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ユーロフォーミュラ・オープン第3大会で日本勢連勝。レース1は佐藤万璃音、レース2は角田裕毅が制す

2019年05月28日 20:21  AUTOSPORT web

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ユーロフォーミュラ・オープン第3大会レース1で優勝した佐藤万璃音(モトパーク)
連日の好天に恵まれたドイツ・ホッケンハイムリンクで2019年5月24~26日、ユーロフォーミュラ・オープン(EFO)の第3大会が6チーム/16台の参加により実施され、佐藤万璃音(モトパーク)がレース1でシーズン2勝目を達成。ホンダ育成でレッドブル・ジュニアの角田裕毅(モトパーク)もレース2で優勝を飾り、2戦連続で表彰台中央に日の丸が掲げられた。

 なお、佐藤はレース2で2位、角田はレース1で4位、名取鉄平(カーリン)はレース1で11位、レース2で8位だった。

■佐藤万璃音、「得意じゃない」ホッケンハイムでシーズン2勝目
「ホッケンハイムリンクは得意じゃない」と佐藤。金曜日の練習走行1回目は10番手、同2回目は13番手、同3回目はほぼ新品タイヤを履いたにもかかわらず9番手。しかし、不振の原因は彼のコースに対する苦手意識ではなかった。

 第3コーナーを立ち上がり緩い左コーナーを抜けてヘアピンへ進入、ヘアピンを立ち上がってメルセデス・カーブを挟みモービル1カーブへ至る高速区間のセクター2で、佐藤はライバルより終始コンマ6~7秒は遅かった。クルマに問題があるのは明らかだった。

「シフトアップのたびに前を走るクルマに置いて行かれた。程良いトゥ(スリップストリーム)を使えてもまったく足りなかった。原因はエンジンにあるとほぼ確信した」と佐藤。

 チームにはスペア・エンジンが1基用意されていた。その個体は新たに組み上げられたものではなく、走行距離を重ねていて万全の状態ではなかったものの、背に腹は代えられず練習走行直後に佐藤とチームは載せ替えを決断していた。

 これが功を奏したか、翌土曜日の予選1回目で佐藤は初めてのポールポジションを獲得。決勝でも素晴らしいスタートを決め、2番手以降を寄せ付けることなく今季2勝目をポール・トゥ・ウイン、加えてファステストラップ獲得という完璧な形で締めくくった。

「クルマはギア比など先行逃げ切り型に仕上げていたので、スタートで前に出られたら抜き返せない恐れもあった。僕は左前後だけ新品タイヤを履き、後ろのジャック(ドゥーハン)は新品タイヤ4本を履いていたから意外と食らいつかれた」

「リアム(ローソン)が追ってきたのは知っていた。レース終盤に後ろで白煙が上がり、何かがあったとは思ったけれど、それがリアムのスピンとは知らなかった」

 日曜日の予選2回目もポールポジションを獲得した佐藤。もっとも、中古タイヤから新品タイヤへの交換するピットストップの際、リヤサスペンションのロールバー調整に時間を要して、実質的なタイムアタックは1~2周しかなかった。「少し冷や汗だった」と佐藤は語った。

 決勝レース2では、ふたたびポール・トゥ・ウインを狙い、まずまずのスタートで先頭を守った。しかし、2周目のヘアピンで角田に、3周目のヘアピンでローソンに、あっさりと順位を明け渡した。最終的に角田に続く2位を手にしたとは言え、あの場面ではいったい何があったのか?

「自分の走りに集中し、前だけを見て走ろうと決めていた。スタートは悪くなかったけど、後ろを突き放すまでには至らず、気が付いたら角田に横へ並ばれていた」と佐藤。

「リアムにも抜かれたけど、あれはここで競り合って角田の独走を許すより、ローソンを前へ行かせてレース後半勝負と頭を切り替えたから。結果的にローソンは自滅したけど、それがなくても抜けた。ただし、良い仕事をした角田には届かなかった」

■角田、2019年シーズン初優勝。「少し遅すぎた感じもあるけれど、これから挽回したい」

 角田は練習走行1回目の途中でスピンを喫し、5周しか走れず15番手とスロー発進。同2回目と同3回目は6番手と挽回するも、少々不満の残る滑り出しだった。もっとも、同3回目に関しては、「足元に外れた部品が転がってペダル操作を邪魔されたため」と理由を説明しており、とくに大きな問題はなさそうだった。

 迎えた土曜日午前の予選1回目は4番手と、チームメイト4名の中では最下位に終わった。しかも同日午後の決勝レース1ではスタートで順位を落とし、最後まで攻めの走りを見せるも表彰台には一歩届かない4位に終わった。その理由に関して角田は決勝レース2のあとに説明している。

 翌日曜日の予選2回目、角田はポールポジションの佐藤に僅か0.047秒後れて2番手に留まった。しかし、決勝レース2では良いスタートを決め、2周目のヘアピンで佐藤のイン側へクルマを滑り込ませて先頭を奪った。視界が開けた角田はファステストラップを刻みながら後続との差を広げ、2019年シーズン初優勝を手にした。

「スタートは無難に決まった。後ろにリアムが居たので、早めに佐藤(万璃音)を抜きたかった。2周目のヘアピンでうまく前へ出られた。あとは自分の走りに専念するだけで、あまり後ろは見ないようにした。それでも何周かに1回は後ろを確認し、少しずつ離れていったのであとは自信を持って走るだけだった。終盤にリアムがコースアウトしたけれど、それがあってもなくても結果は同じだった」と角田。

「今日のクルマは良かった。昨日とは大きく変えた。じつはリアムや佐藤のセットと僕のセットは違った。僕がクルマから感じるフィーリングの伝え方が拙く、エンジニアへは逆のことを言っていた」

「そこで今日の予選からリアムや佐藤選手と同じようなセッティングにしたんです。予選でポールポジションを取れなかったけれどクルマは良くなったし、決勝のペースには自信があった。本当は開幕大会のポールリカールから勝ちたかった。少し遅すぎた感じもあるけれど、これから挽回したい」と角田は肩の荷を少し下ろせたかのような笑顔で語った。

■チーム全体で苦戦が続くカーリン。「ドライバーがどれだけ頑張っても1秒差は埋められない」と名取

 佐藤や角田の快走に比べると、これまで6位を最高位として入賞4回の名取の成績には物足りなさを覚える向きもあるだろう。チームメイトの成績は以下のとおり。ビリー・マンガーは28点でドライバーズ・ランキング7位、ニコライ・ケアゴは28点で同8位、名取は22点で同11位、クリスチャン・ハンは20点で同12位だ。

 もっとも、マンガーやケアゴはフランス・ポーで実施された第2大会の決勝レース2で、スタート直前に降り始めた雨でギャンブルを敢行、レインタイヤへいち早く履き替えて得た優勝と2位でランキングが上がったという背景がある。一方、名取もそのときレインタイヤへの履き替えをチームに訴えたが聞き入れてもらえなかった。

 ポーの大会以降、名取はチームに少々不信感を持っているようだ。第三者から見ても、同じスピース・エンジンを搭載するモトパーク勢とカーリン勢の予選タイムを比較すると、後者はつねに遅れている。

 ホッケンハイムではカーリン勢の4名が揃って0.6秒から0.9秒はモトパーク勢に突き放されている格好で、もはやドライバーの才能不足や経験不足という理由では説明しきれない。

「僕たち4名がどんなに頑張っても、モトパークには敵わない。HWAエンジンを使うテオ・マルティンやダブルRにさえ敵わない。たしかに僕たちにも足りない部分はあると思う。しかし、現状の1秒差は埋められない。ドライバーがどれだけ頑張っても0.2秒や0.3秒を補えるに過ぎない」と名取は至極まっとうな見解を述べた。

 もともとEFOにおけるカーリンは、カンポス・レーシングやRPモータースポーツの後塵を拝してきた歴史があり、イギリスF3やユーロF3でタイトルを争っていたレース・オペレーション部隊とは異なるという事情もある。名前はカーリンながらも、EFOにおいては決して有力チームと言えないのが現実である。

「ドライバーからチームへはいろいろと提案している。しかし、僕たちドライバーは経験も知識も浅いとチームからは思われているのか、容易には聞き入れてもらえない。カーリンにはカーリンのやり方があると、ドライバーからの提案はあっさり却下されているのが実情」と名取はうなだれる。

 2017年のFIA-F3ヨーロピアン選手権(ユーロF3)では、ほぼ同じクルマでランド・ノリス(現マクラーレンF1ドライバー)にドライバーズ・タイトルを取らせたカーリン。チームの名前は同じながら、クルマに関するデータがきちんとEFOへ受け継がれているのかは微妙なところ。名取をはじめとするカーリン所属ドライバーの苦戦は目を覆うばかりと言える。

 第3大会終了時点のEFOドライバーズ・ランキングは、104点(2勝を含む4表彰台、2ポールポジション、1ファステストラップ)の佐藤が首位、89点(2勝を含む3表彰台、2ポールポジション)のローソンが2位、80点(1勝を含む3表彰台、1ファステストラップ)の角田が3位。名取は22点で11位。なお、EFO第4大会はベルギー・スパフランコルシャンで6月7~9日に実施される。