ラリー界の明日を担うヤングスターたちが覇を競うERCヨーロッパ・ラリー選手権の2019年シーズン第3戦ラリー・リエパヤが5月25~26日に開催され、今回のイベントがERCデビュー戦となった元WRC世界ラリー選手権王者ペター・ソルベルグの息子、オリバー・ソルベルグ(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)が、2018年王者のアレクセイ・ルキヤナク(シトロエンC3 R5)を抑えてFIAトップカテゴリー選手権初優勝を飾った。
ラトビアの伝統的高速グラベルステージを舞台に、これが初のポロR5での実戦参加となったオリバーは、レグ1オープニングの14.72km、SS1からいきなりトップタイムを叩き出し、サービスパークに衝撃を与えるパフォーマンスでERCデビューを飾った。
すると、続くSS2でも連続ベストをマーク。初日最初のループ最終ステージとなるSS3ではハーフスピンして2番手に迫られはしたものの、午後のセカンドループでは圧巻の連続ベストで帰還し、一度も首位を譲ることなくデビュー初日を終えることとなった。
一方、開幕2戦連続で優勝を争いながら大クラッシュで自滅していた王者ルキヤナクは、初日午前を慎重な走りで乗り切ると、オリバーがハーフスピンしたSS3でトップタイムを刻み、3.7秒差の2番手にまで浮上。しかし午後のステージでこの新鋭に対抗するスピードを見せることはできず、最終的にふたりのギャップは9秒7まで広がった。
その背後3番手につけたのは、こちらもERC1ジュニア登録(旧・ERCジュニアU28)のデビュー戦で印象的な走りを見せた地元リエパヤ在住のマルティン・セスク(シュコダ・ファビアR5)で、19歳の若手ラリーストは2018年ERC3タイトル獲得プライズとしてこれが初のR5カーながら、同じファビアR5に乗る4番手クリス・イングラムに対し11.6秒のマージンを築き、SS5以外は全ステージで先輩を上回り、表彰台圏内をキープすることに成功した。
その4台に続き総合5位で初日を走破したのは、TeamSTARDからシトロエンC3 R5でERC初参戦を果たした新井大輝で、自身初のマシンながら上々のマッチングを披露。しかし午後のリモートサービスで電装系のトラブルからか、C3 R5のエンジンが目覚めず7分遅れの出発でタイムペナルティを受け、8番手にまでドロップする不運に見舞われた。
続くレグ2では全8SS、106.50kmの勝負が繰り広げられたが、ピレリタイヤを装着したオリバーのポロGTI R5の勢いは衰えることを知らず、6ステージでトップタイムをマーク。ラリー全13SS中10のステージで最速を刻んだオリバーは、そのままERC1ジュニアクラスのみならず、史上最年少でのERC総合優勝記録を打ち立てる衝撃的なデビューを飾った。
「今日は僕の人生においても本当に大きなことを成し遂げた日になったよ」と、父ペターが開発に携わったマシンでFIA欧州選手権初勝利を飾ったオリバー。
「自分のドライビングが今日ほど思い通りになったことはないよ。何と言ったらいいのか、本当に信じられない気分だ。とても完璧なラリーだったけど、最後からひとつまえのステージ(SS12)では用心深くなりすぎて体が固まってしまい、アレクセイ(ルキヤナク)やトム(イングラム)にタイムを譲ってしまった」
「でも、そこから僕はこの週末を通じて何をやってきたのかを思い出して、それを取り戻すべきだと思ったから、最終SSはフラットアウトで行ったんだ。それで最終SS13もベストが獲れたから本当にハッピーだよ」
一方、今季からフランスのセインテロック・ジュニアチームに移籍した王者ルキヤナクも、オリバーが落としたSS9、SS12でベストを刻み、移籍後初となる完走で2位フィニッシュ。そして3位にはERC1の新たなスター、19歳のセスクが入りR5デビュー戦で初ポディウムを獲得した。
そしてレグ1で1分10秒のタイムペナルティ加算を受けた新井大輝は、その影響か午前のループステージ区間でC3 R5が競技区間用の"ステージモード"にスタックしたままとなり、リエゾン区間もその状態での移動を強いられるなどトラブルにも祟られ、総合8位でERCデビュー戦を終えている。
続く2019年ERCシリーズ第4戦は、2018年からカレンダーに復帰した世界最古の1戦ラリー・ポーランドとなり、第75回大会は6月28~30日に首都ワルシャワから北へ3時間の湖水地方を中心に、高速グラベルロードが待ち受ける。