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エアソウルの”激安乗り放題パス”は本当にトクなのか検証してみた【橋賀秀紀のフカボリ!】

2019年05月31日 11:51  TRAICY

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みなさんご無沙汰しております。トラベルジャーナリストの橋賀秀紀です。10連休はソウル/仁川→東京/成田→タヒチ→イースター島→サンチアゴ→メルボルン→広州→東京/羽田とエコノミークラスで周りました。これで約135,000円。この航空券はすでに買えなくなっていますが、ソウル発はウォン安を受けて、方面によってはお買い得になっているようです。

さて、今回のテーマはエアソウルの乗り放題パス「ミントパスJ19」についてです。

エアソウル、50日間日本線が乗り放題のパス発売 約2.8万円https://www.traicy.com/20190525-RSmin

1980年代や90年代には、北米やカリブ海のエアラインなどで、一定期間中にエリア内で乗り放題が可能なパスが存在しました。ところが近年こうした商品は航空業界から消えてしまいました。近年で乗り放題に近いものといえば、2010年から2011年にかけて発売された、全日本空輸(ANA)の「プレミアムパス300」を想起する人も少なくないでしょう。300万円で日本国内線のANAのプレミアムクラスに300回まで乗れるという内容。価格もさることながら、このパスを使って常軌を逸した?「マイル修業」をした人も現れたことから「マイラー界隈」では話題になりました。

さて、今回発売されたエアソウルの「ミントパスJ19」のお得度はどうなのでしょうか。機上ならぬ机上の空論を述べてみたいと思います。

まずはこの「ミントパスJ19」のおさらいです。購入にはエアソウルの会員登録が必要です。これは以下から日本語で簡単にできます。

5月28日時点では韓国語のサイト以外では「ミントパスJ19」の購入ができません。エアソウル韓国語ウェブサイトの「J19」「299,000」などと書かれたバナーをクリックすると購入ページに飛びます。

細かい条件はともかく、重要な項目だけを取り出すと次のようになります。

・最初の行程(往復)の予約のみはホームページで行うが、それ以降はメールでの予約となる。(これはかなり面倒です。)

・予約は7日前までに行う必要がある。そのため、思い立ったら飛ぶという利用はできません。

・ソウル/仁川から日本路線の単純往復という形のみ利用可能。ソウル/仁川から東京/成田に飛び、静岡からソウル/仁川に帰るといった行程は組めません。

・当然のことですが、第一区間がソウル/仁川発なので、日本在住者の場合、そこまでの航空券を別途用意する必要があります。

・燃油サーチャージや空港使用料は別途支払う必要があります。たとえばソウル/仁川と東京/成田を往復する場合、航空券の本体とは別に90,100ウォンが必要になります。

・払い戻しや変更の手数料は1区間50,000ウォン(約4,587円)、ノーショーは片道あたり100,000ウォン(約9,173円)が必要です。

・利用期間は6月6日から7月15日まで、日曜の利用はできません。

とりあえずこれらの条件をクリアしたとして、このパスを使い倒したらどのくらい得なのか考えてみました。

まずは、首都圏に住んでいる勤め人で週末がらみでないと出かけられない人が、とにかくソウルに行くという条件で考えてみました。期間中の週末は計7回(記事がアップされた時点でこの回数は不可能ですが、机上の空論なのでご容赦ください)。7回目の復路を放棄して東京で旅を終了するとします。

東京/成田→ソウル/仁川:6,110円(このパスを使い始める前の片道の航空運賃)

「ミントパスJ19」:299,000ウォン

航空券以外の諸経費:90,100ウォン×7往復=630,700ウォン

ノーショーペナルティ:100,000ウォン

合計は6,110円+1,029,700ウォン(約100,579円)となります。

これで東京/成田とソウル/仁川を7往復できることになり、1往復あたりのコストは14,427円となります。

ちなみに6月1日(土)の東京/成田→ソウル/仁川、6月3日(月)のソウル/仁川→東京/成田の単純往復は14,000円なので、全週末をこの「ミントパスJ19」に投入するという気合いをいれてもなお、このパスの費用対効果はそれほど高くないことがわかりました。

これは単にソウルを往復しているからダメなのであって、せっかく沖縄/那覇線もあるのだから、ソウルと沖縄両方にいってみた場合にはどうでしょうか。

そこで、ソウル/仁川→沖縄/那覇→ソウル/仁川→東京/成田→ソウル/仁川→沖縄/那覇…というループを考えてみます。

この場合、ソウル/仁川から東京/成田の往復とソウル/仁川から沖縄/那覇の往復の航空券以外の諸経費が162,700ウォン(約14,995円)、ノーショーペナルティが100,000ウォン(約9,216円)。先ほどと同様に成田で旅をスタートさせて計7回ソウルと沖縄に行った場合のコストは138,552円。1回あたりのコストは19,793円。ソウルと沖縄の両方に行ってこの価格ですから安いといえば安いのでしょうが、土日だけで両方行くことは不可能なので、勤め人にはやや非現実的なシミュレーションといえます。

ではもう世の中のしがらみを絶ち、ソウル/仁川→札幌/千歳→ソウル/仁川→沖縄/那覇→ソウル/仁川…というループを繰り返したとしましょう。最初は東京/成田からスタートして最後に東京/成田に戻るところまでは同じです。もちろん、ソウル/仁川から札幌/千歳も沖縄/那覇も日帰りで往復できますが、マイレージが貯まらないのに日帰りをしても仕方がないので、とりあえず1日1フライトというしばりにしました。計47日ありますので計44フライト。千歳と沖縄にそれぞれ11回ずつ行く計算となります。

ソウル/仁川→札幌/千歳→ソウル/仁川→沖縄/那覇→ソウル/仁川と利用した場合にかかる費用が145,500ウォン。計11回で1,600,500ウォン。これにパス代、最初の東京/成田→ソウル/仁川の航空券とラストのソウル/仁川→東京/成田の航空券を足すと6,110円+1,938,900ウォン(約184,726円)となります。

しかもこれらは希望する日の便がすべてとれたと仮定した最善のシナリオです。実際にはこれほどうまくはいかないでしょう。となると最初に想起するほどおいしいとはいえないことがわかります。

と検証の結果はなかなか厳しいものにはなりましたが、こうした面白い商品を出すエアソウルの姿勢は評価したいと思います。