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息子と混浴したいシングルマザーへの批判「家族風呂を使え」が難しいワケ 東京では厳しい制限

2019年06月02日 10:11  弁護士ドットコム

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銭湯で子どもが異性の風呂に入れるのは何歳までなのかを解説する記事(「子どもは何歳まで銭湯で混浴できる?」 条例より年齢引き下げ、身長制限する浴場も)を弁護士ドットコムニュースで掲載したところ、多くの反響がありました。


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各自治体は条例で混浴できる上限年齢を定めていて、一定の年齢を超えると混浴できません。この記事をめぐり「発達障害がある子供と一緒にお風呂に入れない」とコメントしたシングルマザーに対して「家族風呂に入ればいい」という声が多く上がりました。しかし、調べてみると、東京都内の貸切風呂や家族風呂は片手で数えるほどしか見当たりません。その背景を探りました。(ライター・国分瑠衣子)



●条例では10歳以上の混浴禁止、貸切風呂も介護などの場合に限りOK

検索サイトで「東京 家族風呂」で探すと、ヒットするのは数件しかありません。なぜ都内には貸切風呂や家族風呂が少ないのでしょうか。東京23区、八王子市、町田市以外の自治体を所管する東京都福祉保健局によると、東京都の公衆浴場条例では10歳以上の男女の混浴は認められていません。このため銭湯が貸切風呂や家族風呂を設置することはできません。23区や町田市や八王子市の条例もほぼ同じ内容です。



ただし、条例の細則では例外も認めています。介護などの特別な事情がある人の利用に限り、保健所が貸切風呂や家族風呂の設置を認めたケースもあります。東京都あきる野市にある「秋川渓谷 瀬音の湯」は、2つの貸切風呂があります。都の条例に基づき、10歳以上の男女は混浴できませんが、高齢の夫婦など男女どちらかの介護が必要な場合、介助する人がTシャツや短パンなど服を着て入浴することができます。





東京都福祉保健局は、「発達障害の子どもがいるシングルマザー(ファザー)の場合も服を着ての利用ならば、混浴に当たらず、大丈夫です」と説明しています。



瀬音の湯に聞くと、貸切風呂は事前に電話で予約すれば入浴できます。スタッフは「男性や女性のグループや介護が必要な方の利用が多い」と話しています。



●旅館業法が適用される宿泊施設なら、設置が可能

一方、ホテルや旅館などの宿泊施設では家族風呂、貸切風呂の設置が認められています。



宿泊施設に適用される東京都の旅館業法施行条例では、家族風呂や貸切風呂に関する一文は盛り込まれていないため「設置できる」という解釈になります。さらに細かく説明すれば、宿泊施設であっても大浴場は公衆浴場条例が準用されるため混浴できませんが、露天風呂付きの客室は、条例の適用外になり、混浴ができます。家族風呂、貸切風呂も同じ理由で、宿泊する人は利用できます。



では、宿泊施設で日帰り入浴する人は、貸切風呂、家族風呂は使えるのかという疑問がわくでしょう。東京都によると、基本的に日帰り入浴では貸切風呂、家族風呂は使えません。ただし日帰りでも「休憩プラン」などで数時間でも客室を使う場合は、「宿泊者」とみなされ貸切風呂に入れます。なんとも複雑ですが、都内でも休憩プランで貸切風呂を提供している宿泊施設はあります。



家族風呂を増やすために規制を緩和してはという見方もあるでしょう。実際に、例えば、神戸市では、家族風呂で、家族(夫婦、親と10歳未満の子ども、介助が必要な家族)の混浴を可能にする規定があります(神戸市公衆浴場法施行条例)。温泉を県全体で売りにしている大分県でも家族風呂の場合は混浴がOKとなっています(大分県公衆浴場法施行条例)。他にも混浴OKの地域はあり、東京の規制はこれらと比較すると厳しいといえるでしょう。



ただ、東京を含めた大都市圏は、無店舗型の風俗営業などに使われることも考えられ、風紀が乱れてしまう恐れもあります。入浴施設では外国人観光客のマナーや、LGBTへの対応などさまざまな課題があります。多くの人が納得できる着地点を見出すためには時間がかかりそうです。