固形物であるタピオカの廃棄に困っていると聞いています」と話す。心配なのは、これからの季節だ。「今から夏に向かって飲み残しが腐ったり、虫やネズミがわいたりする心配があります。今後、なんらかの対策を検討しようと考えています」
また、今回現場を歩いて気になったのが、「自販機専用空容器リサイクルボックス」に容器を無理やり突っ込む人の多さだ。タピオカミルクティーの容器は比較的大きいため、ボックスの投入口に詰まってしまい、完全に塞いでいるケースもあった。これでは、本来の清涼飲料水の空容器を入れることはできない。
Twitterでも、「みんなタピオカ買ったらゴミどうしてる?w わたしは駅の構内のペットボトルのゴミ箱派~ ポイ捨て厳禁!」というツイートを見かけた。どうも、リサイクルボックスをゴミ箱と勘違いしている人が多いのではないだろうか。
「とても困っています」。そう話すのは「一般社団法人全国清涼飲料連合会」(全清飲、東京都千代田区)の広報担当者だ。全清飲とは、メーカーや関係団体などで作る業界団体で、飲料業界をめぐる環境問題の対応などを行なっている。
その一つが、2018年11月に出された「清涼飲料業界プラスチック資源循環宣言」である。2030年度までにペットボトルの100%有効利用を実現するため、2019年度から活動を本格化している。重要な役割を担うのが、自販機専用空容器リサイクルボックスの活用だ。
「自販機横にある『自販機専用空容器リサイクルボックス』は、自販機で販売した清涼飲料水のペットボトル、缶、瓶のから容器をリサイクル目的で回収しています。ですので、自販機で購入した容器以外のものを入れないよう、お願いをしてきました」
しかし、全清飲が昨年12月にリサイクルボックスの中身について組成分析したところ、異物が31%も混入していた。たばこの吸い殻や空の弁当箱、カフェなどの持ち帰り用カップが多かったという。特にカフェの持ち帰り用カップはサイズが大きいために、投入口をふさいでしまったり、さまざまな異物が入ることで本来入るべき空容器が入らず、結果的に散乱してしまうという問題が明らかになった。
そこで全清飲では、啓蒙の目的で5月から、「リサイクル目的に空容器だけ集めています」という呼びかけを書いたステッカー50万枚を東京都23区や大阪府全域などで配布を始めた。リサイクルボックスに貼ってもらうという。
「前回、組成分析をした時には、タピオカミルクティーの容器はあまり問題になっていませんでしたが、地域によっては増えていると思います。業界をあげて、リサイクルに取り組んでいますので、リサイクルボックスをゴミ箱扱いせず、自動販売機で売っている清涼飲料水の空容器だけ入れてください」と担当者は話す。
しかし、渋谷駅近くで、そのステッカーを貼られたリサイクルボックスにもタピオカミルクティーの容器が突っ込まれているのを発見してしまった。タピオカミルクティーはおいしいが、買ったら最後まできちんと持ち帰り、適切な場所に捨てよう。