40年の歴史と伝統を誇る南米ブラジルの人気ツーリングカー選手権、SCBストックカー・ブラジルの2019年シーズン第3戦が5月18~19日にゴイアニアで開催され、第2戦のレース2で勝利を挙げたリカルド・ゾンタ(シェルVパワー・レーシング)が好調を維持して2連勝。レース2では2014年SCB王者のルーベンス・バリチェロ(フルタイム・スポーツ)が今季初勝利を挙げ、元F1ドライバーが大活躍を演じる週末となった。
首都ブラジリアから南西約200kmの高原地帯に位置する農業都市ゴイアニアは、2018年シーズンには高額賞金の掛かった"ミリオン・レース"の舞台に指定されるなど、シリーズきっての人気トラックとして数々の伝説を築いてきた。
その週末最初の予選で速さを見せたのは、こちらも前戦に続きスピードを見せたチアゴ・カミーロ(イピランガ・レーシング)で、2009年、2013年とランキング2位を記録しながらタイトル獲得経験のない34歳は、今季こそ悲願を達成すべくポールポジションを獲得してみせる。
スタートでもカミーロが抜群のダッシュでホールショットを決めると、2位ゾンタ、そして現在シリーズ2連覇中の王者ダニエル・セラ(ユーロファーマRC)を3位に従えてポール・トゥ・フィニッシュ。
さらに4位にはセラのチームメイトで昨季はランキング2位に入り、自身も2008年のシリーズ王者であるリカルド・マウリシオ(ユーロファーマRC)が続き、5位には三つ巴の熾烈なバトルを制したマルコス・ゴメス(KTFスポーツ)が入り、以下マックス・ウィルソン(RCMモータースポーツ)、バリチェロの暫定リザルトとなった。
しかしレース後にまさかの展開が待っており、ブラジル自動車連盟(Brazilian Automobile Confederation)がレース映像と計時システムを検証の結果、勝者カミーロと4位マウリシオがフライングスタートだったと断定。最終リザルトに20秒加算のペナルティを宣告し、それぞれ無情にも13位、14位に降格することに。
これで2位を単独走行していたゾンタが望外の勝利を手にし、セラもポジションをひとつ上げて、選手権リードを拡大する2位となった。
明けた日曜のレース2は、前日の決勝結果トップ10のリバースグリッドとなり、プラティ-ドナドッツィ・レーシングのフリオ・カンポスがポールポジションからスタート。
しかしその後方から猛烈な勢いで浮上してきたのは、リバースの4番グリッドからスタートしたバリチェロで、SNSファン投票により使用回数の決まるオーバーテイクボタン"FUN PUSH"の威力も活用し、ピットストップまでに首位カンポスの背後に迫る。すると迅速な作業時間で送り出したフルタイム・スポーツのチーム力もありトラックポジション逆転に成功する。
レース後半は首位に立ちながら、2番手カンポスとのマージンを冷静に測りながらタイヤマネジメントとディフェンスに徹する老獪なドライビングを披露した元跳ね馬使いは、最終的に1秒655のギャップを維持してトップチェッカー。カンポス、セラを従えて今季初勝利を挙げ、選手権でもセラに1ポイント差と肉薄するランキング2位に浮上した。
「長い人生を生きていると、ときに打ち負かされて、すべてを失ったと思う瞬間もある。とくに前日のレースで7位に終わったようなときにはね」と、レース後に語ったバリチェロ。
「でもこうして、月曜の朝を清々しい気分で迎えることができるのは最高だ。今日のレースでは燃費セーブに徹し、FUN PUSHにも大いに助けられた。つまり今日の勝利はゴイアニアに詰め掛けてくれた2万2000人の後押しと声援によるものなんだ」
それに対し、2位に終わったカンポスも「今日のルビーニョのピットストップは本当に早かったし、コース上でもオーバーテイクすることが難しかった。僕のマシンにもレースに勝つだけの力はあったと思うが、それだけじゃ充分ではなかった、ということだね」と、勝者を称えた。
続くSCBシリーズ第4戦は、ブラジル中南部パラナ州にあるドイツ人と日本人移民の都市、ロンドリーナのアウトドローモ・インターナショナル・アイルトン・セナを舞台に、6月9日に決勝2ヒートが争われる。