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江口洋介版“ガンテツ”から滲み出る大人の色気 新「ストロベリーナイト」世界観のアクセントに

2019年05月30日 09:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 『ストロベリーナイト・サーガ』(フジテレビ系)で姫川玲子(二階堂ふみ)の天敵・“ガンテツ”こと勝俣健作を演じる江口洋介。2010年に放送された『ストロベリーナイト』(フジテレビ系)では武田鉄矢が演じていたのもこの役であるが、原作のガンテツは、“背が低く、ずんぐりとしている”、“年は五十前後のはずだが、それにしては短い髪に白いものが目立つ”とある。そのため、『ストロベリーナイト・サーガ』が発表された当初はSNS上では、武田鉄矢のイメージが強かったため、ギャップを感じている反応も多かった。しかし、江口が演じるガンテツから滲み出る大人の色気やクールさ、そして情に厚い人柄に魅了されている視聴者が増えてきている。


【写真】江口洋介演じるガンテツ


 1990年代に『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)などのトレンディドラマで活躍した江口。代表作は『ひとつ屋根の下』シリーズ(フジテレビ系)や『救命病棟24時』(フジテレビ系)シリーズ。頼れる男や大人のいい男を演じることが多い江口だが、年齢の変化に伴い、クールな役柄やどこかダークなキャラクターを演じることも。5月17日から公開の映画『コンフィディンスマンJP ロマンス編』では、主人公たちを追い詰めるヤクザ・赤星を演じている。


 江口はガンテツを演じるうえで「犯人検挙のためなら法に触れる行為でも何でもやる」という原作通りの粗暴さだけでなく、ガンテツなりの「正義感」も表現している。第7話「インビジブルレイン」で、単独で容疑者のアパートを張り込む姫川の前にガンテツが現れ、押しのけて部屋に立ち入った姫川を、力強く床に押し倒した。姫川の過去の傷につけこむような行動から、ガンテツの卑劣な性格が伺える。だが同時に、ガンテツが自ら悪役に徹し、姫川を警察上部の陰謀から遠のけようとしているようにも見えた。


 またガンテツは菊田(亀梨和也)と対峙したとき、牧田(山本耕史)と共に行動する姫川の写真を手渡した。江口が発した「ぼやっとしていると大事なお姫様をさらわれるぞ」という台詞回しは、姫川を「お姫様」と揶揄する意地の悪さを表現しているだけでなく、菊田の姫川に対する秘めた想いに気づき、彼に助言しているようだ。


 かつて武田が演じていたガンテツにも、江口演じるガンテツが見せたような「良心」を垣間見せるシーンはあった。だが、姫川に強い敵意を向け、摘発するためなら部下や同僚をも切り捨てる姿から「ネチっこく厭らしい」印象が強い。そのため武田版ガンテツと比較すると、江口演じるガンテツのほうが「人間味」が強調され、彼の根底にある「良心」が伝わりやすくなっている。とはいえ、武田版も江口版も、ガンテツの名の由来である「頑固一徹」な捜査方法に揺るぎはない。自分の信じる道に従い、違法捜査もいとわず、時に同じ警部補である姫川をも脅かすガンテツの姿は、どちらの演技にも共通している。


 SNSでは、江口演じるガンテツの行動が度々話題に上がっており、姫川を押し倒した姿は「床ドン」と称され、「カッコイイ」「ガンテツにしてはかっこよすぎる」との声も上がっていた。だが、このシーンで筆者が感じたのは、物怖じしない姫川と犯人を捕まえるためなら手段を選ばないガンテツの、敵対関係だった。2010年版のキャストから一新された今作において江口は「姫川の天敵」という立ち位置を貫きながら、姫川や菊田にはない大人の渋さを醸し出し、本作の世界観のアクセントとなっている。


(片山香帆)