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山田孝之&綾野剛&内田朝陽のTHE XXXXXX バンドの最大の特徴は“詩的であること”?

2019年05月31日 07:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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 「天は二物も三物も与えるものなのか……」。彼らの音楽を初めて耳にしたときの感想である。「彼ら」とは、今、巷を賑わせている“異色の新人バンド”・THE XXXXXXのこと。メンバーは俳優の山田孝之(Vo)、綾野剛(Gt)、内田朝陽(Syn)の3人。全員一流の俳優として成功を収めている面々である。その3人が音楽の世界にも活躍のフィールドを広げているのだ。6年前に結成したというTHE XXXXXXは、2018年11月9日にティザートレーラーを公開し、本格始動。同年11月30日には1stシングル『Seeds』、12月21日には2ndシングル『Zealot』を発売しス、今年4月5日には1stアルバム『THE XXXXXX』を配信リリースと、次々に楽曲を発表している。さらに、本日5月31日より3rdシングル『deep breath / 冷静に暴れていこうか(Rearrange)』のデジタル配信も開始。6年間温めてきたものをいまハイスピードで発信し続けている。


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 THE XXXXXXは、あくまでインディーズとして活動をしているが、クオリティがとにかく高い。多くは語らずリフレインされる歌詞、ロック、メタル、エレクトロ、クラブミュージック……様々な要素が混じったメロディ、目の前に情景が浮かぶかのような世界観を持つ曲。THE YELLOW MONKEYやSOFT BALLETなどの風味もどことなく感じさせる。そして、その曲作りは作詞・作曲・編曲すべて自分たちで行なっているというから驚きだ。


 そんな彼らの曲の最大の特徴は、“詩的であること”ではないだろうか。もっと言ってしまえば、曲はもちろん演奏や音楽に対する姿勢もだ。以前、情報番組『スッキリ』(日本テレビ系)内コーナー「HARUNAまとめ」で特集された際のこと。サポートメンバーであるベーシストの根岸孝旨と、ドラムの天野達也に曲のイメージを共有する様子が映し出された。「アイスランドの草原です」「草原から海に向かって風が吹いてきて。ゆっくり歩いていって、一人で。坂下っていって海があって、そこから船に乗って旅に出ていく感じです」「霧が結構もやって感じで」と、風景として曲のイメージを説明。もはや、曲のイメージだけでちょっとした物語である。これを聞いたベテランベーシストの根岸は「彼らのやり方もわかりやすいし、その風景を共有するのはとてもいいと思う。僕もそのやり方をパクらせていただこうかな」と絶賛。天野もまた「ミュージシャンとはまた違う、役者さんの観点というか。角度が全然違ったので、新鮮」と話していた。


 この“詩的であること”は、今夜放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系/以下、『Mステ』)で披露する「冷静に暴れていこうか」からも感じることができる。まず、曲調。ギターからスタートすると、シンプルな音数のAメロ、音圧が上がるBメロ、サビ前に再び落ち着き、一気に盛り上がる。曲の構成が劇的というか、ドラマチックというか、非常に叙情的なのだ。さらに、内田が奏でるシンセサイザーの多彩な音も曲に色を付けている。そして歌詞。サビで〈さあゆこう無卿な人生/広げ過ぎた視野を狭め/心が痙攣を起こす/痺れは快感へ〉と、突き進んでいくイメージの言葉が並ぶが、その直後に〈死は近いよ〉と相反する言葉が並ぶ。真意は彼らにしかわからないが、撞着語法のように彼らの中に渦巻く複雑な世界像が言葉に現れた結果なのだろう。『Mステ』で披露されるのは、「冷静に暴れていこうか(Rearrange)」バージョンのため、何らかのアレンジが加わると想像できるが、この詩的な世界像は崩れないはずだ。


 そんなTHE XXXXXXは、『スッキリ』内で「自分たちで(ライブを)やってみて、まじで尊敬する。本当にすごい」と音楽を生業にしている人たちへのリスペクトと畏怖の念を語っていた。その上で、バンドを続けていくと宣言。THE XXXXXXが音楽活動を続けていく意義は、「役者で手に入れたセンスや感情と、音楽で手に入れたセンスや感情をシェアしあう。こういう経験をしている役者としていない役者では表現の方法が変わってくると思うので、すべてにおいて糧になることは間違いないです」という綾野の言葉に詰まっているのかもしれない。この先、山田、綾野、内田は俳優としてもミュージシャンとしても、さらなるスピードで成長していきそうだ。(文=高橋梓)