MotoGP第6戦イタリアGPで、中上貴晶とLCRホンダが歓喜に湧いた。中上にとって自己ベストリザルトとなる5位フィニッシュ。インディペンデントチームライダーとしてもトップのリザルトに、パルクフェルメで笑顔がはじけた。
予選日から流れはあった。フリー走行3回目で4番手タイムを叩き出し、予選Q2へダイレクト進出を決めた。これについては素直にうれしいと表現しつつも、その後の予選で獲得した10番手には悔しさもにじませた。
実は、この予選で記録したタイムは「セクター4でマシンが振られ、そのときにブレーキパッドが開いてしまい、そのため、タイムをロスしてのベスト」だったと言う。
それでも中上がマークした1分46秒387は、2018年にマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が記録したフリー走行3回目で記録した自己ベスト1分46秒439を更新するものだった。中上が2019年シーズンに駆るホンダRC213Vは、2018年型。2018年にマルケスが同じマシンで記録したタイムを上回ったことになる。ちなみにマルケスが2018年イタリアGP予選Q2で記録したタイムは、1分46秒454だった。
迎えた決勝レース、中上は好スタートを切ってオープニングラップで6番手に浮上。トップ集団に加わった。その後、アレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)やフランセスコ・バニャイア(プラマック・レーシング)に交わされ8番手に後退。しかし粘り強く周回を重ねていった。
中上は好スタートのおかげで「1コーナーでは、思い通りのラインを通ることができてポジションを上げることができました。その後も落ち着いて、力強い走りができました」と振り返る。
16周目にジャック・ミラー(プラマック・レーシング)が転倒して中上は5番手にポジションを上げる。その約4秒前方にはトップ集団がいた。中上はそのままペースを維持し、自己ベストとなる5位でフィニッシュ。インディペンデントチームライダーとしても、トップでレースを終えた。
「ペースは、全体的にそれほど速いものではありませんでしたが、トップグループについていくのはさすがに簡単ではありませんでした。しかし、今日はカル(・クラッチロー)についていったことで、いいリズムをつかむことができました」
一方でトップスピードには苦しんだという中上。しかし、インフィールドでは好走した。
「今回はセクター2とセクター3でとてもいい走りができていたので、その区間でトップグループのライダーたちとの差も縮めることができました」と中上自身が語るように、セクター3の自己ベストタイムは、トップ3ライダーの誰よりも速かった。
また、今回のレースではタイヤ選択もひとつのポイントだったようだ。中上は初日に前後ハードタイヤを選択。ムジェロ・サーキットではハードタイヤを想定していたというが、うまく機能しなかった。そこで、予選後には決勝レースを前後ミディアムタイヤで戦うことを決断。
「タイヤの選択に迷いがなかったことも、強い気持ちでレースを戦えた要因でした」と、ゆるぎない決定が自信になったと明かしている。
見出したインフィールドの強さへの自信、タイヤ選択の迷いのなさなどを、見事に結果へと結びつけたといえそうだ。
今回の5位獲得は、中上にとって、ドライコンディションにおけるレースとしてもベストリザルトとなった。「グランプリに来てから、今日は1番いいレースになりました」と語った中上。インディペンデントチームライダーのトップとしてバイクを止めたパルクフェルメでは、チームとともに喜びを分かち合う姿を見せていた。