世界三大レースのひとつ、第103回インディアナポリス500マイルレース。26日に決勝レースが行われ、シモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)がポール・トゥ・ウインで初制覇。佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は惜しくも3位に終わった。
ポールポジションからスタートしたシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)は、200周のレースの116周をリードして優勝した。
2009年以来となるポール・トゥ・ウイン。そして、昨年に続いてインディカーGPウイナーがインディ500も制した。チーム・ペンスキーは19回目のインディ500優勝だ。
パジェノーに勝負を挑んだのは、予選9番手だったアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)。
今年のレースで、トップグループ内で最も多くのオーバーテイクを実現したのが彼だったのではないだろうか。177周目に彼はとうとう“アンタッチャブル”と見えていたパジェノーを抜いてトップに躍り出た。
しかし、その直後にフルコースコーションが発生。
セバスチャン・ブルデー(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・バッサー・サリバン)とグラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)が絡み、その後ろでフェリックス・ローゼンクヴィスト(チップ・ガナッシ・レーシング)がスピンし、ザック・ビーチ(アンドレッティ・オートスポート)にヒット。スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)もその影響を受けてマシンにダメージを負った。
コース清掃のために赤旗中断。リスタートは残り13周で切られた。今日は雨の予報もあったが、その心配はすでになくなっていた上に、レースがストップしている間に強い日差しが照りつけるまでになった。
路面温度が今年最高気温だったファイナルプラクティスを優に上回る47度に。ダウンフォースの減ったコンディションでロッシとパジェノーはシーソーバトルをスタートさせた。
187周を終えてのリスタートの加速を成功させたパジェノーがトップを奪い、189周のターン1でロッシが抜き返した。さらに、189周のメインストレートでパジェノーが逆転した。
その後は膠着状態になったが、それはロッシが逆転のチャンスを最後まで待つ作戦に切り替えたからだったようだ。
残り2周。ロッシが狙いすましたようにターン1でトップに立ち、ターン2までのショートストレートでリードを広げた。勝負ありと見えた。
しかし、冷静なパジェノーはバックストレッチで差を縮め、ターン3でなんとアウトから豪快に前に出た。決定的パスだった。
ロッシはそれでも諦めず、食い下がって最終ラップのターン4立ち上がりからの加速で勝負を仕掛けたが、パジェノーには余裕があり、チェッカードフラッグをトップのまま潜った。ロッシは0.2086秒届かなかった。
■ラップダウンから優勝争いに加わった佐藤琢磨
ロッシとパジェノーの死闘。その後ろでゴールしたのが佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)だった。
ふたりのバトルに加わっていく勢いすら見えた瞬間もあった彼には、スタンドのファンが大歓声を送っていた。
予選14番手だった琢磨は、レース序盤に11番手まで浮上……。
しかし、ピットクルーのミスで逆に1周のラップダウンになった。イエローの少ないレースで彼はリードラップに戻るチャンスがなかなか掴めなかったが、ピットタイミングをずらすなどの作戦を様々トライしたことが功を奏し、ゴールまで60周を切ってからリードラップに復活。
最後のピットタイミングが多重アクシデントの起こる直前という幸運に恵まれ、リスタートを5番手で迎えることとなった。周回遅れで長い時間を過ごしたが、最後の最後で優勝争いに加わるチャンスを与えられたのだ。
リスタート直後にエド・カーペンター(エド・カーペンター・レーシング)をパス。オーバル・スペシャリストの彼はターン3で琢磨のインを刺してきたが、琢磨はサイド・バイ・サイドで走ってポジションを譲らず、その後にはジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)も抜いて3位に浮上。
そのままの勢いでロッシに襲いかかり、更にはパジェノーまで抜くことが期待されたが、3位のままでのゴールとなった。
パジェノーは、「夢がまたひとつ叶った。僕の人生で最も大きな夢が。この喜びがどれだけのとなるのか、今の自分にはまだわからない。今日の勝利がどんな意味を持つのか、それを測ることも今はできない」
「うれしいのは間違いない。今日は本当に良い走りができたと感じている。しかし、この結果がただただ信じられないんだ」と語った。
2位に敗れたロッシ。「説明は要らないと思う。見ての通り、僕らにはストレートスピードが足りていなかった。マシンに乗っている僕に、その件で何かできることはなかった」
「今日のレース、22号車は勝つべき力を備えていた。ポールポジションからスタートした彼は、おそらくレースの70パーセント以上でリードラップを記録したと思う。彼が速かったこと、勝者に相応しかったことは間違いないが、あの最後のフルコースコーションが僕らにとっては痛かった」
「燃費で彼よりも圧倒的に有利な立場にあった。あのイエローが勝敗を分けた大きな要因のひとつ目で、ふたつ目は、僕らがトップを走っている時のスピードでライバルに劣っていたこと。僕は最後のリスタートからのバトル、ずーっと全開だったんだ」
「インディ500で勝利を逃し、2位になった。この悔しさは当分僕の頭から離れることはないだろう」とコメントした。
琢磨の3位も素晴らしい結果だ。スピードウェイを埋め尽くした30万人を超す数のファンは、パジェノーとロッシと同じように讃えていた。
「最初のピットで右リヤホイールがちゃんと装着されていなかったようで、ターン3でグラッときた。だから、周回遅れになってもいいからピットに戻り、確認をした。実際に周回遅れになったけれども、500マイルのレースだから、と諦めずに走り続けました」
「リードラップに戻るまでには100ラップ以上もかかりましたが、それが可能となったのはチームの作戦が良かったからです。燃費をセーブしてピットタイミングをトップグループと違え、チャンスを掴もうとしていました」
「周回遅れで後方の順位を走っている間も、トラフィックでどう走れば良いのか、オーバーテイクはどうやって行うべきか、いろいろとトライをしていました。そして、リスタートは5番手で迎えることとなり、”やるしかない!”という気持ちになっていました」
「あの最後のリスタートからは、とてもエキサイティングなバトルを戦えましたね。2台をパスし、前にはロッシとパジェノーのふたりしかいなくなりました」
「更に上を狙いました。でも、アレックスをオーバーテイクするところまでは行きませんでしたね。サイモン・パジェノー、おめでとう! 彼は速かった。勝者にふさわしい速さでした」
「あれだけ蛇行しても、あのスピードを出せていた。自分たちもマシンを最大限のところまで持っていけていたと思います。3位はチームにとっても良い結果です」と話した。
4位はニューガーデン。5位は残り4周でカーペンターをパスしたウィル・パワー(チーム・ペンスキー)。パワーは2回目のピットストップでホイールをロックさせてスライドし、リードラップの最後尾まで下がるペナルティを受けて2年連続優勝のチャンスを失った。
6位はカーペンター。7位はルーキー最上位のサンティーノ・フェルッチ(デイル・コイン・レーシング)だった。
コルトン・ハータ(ハーディング・スタインブレナー・レーシング)はメカニカルトラブルで今日のリタイア第1号となり、最下位の33位。予選でフェルナンド・アロンソ(マクラーレン・レーシング)をバンプアウトしたカイル・カイザー(フンコス・レーシング)は72周目に単独クラッシュしてリタイアを喫した。