2019年のWRC第7戦ポルトガルを制したオット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC) 6月2日に行われた2019年のWRC世界ラリー選手権第7戦ポルトガルの競技3日目。3台のトヨタ・ヤリスWRCを投じるTOYOTA GAZOO Racing WRTでは、総合首位で臨んだオット・タナクが逃げ切りシーズン3勝目を達成。一方、総合2番手で走行をスタートしたクリス・ミークは最終ステージでリタイアとなり、表彰台獲得を逃している。
南欧ポルトガルを舞台としたグラベル(未舗装路)イベントのラリー・ポルトガル。競技最終日となる2日は、サービスパークが置かれるマトジニョスの東北エリアでSS16~20までの5SSが行われた。
首位タナクと2番手ミークが4.3秒差で臨んだ競技最終日、オープニングのSS16ではミークがタナクを上回るタイムを記録して、ギャップを2.4秒まで短縮する。
しかし、続くSS17~18ではタナクが連続でステージ優勝を飾って反撃。リードを8.1秒まで広げてみせる。
すると続くSS19、追う立場のミークがヘアピンでハーフスピンしてしまいステージ14位に終わる。総合でも首位タナクと24秒差の総合3番手へ後退してしまった。
悪い流れを断ち切りたいミークだったが、最終ステージのSS20ではスタート直後にコーナーイン側にあった切り株へヒットしてしまい、マシンフロントを破損。走行を続けることが叶わずリタイアとなり、トヨタ移籍後初表彰台には手が届かなかった。
総合首位で最終ステージに臨んだタナクは、ステージ3位で走り切ると、最終的に総合2位のティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20クーペWRC)に対し、15.9秒のリードで優勝。第2戦スウェーデン、第6戦チリに続く、2019年シーズン3勝目を手にした。
競技2日目にマシントラブルからデイリタイアしていたヤリ-マティ・ラトバラは総合11番手で競技最終日に参加。着実に順位を上げて、総合7位でフィニッシュしている。
ドライバーズランキングでは優勝したタナクが140ポイントまで得点を伸ばし、首位のセバスチャン・オジエ(シトロエンC3 WRC)と2ポイント差。マニュファクチャラーズランキングで、トヨタは首位ヒュンダイと20ポイント差の2位につけた。
■トヨタ率いるトミ・マキネン「週末をとおして我々のパフォーマンスは十分高かった」
チーム代表のトミ・マキネンは「週末をとおして我々のパフォーマンスは十分高かった」とラリー・ポルトガルを総括している。
「オット(タナク)とチームにとって、今回もまた素晴らしい勝利となった。(競技初日の)金曜日は不利な2番手スタートだったにも関わらずトップに立ち、難しいコンディションをうまく切り抜けるなど、ラリーを力強く戦い抜いた」
「オットとマルティン(ヤルヴェオヤ/コドライバー)は、本当によくやってくれたと思う」
「また、他の2台も速く、週末をとおして我々のパフォーマンスは十分高かったと思うよ。残念ながらヤリ-マティ(ラトバラ)は昨日(競技2日目)トラブルに見舞われ、クリス(ミーク)は今日小さなミスで大きな代償を払うことになった」
「とはいえ、ドライバーおよびコドライバー選手権、そしてマニュファクチャラー選手権に関しては、依然いい方向に向かっているから、この後のラリーも自信を持って戦い続ける」
優勝したタナクは「今週末は本当に長くタフな戦いが続き、これまででもっとも苦労して手に入れた勝利だと断言できる」と戦いをふり返った。
「今日は速さが十分あり、すべてがうまくいったよ。最初のステージは大量のダストで視界が悪かったから、少し慎重に走った。しかし、その後はマージンをとりながらも攻め、差を大きく拡げることができたんだ」
「選手権争いはかなり接戦だけど、次戦(第8戦イタリア)サルディニアでは、いい出走順でラリーに臨めると思う」
得点圏内でフィニッシュしたラトバラは「昨日(競技2日目)は本当に速く、いい走りができていたから、個人的には満足できない結果だが、自分たちにスピードがあり、クルマも速かったという事実が何よりも重要だ」とコメント。
最終ステージでクラッシュしたミークは「右コーナー内側の草の中に木の切り株が隠れていたのを見落とし、自分のペースノートに記していなかったため、それに当たってタイヤが外側に開いてしまった」と状況を説明している。
「完全に自分のミスだし、それまでは非常に力強くラリーを戦えていたから、チームに申し訳なく思う。ただし、自分にとっては今までで1番、クルマのポテンシャルを引き出せたラリーだったから、気持ちを切り替え、今週末の戦いをポジティブに捉えたいと思う」
トヨタが挑む次戦は6月13~16日に行われる第8戦イタリア・サルディニア。地中海に浮かぶサルディニア島を舞台に争われるグラベルイベントだ。
このラリー・イタリア・サルディニアは中高速のステージが多く、道幅の狭いトリッキーなステージも多いことから精度の高いドライビングが求められる。また、この時期のサルディニアは気温も高く、マシンやタイヤ、ドライバーにとって過酷な環境での戦いとなる。
なお、このラリー・イタリア・サルディニアにはチームのテストドライバーを務めるユホ・ハンニネンも参戦。トミ・マキネン・レーシングで4台目のヤリスWRCをドライブする予定だ。