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フィル・スペンサーが“ビデオ ゲームの安全性”についての文章を公開 すべての人がゲームに触れられる世界へ

2019年06月04日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

 マイクロソフト社が、米国時間2019年5月20日に公開されたオフィシャルブログ“Video games: A unifying force for the world”の抄訳を日本法人サイトの「ニュースセンター」内にて公開した。


https://blogs.microsoft.com/blog/2019/05/20/video-games-a-unifying-force-for-the-world/


 この文章は、マイクロソフトの Gamingエグゼクティブバイスプレジデントであり、Xboxプロジェクトの責任者、フィル・スペンサー氏によるもの。ゲームがなんのためのものであり、安全なもの、有意義なもので、それを守るために取り組んでいくこと、業界が一丸となるべきことについて、静かに、しかし熱く記されたテキストとなっている。本稿では、その要点をまとめていく。


(参考:ソニーとマイクロソフトのタッグは“コンソールビジネスの終わり”を示唆するか?


■ゲームはすべての人のためのもの
 スペンサー氏は、科学技術者であった父とゲームを楽しみ、制作までした経験を振り返り、「ゲームはすべての人のためのもの」だと訴える。初心者でも、根っからのeスポーツファンであっても、その立場に関係なく、自由にゲームをプレイし、その楽しさを享受できることを伝えた上で、「もし皆さんが、ゲーマーは主として10代の男性であると思われているのであれば、是非考え直して欲しいのです。子供たちと一緒に遊んでいる両親、世界を探検する冒険者、数学の謎に挑んでいる先生達、遊びを通して孫について知るおばあさん、そして彼らの家族とつながる兵士たちなどがいて、今や26億人もの強いコミュニティであり、現在のほとんどのゲーマーは大人で、半数近くが女性です」と、グラデーションはあれ、実際にあらゆる人がゲームを楽しんでいることをあらためて示した。


■ゲームはすべての安全を促進し、保護する必要がある
 スペンサー氏は、「ゲームは安全な環境である必要があります」と続ける。「ゲームとその世界的なコミュニティの広がりは、映画や音楽よりも大きい、世界有数の文化産業になってきましたが、それは同時にデジタル社会でのヘイトスピーチ、偏見、差別などを生み出すこともあります」と認めた上で、「ゲームは平等のために独自にデザインされています。私たちは、年齢、教育、社会、人種、宗教、政治、性別、志向、民族、国籍、または能力に関係なく、平等の立場に立っています」と訴えた。


 「ゲームは、一緒の考え方を持つゲーマーをひとつにするだけではない」ーーつまり、共通した趣味のユーザーを集めてタコツボ化を招くものではなく、違った人々を「普遍的な楽しさという共通言語を通じて結びるける」と、彼は言う。分極化や偏見に対抗するために効果的なのは、所属するグループ外の人と関係を持つことだという研究(Intergroup Contact Theory)にも言及し、現実の生活のなかで決して出会うことがない人々と、予期せぬ友情を育ませてくれるのが、ゲームの優れた点だと語った。


 またスペンサー氏は、「ゲームは時間の無駄だ、と言う皆さんに、私はゲームの健康や社会的価値に関する文献を示したいと思います」として、ゲームの肯定的な影響についてまとめた研究やデータを示した。ゲームが自閉症の児童が新しい友人を作ることや、アルハイマー症の高齢者の記憶改善の助けになるという研究、ゲームがリーダーシップ育成、意思決定の改善、ストレスや抑うつの軽減に役立ち、子供の計算力や共感性の育成にも寄与するという調査結果などが、その好例だ。


■安全対策についてゲーム業界一丸となって取り組む
 この文章は当然、世界保健機関(WHO)が「ゲーム中毒」を病気の一つに認定するなど、ゲームが持つマイナスの側面にフォーカスが当たっていることを受けてのものだ。スペンサー氏は、Xbox のセーフティー チームが、すべてのゲーマーのために魅力的かつ安全な環境を作るために従事していることを強調し、「皆さんが望むようなゲーム体験を保護するために、皆さんを支援することをお約束します」と力を込める。同時に今年、マイクロソフトストアの実店舗にて、保護者がゲーム機とPCで利用できるツールを理解するためのファミリーワークショップを開催し、また低年齢層のゲーマーに、日々の生活のなかでゲームと正しく付き合うための生活習慣、健康を実践する方法を提供する、「Gaming Summer Camps」を開催することなどを明かした。


 そして、マイクロソフト社だけでなく、ゲーム業界全体で取り組むべき課題についても、スペンサー氏は語っている。児童ポルノの蔓延に対し、警察からテクノロジー業界まで、「PhotoDNA テクノロジー」を広く活用できるようにしたのと同じように、業界の安全に関する革新はオープンに共有すること。実際に近年では、さまざまな業界のパートナーとともに、安全、セキュリティ、およびプライバシーの分野で、分析や事例を共有しているという。スペンサー氏はあらためて、「ゲーム コミュニティは急速に成長しており、Apple Arcade、Google Stadia、そして Microsoft の Project xCloud などのような世界中のより多くの皆さんがゲームをプレイできるようになる新しいゲーム サービスがもうすぐ開始されようとしています。私たちの業界は、一刻も早く安全にプレイできるように示さなければなりません」とまとめた。


 最後は、次のようにまとめられている。


「ゲームをプレイするすべての皆さん、そして業界のパートナーの皆さんに、共に世界をひとつにするため、これらの原則と私たちの『一人一人、そしてみんなでゲーマーの皆さんを守り、すべての人がゲームに触れられるようにする』という活動に賛同いただきたいと考えています」


(編集部)