川崎市登戸駅近くで5月28日に起きた、カリタス小学校の児童らを狙った殺傷事件以来、「ひきこもり」への偏見が強くなっている。
市は会見で、事件を起こした50代の男性がひきこもり傾向にあったことを明かした。これを受け、当事者団体である「ひきこもりUX会議」は5月31日、当事者を犯罪者予備軍とするような報道は避けるよう声明文を発表している。
しかし6月1日、東京都練馬区で、ひきこもり傾向だった44歳の息子を元農水省事務次官の父親が殺す事件が発生した。
父親が「自分の息子も周りに危害を加えるかもしれないと不安に思った」という趣旨の発言をしているという報道があるように、当事者の家族の中には、ひきこもり状態の我が子が事件を起こすのではないかと不安に思っている人もいる。
「企業の人手不足もあり、ひきこもりは解決しやすくなった」
支援団体のNPO「ニュースタート」の二神能基理事長も、相次ぐ事件を受け「家族に、プレッシャーは相当かかっていると思う」と指摘する。しかし「自分の息子・娘さんも同じような事件を起こすかというと、それはいらない心配」だとして、
「日本の家族は、問題を家族で抱え込む傾向がある。『家族の問題は自分たちで解決しなければ』と思い込んでいるが、今まで家族だけで解決できなかった問題は今後も解決しない。だからこそ他人に頼ったほうが良い」
と、周囲へ助けを求めるよう呼びかけた。
内閣府は2010年、ひきこもりの数を約70万人と推計したが、2016年には約54万人にまで減っている。こうしたことからも、「ひきこもりは難しい問題ではなくなってきている」という。最近では40代以上の高齢ひきこもりも問題視されているが、
「(ニュースタートに)来所する1割は40代以上の人だが、その人達もどんどん自立し前向きに働いている。企業の人手不足もあって、ひきこもりは解決しやすい問題になった。どんどん増えていた時代と、状況が180度違う」
と強調していた。
SNSの発言に「自分達が追い詰めていること、新しい問題を引き起こしていること自覚して」
練馬の事件では、ネットに「被害者の自業自得」「川崎の事件を未然に防いだ」「被害者が悪い」などの言葉も相次いだ。こうした現状を二神さんは「マイナスを見つけるとすぐ排除しようとする、『収容所列島』化する日本社会を反映している」と指摘する。
「昔はもうちょっと寛容だった。今は頭の中ですぐレッテルを貼り、切り捨ててしまう。差別主義みたいなものが横行している。もうちょっと、人間への多様な見方を出来るようにならないといけない」
SNSを始め、ネットは誰でも自由に発言できることが魅力だが、「発言している人たちは、追い詰めている自分達が、新しい問題を引き起こしていることを自覚したほうがいい」とも話していた。