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BALLISTIK BOYZとCOLOR CREATIONの1stアルバムがランクイン 両作に感じるポップスの変化

2019年06月01日 08:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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参考:2019年6月3日付週間アルバムランキング(2019年5月20日~2019年5月26日)


 2019年6月3日付のオリコン週間アルバムランキングは7位のももいろクローバーZ『MOMOIRO CLOVER Z』をのぞけばすべて初登場。声優アーティスト(3位田村ゆかり)、ロックバンド(5位女王蜂)、国内外の中堅やベテラン(6位EGO-WRAPPIN’、4位スティング、9位岡村孝子)、ボカロ(8位DECO*27)、K-POP(10位N.Flying)などが揃った。個人的に注目したいのは1位、2位を占めるBALLISTIK BOYZとCOLOR CREATIONだ。前者はLDH初のメンバー全員がマイクを持つダンスボーカルユニット、後者は“次世代のボーイズ・ボーカルグループ”を銘打った5人組で、いずれも今回チャートインした作品が1stアルバムとなる。


(関連:BALLISTIK BOYZが語る、EXILE TRIBEの一員としての覚悟 「新しい時代をリードしていく」


 かたや歌のみならずラップやダンスもフィーチャーした総合的なパフォーマンスグループ、かたや歌唱力の高さを前面に打ち出したボーカルグループ、と各々性格は異なる。しかし、このタイミングで若い男性によるいわゆるボーイバンド的なグループが2組アルバムデビューを果たしたことは興味深い。歴史的に見ればこの背景にはもちろんジャニーズやライジングプロダクション、LDHを中心とした男性アイドルグループやダンスボーカルグループの系譜がある。加えて、時事的な観点からみればBTSをはじめとしたK-POPグループの著しい躍進に伴うボーイバンド熱のグローバルな再燃や、いまだ記憶に新しいDA PUMP「U.S.A.」の大ヒットという国内事情もあるだろう。


 実際、BALLISTIK BOYZのサウンドとボーカルスタイルは一時期のBTSなど、K-POPのボーイバンドを彷彿とさせるものがある。具体的にいえば、ビッグルーム系のハウスやフューチャーベースなどのEDM以降のダンスサウンドと、ヒップホップの影響を強く受けたボーカルやラップの融合、というあたり。歌い手の聴かせどころであるメロディアスなサビを挟み込むバランスであるとか、ビートにも重きをおいたミックスも、J-POPというよりもK-POP的。とはいえ、単に「K-POPに影響を受けた……」と片付けるよりは、ダンサーの育んできたカルチャーを軸としながらEDM、ヒップホップ、R&Bを折衷的にとりいれた音楽性を展開してきたLDHの歴史の自然な延長にも思える。


 対してCOLOR CREATIONは、EDM以降のダンスサウンドというベースは同じくしつつも、あくまでメロディとハーモニーを聴かせることに注力した楽曲が並ぶ。4つ打ちからハーフテンポになってトラップ調に変化するなど現代的なビートも取り入れつつ、激しいビルドアップードロップやラップ、特徴的なフロウはスパイス程度に控えられ、細かなコーラスの割り振りや絡み合いへ重きを置いているのがわかる。もっとも顕著なのはインディーズシングルとしてリリースされていた「Summer Love」だろう。基本的には疾走感あふれるトランシーな4つ打ちだが、ラストのサビ前には12小節にわたってビートが消えてボーカルのハーモニーをフィーチャーするパートが用意されている。しかし、J-POPでありがちな歌い上げる系の過剰に壮大なメロディや、サビで思い切った展開を見せるようなアレンジは少ないため、ボーカルに焦点を当ててもクドすぎずにノることもできる。


 いま、グローバルなポップスの状況とJ-POPの関係性がもっともバランスを保っているのは、こうしたダンス志向のサウンドにのせた男性グループではないかと思う。もちろん、独自の作風を確立しているソロミュージシャンやソロ&グループアイドルなどの魅力も見逃せない。とはいえ、意識的に傾聴すると、徐々に日本のポップミュージックの姿が変わってきているのが感じられる。(imdkm)