メルセデスF1チーム代表のトト・ウォルフは、2019年F1第6戦モナコGPでのチームの勝因は、ルイス・ハミルトンの走りに負うところが大きかったと語った。
チームはセーフティカー導入後の10周目という早い時点でハミルトンとバルテリ・ボッタスをピットインさせ、タイヤをミディアムコンパウンドに替えている。この判断は戦術的に誤りだったことをウォルフは認めた。
決勝レース後、ウォルフはイギリスのSky Sports F1の取材に対して「タイヤ選択を間違えたと認識している。後から考えれば、ハードを選ぶべきだった」と語った。
「しかし我々は戦略ミスを滅多に犯さないし、失敗もほとんどない。最後にはドライバーが状況を変化させ、我々に勝利をもたらしてくれた」
「ルイスはコース上で素晴らしい仕事をした。マックス(・フェルスタッペン)との戦いは本当に苛烈なものだった」
「今になって振り返れば、我々はルイスのタイヤ選択を間違えていた。ピットストップの際にハードタイヤに替えるべきだった。だが、こうしたことは起きてしまう。あの時点ではミディアムが正しい判断だと考えていた」
「戦況を変化させ、レースを支配したのはドライバーだ」
「今回は本当に激しい戦いを制しての勝利だった。ドラマだらけのレースが終わって、心からほっとしている」とフォルフは付け加えた。
ウォルフによれば、チームとしては15周目か16周目のあたりでピットインさせようと考えており、その場合はミディアムコンパウンドが正しい選択になったはずだという。しかしセーフティカーが導入されたことでピットインの予定が早まり、メルセデスにとっては不利な方向に戦況が変化してしまった。
ボッタスは、ピットレーンでマックス・フェルスタッペンと接触したことでパンクし、これが奇妙にも幸運となった。彼はすぐさまピットに戻り、今度はハードタイヤへと履き替えている。
だがハミルトンにはそのような機会は訪れなかった。彼は順位を落とすことなくピットに戻ることができなかったため、ミディアムのままでフィニッシュまで耐え抜くしかなかったのだ。
「かなりの長距離をタイヤを保たせながら走らなければならなくなると、誰もが分かっていた。最後まで走ったら、タイヤにはもうゴムが残っていないだろうと考えていた」とウォルフは語った。
その後レース終了まで、チームの無線からは間違ったコンパウンドで戦わなくてはいけないことに対する、ハミルトンの怒りに満ちた不満の声が響き続けた。だがウォルフは、ハミルトンには不満を発散させる必要があったとして、特にとがめるようなことはしなかったという。
「ドライバーには何らかの形でプレッシャーを解放する手立てが必要だという事実を、我々は受け止めるべきだと思う」とウォルフ。
「我々と話すことでそれができるならば、単に怒りを吐き出すだけだったとしてもまったく構わない。我々には彼を支える必要があるというだけのことだ」
ウォルフは、先日亡くなったニキ・ラウダの魂が、ハミルトンの勝利を支えた重要な要素だったとも付け加えた。
「今日はひとりの世界チャンピオンが見せた、もう我々のそばにはいないもうひとりの世界チャンピオンのための走りだった。その意味するところは大きい。これ以上ないほど劇的なレースだった」とウォルフは述べた。
「これから数日間は、つらいことだがウィーンで行なわれるニキの葬儀に出席する。それからカナダGPに向けて出発するよ」