レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが、予選で3番手を獲得した。スペインGPまでの5戦でのレッドブル・ホンダの予選での最高位は、4番手が3回(オーストラリアGP、アゼルバイジャンGP、スペインGP)だったので、レッドブル・ホンダとしては初めての予選トップ3。また一歩、前進した。
前進したのはレッドブル・ホンダだけではない。フェルスタッペンもこの一年間で大きく成長した。
1年前のモナコGPで、フェルスタッペンはフリー走行3回目でクラッシュ。大きな損傷を受けたフェルスタッペンのマシンはメカニックたちの懸命な修復作業にも関わらず、Q1終了までに間に合わず、フェルスタッペンは最後尾からのスタートを余儀なくされた。
昨年のレッドブルのマシンは低速サーキットに強く、チームメイトだったダニエル・リカルドはポール・トゥ・フィニッシュを飾った。勝てるマシンを手にしながら、自らのミスで勝つチャンスを手放し、9位に終わったのが昨年のフェルスタッペンのモナコGPだった。
その後、フェルスタッペンは生まれ変わったかのように、ミスを犯さなくなった。モナコGPの後、優勝はおろか表彰台にも上がることができなかったリカルドに対して、フェルスタッペンは10回表彰台に上がり、そのうちの2回は頂点に立った。その成長ぶりをクリスチャン・ホーナー代表は次のように評価する。
「昨年を比べれば、マックスほど成長したドライバーはいないのではないだろうか。ドライビングが成熟しただけでなく、開発面でもチームを引っ張っている」
この日の予選でもフェルスタッペンの精神的な成長ぶりを垣間見ることとなった。それはトップ10の順位を決めるQ3の2度目のアタックだ。Q3の1回目のアタックを終え、フェルスタッペンの順位は3番手。
トップのバルテリ・ボッタス(メルセデス)との差は0.189秒差。ポールポジションをまだ手にしたことがないフェルスタッペンにとっては、F1での初ポールポジションを獲得するチャンスだった。しかし、2回目のアタックに出て行ったアウトラップで前のクルマに引っかかり、タイヤに熱を入れ損ねてしまう。
「レーシングドライバーとしてはポールポジションを取りたいところだったけど、現実を見なくてはならない。タイヤを温めきれずに最初のセクターで自己ベストを更新できなかったので、無理をせずにアタックをやめることにした」
■直近5年間でPPから優勝したのは2回のみ。3番グリッドからもチャンスはある
レーシングドライバーというのは、いかに100%でマシンをコントロールするかが重要となる。99%ではライバルに負け、0.1%でもオーバーすれば、クラッシュすることになる。その限界を見分ける能力がフェルスタッペンは高いと、田辺豊治F1テクニカルディレクターもモナコGPの予選でのフェルスタッペンの走りを振り返る。
「アタックを終えた後のエンジニアとの会話を聞いていても、まるでスローモーションのように自分のラップを説明することができる余裕を持っていますね。モナコは攻めれば攻めるだけ速くなる一方で、リスクも大きくなるコース。周囲のドライバーのラップタイムを見て、これ以上、リスクを取っても無駄だなと思ったんでしょう。本当のトップドライバーですね」
抜きにくいモナコGPでは、ポールポジションがほかのどのグランプリよりも優勝に近いグリッドだ。しかし、最近の5年間でポールポジションから優勝したのは、じつは2回にとどまっており、必ずしもポールポジションが優勝するための指定席とはなっていない。
「メルセデス勢の近くにとどまっていられれば、戦略しだいでチャンスがある。レースでどんな展開になろうと、最高の結果を得るためにベストを尽くす」(フェルスタッペン)
フェルスタッペンがQ3の最後のアタックをやめた理由は、「メルセデスとの勝負を諦めたからではなく、いまは勝負すべきときではない。本当の勝負は、日曜日の午後だ」と判断したからではないだろうか。
78周で争われるモナコGP決勝レース。予選で他車のアタックを妨害したとして、3番手降格のペナルティを受けて8番手からスタートすることとなったピエール・ガスリーとともに、3番手スタートするフェルスタッペンの走りに期待したい。