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中丸雄一のフラットさに隠れる真相とは? 『わたし、定時で帰ります。』ハッキリと見えた巧の本音

2019年05月28日 18:31  リアルサウンド

リアルサウンド

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 もしかしたら中丸雄一ほど、演技に対して賛否両論ある人も珍しいかもしれない。


【写真】『わたし、定時で帰ります。』で演じる諏訪巧


 現在、中丸は『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)で、主人公・東山結衣(吉高由里子)の恋人・諏訪巧を演じている。恋人のために手料理を振る舞う家庭的な面を持ち、結衣が元婚約者の種田晃太郎(向井理)と同じ職場で働くことにも理解があり、仕事の悩みも真剣に耳を傾ける……働く現代女性にとって理想的な結婚相手ともいえる男性だ。


 そんな巧に扮する中丸の演技に、SNSを中心に様々な意見が聞こえてきた。淡々とした言い回し、微笑ましいほどライトなキス、急な仕事のトラブルで結婚の挨拶がドタキャンになっても変わらない表情に、演技力を問う声も多く上がった。一方で、まぶたの開き具合や視線の動きなど、うっかり見逃してしまいそうなほどの小さな変化に、感情の機微が現れているという声も。


 世の中には、感情の起伏が少ない人が確かにいる。そして、中丸自身もその1人。KAT-TUNのコンサートで販売されるうちわの写真も、長年変わらないとイジられるほどだ。だからこそ、この議論が盛り上がっているのかもしれない。演じているのか、演じられていないのか。狙っているのか、天然なのか……。


 誤解を恐れずにいえば、個人的にはどちらでもいいと思う。結果、私たちはそんな中丸の演技に気になる登場人物として心を掴まれているのだから。感情的にならずいつもフラットな巧に、結衣と同じように「癒やされる」という人もいるし、「本当にこんなにいい人なの?」と、ちょっと気がかりに思ってしまう人もいる。


 見ている人の心に小さなシミを残す中丸の演技。そのシミがいつか何かの伏線になるのではとどんどん広がっていくこともあれば、大したことなかったのだと薄くなっていくこともある。ドラマを通じて、心に残したシミがもたらすゆらぎを楽しみたい人にとっては、最高の役者とも言えるのではないか。


 また、『わたし、定時で帰ります。』は、現代の「普通」を描こうという意欲作でもある。善と悪のわかりやすい対立ではなく、それぞれの言い分に「普通」である私たちの誰もが共感でき、日常的な葛藤や、陥りがちな空回りっぷりを丁寧に紡いでいく。


 だからこそ、中丸が醸し出す「普通」の人っぽさは、必要不可欠な存在ともいえる。むしろ、現段階では「普通」よりも出来すぎている分、何か一波乱あるのではと、深読みしたくなるのかもしれない。


 そんな今まで飄々とした巧が、第6話のラストでは晃太郎に対して煽るような態度を取った。冷静な物言いの中にハッキリと見えた、巧の本音。ここから巧がどのような変化を見せるのか、それとも私たちの思い過ごしに終わるのか。胸をざわつかせる中丸の演技も、ストーリーのクライマックスに向けて楽しみにしている。


(佐藤結衣)