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YouTuberきまぐれクック(かねこ)本日誕生日! 魚にも人にも愛される、魅力の源泉に迫る

2019年05月31日 20:01  リアルサウンド

リアルサウンド

 安定した構成の中に、ほどよい刺激。そんな人気長寿番組にある王道パターンを、YouTubeで築き上げているチャンネルがある。それが魚さばき系YouTuberかねこによる「きまぐれクック」だ。


(参考:長澤まさみ、人気YouTuber・きまぐれクックのファンを公言&共演熱望? 「魚を捌きたい欲はある」) 


 「きまぐれクック」の動画は、“魚介をさばいて、食す“という実にシンプルな構成。「さばいていくっ!」という決め台詞も実にキャッチーで、つい一緒に言いたくなるわかりやすさが心地いい。かねこの手付きも、実に鮮やか。刺し身のツマに飾り切りをした野菜も並び、盛り付けも毎回「そうそう、これこれ」と頷く美しさだ。食事のお供となる「銀色のヤツ!(アサヒの缶ビール)」も、視聴者にとっては“待っていました“な展開だ。「今日も変わらぬ面白さだった」という安心感に包まれる。そんな、いい意味でのマンネリに癒やしすら感じてしまう。


 一方で、シンプルで安定した構成だからこそ、動画ごとの変化に視聴者は集中しやすい。どんな珍しい魚介なのかという説明に、興味深く耳を傾けられる。もちろん、ときには既出の魚介を再びさばくという回も。調理方法を変えたり、鮮度によって包丁の入れ方を変えたりと、魚介という限定されたジャンルではあるものの、奥深さを感じずにはいられない。そして、何よりも「どのように入手したのか」という部分が面白さを増している。根っからの釣り好きなかねこは自らも海に出たり、潮干狩りに出かけたりと、フットワークが軽い。だが、注目すべきは魚介に携わる多くの人との関係性だ。


 例えば、面白い魚が入るとすぐに持ってきてくれる“へんな魚おじさん“の存在。魚好きという意味では負けず劣らずなふたりが繰り広げるやりとりは、実にほほえましい。突然のお魚クイズでしのぎを削ったかと思えば、お互いに魚のさばきっぷりを称賛し合うなど、年齢もキャリアも異なるだろうふたりが、リスペクトし合っている関係性にはある種の憧れさえ感じる。そんなへんな魚おじさんが見繕ってくれる魚の福袋は、そのタイトルを見るだけでも、どんな見たことのない魚が出てくるのかと見ている側もかねこと一緒にワクワクしてしまうのだ。


 他にも、市場や偶然見つけた鮮魚店で、かねこが店員に人懐っこく話しかける姿も確認できる。久しぶりに訪れたお店の方から「前も来てくれたよね」と、声をかけられることもあるなど、かねこの愛されキャラがあってこそ、よりよい魚介が手に入るのだと伝わってくる。また、かねこの口からは巨大魚をさばくと「これは、へんな魚おじさんに、あとは近所の方に配ります」という言葉が聞こえてくる。命をいただいているということに真摯に向き合い、おいしく食べるということにブレがないのだ。そのスタンスが、同じ魚好きの心を打つのだろう。最近では各地の漁師から珍しい魚介を譲ってもらえたというエピソードも増えており、通常ならば研究所行きレベルの珍種も手に入るようになってきた。


 「さばく」という言葉は、動物や魚を解体するというときだけではなく、“からまったものを解きほぐす“という意味で使われることもある。視聴後に包まれる謎の癒やしは、かねこの人柄の良さによるところが大きいのかもしれない。生きることは食べること。食べることは、命をいただくこと。その命をいただくまでには、多くの人が繋がっているということ。加工品ばかりを食べているとつい忘れがちになってしまう、そんな根本的な「ありがたみ」に改めて触れられる。


 きっと多くの人も感じるところだろうが、「きまぐれクック」を見ていると、自分も魚介を鮮やかにさばけるような気がしてくる。もちろん実際には、かねこのようにはいかないが。本日は、かねこの誕生日。祝う気持ちも込めて、魚さばきに挑戦してもいいかもしれない。「それはハードルが高い」という人も、ぜひ一緒に魚介を買って「銀色のヤツ!」で乾杯しようではないか。


(佐藤結衣)