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BABYMETAL「Elevator Girl」はなぜ聴き込みたくなる? “変化球”的かつ試金石になりうる一曲に

2019年06月01日 10:51  リアルサウンド

リアルサウンド

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 5月10日にBABYMETALの最新音源『Elevator Girl』が配信で世界同時リリースされた。時系列的には、昨年10月19日に配信されたシングル『Starlight』から7カ月弱ぶり。年内にリリースが告知されている最新アルバムへの収録も期待されるが、この曲ならではの魅力に迫ってみたい。


(関連:変化を乗り越えたBABYMETAL、二人の証言から伝わるユニットとしての“強さ”


■疾走感を持ちつつ、過激なフレーズをちりばめる


 音源が限られる一方で、BABYMETALはライブで先行して楽曲を披露するのが基本的な流れになっている。今回取り上げる楽曲「Elevator Girl」も例に漏れず、すでにライブではセットリストで定番化しつつある一曲となっており、筆者も自身が鑑賞した昨年10月28日の『BABYMETAL WORLD TOUR 2018 in JAPAN EXTRA SHOW “DARK NIGHT CARNIVAL”』(さいたまスーパーアリーナ)で確認していた。


 しかし、さんざん聴き込んでからパフォーマンスを味わうのと、ほぼ初見の状態で聴くのではやはり印象も異なる。ライブでは目まぐるしく変わる光景を追うのに精一杯で、音そのものや歌詞をたどる余裕がないのも否めないのだが、この曲はタイトルの通り、エレベーターをかたどった歌詞や振り付けがステージでとりわけ強烈なインパクトを残す。


 曲自体はイントロから終盤に至るまでひたすら“疾走感”を貫いているかのような仕上がりで、近年、衣装やステージングに“ダークサイド”というテーマを掲げる、現在の彼女たちを思い浮かべると印象は真逆。とはいえ、ポップなメロディでありながら〈火あぶり針地獄〉といった過激なフレーズや、地獄を意味する〈HELL〉などの言葉がちりばめられており、BABYMETALの持つ“変化球”的な振り幅が味わえる一曲となっている。


■“スルメ曲”で彼女たちの変化も味わえる


 配信直後から、SNSでも「Elevator Girl」についてさまざまな感想が上がっていた。ファンがどのようにこの曲を捉えたのか、いくつかのコメントに注目してみたい。


 配信してまもなく「鬼リピート」や「絶賛リピート中」といったツイートも目立っていたが、実際に聴いてみると感じられるのはこの曲が噛めば噛むほど味わいがどんどん増すような、いわゆる“スルメ曲”であるということ。イントロからの爽快感、キュートさに振り切ったSU-METALの歌声はほんの入り口に過ぎず、サビの終わりにあるMOAMETALも参加していると思われるユニゾンパート〈Going Up Going Down〉の箇所など、聴き込めば聴き込むほど注目するポイントも不思議と変化してくる。


 また、アジア大手の定額制音楽配信サービス「KKBOX」の公式Twitterによれば、この曲で描かれているのは「人生の浮き沈みや勝負においての勝ち負け」で、誰にでもありうる悲喜こもごもを“エレベーター”に例えて表現しているという。


 曲のコンセプトをどこか、YUIMETALの脱退を乗り超えた“新生BABYMETAL”の今と重ねてしまう瞬間もあるのだが、Twitterでは「大人可愛い路線」としてこの曲を支持する声もあり、いずれにせよ、大きな転換点を迎えた彼女たちの試金石にもなりうる一曲といえるだろう。


 さて、今月28日の『BABYMETAL AWAKENS – THE SUN ALSO RISES -』(横浜アリーナ)を皮切りに新たな舵を切り始めるBABYMETALだが、8月には大規模音楽フェス『SUMMER SONIC 2019』へ2年ぶりに参戦。9月からは全20公演のアメリカツアーを開催し、その道中で現地では初のアリーナ公演でロサンゼルスのThe Forumへ立つなど、今年はまれにみるほど彼女たちの動きが慌ただしい。


 ……と、原稿をまとめようとしていたところ、新たに6月30日にイギリスで開催される大規模音楽フェス『グラストンベリー・フェスティバル』への初出演も報じられた。彼女たちが“どこへ向かうか分からない”という空気は、どことなく2014年3月の日本武道館公演を境に“武者修行”と称して海外へと渡り、その名と実力を世界へと轟かせた当時と似た感覚をおぼえる。


 音源としてBABYMETALの“今”を味わえるのは、今回取り上げた「Elevator Girl」のほかにもあり、昨年配信された「Distortion」や「Starlight」も“新生BABYMETAL”を象徴する曲である。耳元で噛み締めつつ、ライブでの勇姿を心待ちにしたいところだ。(カネコシュウヘイ)