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レース中に2度の見せ場を作ったフェルスタッペン。それぞれのベストを尽くして入賞したホンダPU勢【今宮純のF1モナコGP採点】

2019年05月31日 13:21  AUTOSPORT web

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2019年F1第6戦モナコGP レース終盤のマックス・フェルスタッペンとルイス・ハミルトンのバトル
F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。今回は2019年F1第6戦モナコGPだ。

☆ セルジオ・ペレス(レーシングポイント)
予選=17番手/決勝=12位

 予選の戦闘力が9番手マシンで決勝は5つポジションアップ、入賞圏にはとどかなかったが健闘だ。ミディアムタイヤでスタート、11周目にハードタイヤの“手堅い”戦略を遂行。2016年のモナコGPで表彰台3位、2017年では最速ラップを記録したペレスは著しく戦闘力を欠いたレーシングポイントRP19でもしぶとい。

☆☆ ダニエル・リカルド(ルノー)
予選=7番手/決勝=9位

 さすが昨年のモナコGPのPPウイナー。予選7番手の急上昇、大幅なセッティング変更が成功した。フロントのダウンフォースをいままでよりプラス方向に振り、リヤとバランスさせた効果がセクター3の4位に表れた。

 序盤戦のルノーは、ずっとセットアップが難しく、各グランプリのセッションごとにペースが乱高下、それを今回うまく仕上げたのだ。ところがスタートで5番手に上がりながらチームが戦略を誤り、後方にポジションダウン。上位入賞チャンスを逸した。

☆☆ バルテリ・ボッタス(メルセデス)
予選=2番手/決勝=3位

 二度きわどい場面があった。相手はどちらもフェルスタッペン。スタートから1コーナーでインに刺しこまれかけたが、ぎりぎり2位を守った。そして11周目、ピットレーンで接触→ホイール破損→パンク→再ピットイン→3位。ハミルトンも終盤にシケインで接触したが無傷、不運だったボッタス。

☆☆ シャルル・ルクレール(フェラーリ)
予選=16番手/決勝=リタイア

 突撃するならラスカス、その狙いは分かる。モナコの子ならでは(!)。コース幅が意外に広くレコードラインはアウト寄りなのでリスキーだが、インを刺しに行った。しかし、ここは毎晩路上でパーティーがあり、ビールやフライドポテトの“デブリ?”が路面にこびりついた部分も(過去に歩いて実感)。

 ヒュルケンベルグへの攻撃でスピン、リタイア。FP3での最速セクター2におけるアタックは完璧なラインワーク、予選4番手となったベッテルのセクタータイム以上だった。それだけに予選でメルセデスとのタイムバトルが十分に期待できた。チームのミスによる悔しすぎるQ1敗退。それはモナコ公アルベール二世閣下も同じ思いだったに違いない。

☆☆☆ ピエール・ガスリー(レッドブル・ホンダ)
予選=5番手 → 降格8番手/決勝5位

 注視するとアウト・オブ・コーナーでのドライビングタッチにしなやかな変化が感じられた。レッドブル・ホンダでの6戦目。彼は懸命に模索している。5位入賞プラス2度目の最速ラップ、さらに自信を深められたモナコ。

☆☆☆ アレクサンダー・アルボン(トロロッソ・ホンダ)
予選=10番手/決勝=8位

 初めてのF1走行とは思えない、木曜FP1の45周に驚いた。狭いコーナー出口で最適ライン&スピードをつかみ、徐々に攻めるクレバーなアプローチ。ソフトタイヤでロングスティントに向かい、タイヤケアを無難にこなし自己ベストタイム3位相当をマーク。モナコでパワード・バイ・ホンダ4台初入賞、今年の『ホンダ・ヤングボーイズ』は何度もやってくれそうだ。

☆☆☆ ダニール・クビアト(トロロッソ・ホンダ)
予選=8番手/決勝=7位

 カルロス・サインツJr.と直近バトルがつづいた中盤に自己ベストで応戦。緊迫した“Bリーグ首位攻防”に今季ベスト7位入賞。しだいに実戦力を取り戻しつつある(余談だが彼は村上春樹さんの小説の愛読者だとか)。

☆☆☆☆ カルロス・サインツJr.(マクラーレン)
予選=9番手/決勝=6位

 抜けないモナコで抜いた1周目のオーバーテイク。1コーナーから昇る3コーナーまでにトロロッソ・ホンダ2台をアウトからきれいにパス。今年この区間も再舗装されバンプがなくなり、ライン自由度は確かに広がった。

 それをつかんでいたかのようなマジックラインだ。来年の中継では冒頭のアクションシーンできっと取り上げられるだろう。

 その後は、オーバーテイクで得たポジションをキープ、チームは素早いピットストップとノリスにサポートさせる戦略をスマートに実行。マネージングディレクターのアンドレアス・ザイドル率いる5月新体制になってから現状マシン戦力を活かしきりコンストラクターズランキング4位。トップ3とは大差だがマクラーレンは“上りエスカレーター”に乗り移った。

☆☆☆☆ セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)
予選=4番手/決勝=2位

 何度も壁やガードレールにタッチ、それを一概に「ドライビング・ミスばっかり」とは言いきれない。リバースステア特性(急激な挙動変化)のフェラーリSF90では、攻めれば攻めるほどああなってしまう。

 中低速コーナーでエアログリップが劣り、アンダーステア(前輪タイヤ温度影響)にもがく走りは見るからに苦しい。母国メディアから揶揄、批判されるフェラーリのエースはつらい。ドタバタの週末をしのいだ2位だ。

☆☆☆☆ マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
予選=3番手/決勝=4位

 明らかにハミルトンより速いのに抜けない。デビューしたころの彼なら遮二無二に突っかかって行っただろう。76周目に遂にシケインでインへ、ハミルトンはここでくると予測していたかのように見えた。クロスプレーだがふたりともダメージはなし、ペナルティもなし。今年のモナコはオープニングとエンディングが見せ場、演出したのはフェルスタッペンだ。

☆☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン(メルセデス)
予選=PP/決勝=1位

 伝説の1992年「セナ対マンセル」のころはマシン全幅がワイドな215cmだった。それが1993年から200cm、1998年から180cmに“35センチ”も小さくされた。再び2017年から200cmに戻されたいま、モナコではワイドに見えるが昔はもっと幅広なまさに「モンスター」だったのだ。

 平均150KMH以上で1時間43分以上をミスひとつなく走破、そのエネルギー持続力とメンタル集中力は想像を絶する。ハミルトンはふだんの2レース分くらいの力を使い切ったことだろう。