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「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『長いお別れ』

2019年05月31日 18:11  リアルサウンド

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 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、リアルサウンド映画部のピュアガール担当・大和田が『長いお別れ』をプッシュします。


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■『長いお別れ』


 アメリカで「Long Goodbye」とも表現される病、“認知症”。近い将来、65歳以上の5分の1が発症されると言われています(出典:厚生労働省)。『長いお別れ』(=Long Goodbye)は認知症を患い、日々、“父”でも“夫”でもなくなっていく元・中学校校長の昇平と、どんな時も家族に対して献身的な愛情を絶やすことのない母・曜子、そして人生において様々な岐路に立たされている2人の娘、芙美と麻里の物語。日に日に遠ざかっていく父の記憶の中に、家族の誰もが忘れかけていた、それぞれの人生を生き直すために必要な、ある“愛しい思い出”が今も息づいていることを知る。


 『小さいおうち』で第143回直木賞を受賞した、中島京子の同名小説を『湯を沸かすほどの熱い愛』で日本アカデミー賞主要6部門を含む国内の映画賞計34部門を受賞した中野量太監督が手がけた本作。認知症を患う昇平役に山崎努、東家の次女・芙美役に蒼井優、長女・麻里役に竹内結子、母・曜子役を松原智恵子が務めています。


 人が病におかされ、生や死を見つめていく病気を題材にした作品が多い中、本作はちょっと異なります。山崎努さんが「おかしみの要素をうまく取り入れてユーモアを失わずに作り上げた」と語るように、認知症という暗くなりがちなテーマを、親子と家族の“愛”、そしてそれぞれのキャラクターの愛らしさで、随所に微笑ましいシーンが盛り込まれ、優しく穏やかな7年間が描かれていきます。思わず涙が溢れる場面はもちろんありますが、それは悲しみからではなく、人間の温かみに触れた感覚でした。


 先ほど名前を上げた通り、本作には魅力的な役者陣ずらり。蒼井優さんと竹内結子さんが喫茶店で待ち合わせるシーンの姉妹感には思わず微笑んでしまうほど、2人の姿から仲睦まじい雰囲気が自然と流れています。2人が演じる麻里と芙美は、それぞれに全く異なる人生の壁とぶつかり、彼女たちはどうしようもなく、涙を流します。その時に、記憶をなくした父・昇平が、2人にどう寄り添うのか。彼女たちはそこで笑顔に戻っていくのです。


 家族、夫婦、親子。昇平を軸として記憶を失くしても、一人でできないことが増えていっても、変わらない愛情の存在を教えてくれる一作です。


※山崎努の「崎」は「たつさき」が正式表記


(リアルサウンド編集部)