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『なつぞら』山口智子×比嘉愛未、元朝ドラヒロインの貫禄 咲太郎を取り巻く恋路にも注目

2019年05月26日 06:11  リアルサウンド

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 『なつぞら』(NHK総合)「東京・新宿編」が、第8週「なつよ、東京には気をつけろ」よりいよいよ本格スタートした。


参考:『なつぞら』第49話では、なつ(広瀬すず)が東洋動画の入社試験に挑む


 なつ(広瀬すず)と共に上京する雪次郎(山田裕貴)の送別会、北海道大学に入学が決まった夕見子(福地桃子)の合格祝いを経て描かれる開拓者・なつたちの上京物語。文化の中心地・新宿という舞台から一見華やかなスタートにも見えるが、そのタイトル通りに前途多難な結果となる。咲太郎(岡田将生)とあっけなく再会したなつは、服のボタンを全て掛け違えるほどに上京の意味を勘違いしまくった兄に振り回されることに。その過程で出会うのが、おでん店「風車」女将・岸川亜矢美(山口智子)だ。


 亜矢美は、咲太郎を母親のように可愛がり育てた、劇場「ムーランルージュ」の元ダンサー。言わば、なつにとっての柴田家と同じ存在だ。亜矢美と咲太郎の親子のようなやり取りを見て、なつは改めて北海道の家族の大切さ、恋しさを確認することとなる。実は、第5週「なつよ、お兄ちゃんはどこに?」第30回にて、会話の中で登場していた新宿編において重要人物の亜矢美。印象的なのは、現役の歌手・煙カスミ(戸田恵子)にも劣らない、その派手な風貌だ。映画『カルメン故郷に帰る』の高峰秀子を参考にしたという亜矢美の衣装や髪型からは、夢ある華やかさを感じさせる。


 第8週のラストを飾る第48回では、かつてのムーランルージュで一世を風靡したダンサーとしての亜矢美と子供時代の咲太郎(渡邉蒼)がタップダンスで心を通わすシーンが。映画『座頭市』などを手がけたHIDEBOHが指導を担当したタップダンスは、2人がどれだけの情で結ばれているかを体現したものであり、なつが柴田家で酪農に専念していた一方で、咲太郎もまた幸せに生き、夢を育んでいたことを思い起こさせる(ちなみに、放送日の5月25日は「タップダンスの日」)。


 また、『なつぞら』は「連続テレビ小説」第100作目ということで、歴代の朝ドラ女優が多く登場している。亜矢美を演じる山口智子は、『純ちゃんの応援歌』(NHK総合/1988年)のヒロインを飾った俳優だが、新宿編にはもう1人、「川村屋」のマダム・前島光子を演じる比嘉愛未もまた『どんど晴れ』(NHK総合/2007年)でヒロインを務めている。先代のマダムの意志を立派に継承し、川村屋を守るその強く、優しい気品溢れる姿は文化の街・新宿を代表する存在だ。咲太郎に間違ったことははっきりと伝えるその姿勢から、度量の大きさも感じさせる。比嘉愛未と広瀬すずは元々大の仲良しであり、広瀬と富田望生ほど……とは言わないが、その距離の近さが作品にも表れることを期待したい。


 『なつぞら』においての恋物語は、なつ以外にも照男(清原翔)と砂良(北乃きい)、雪次郎と夕見子など、様々な矢印が飛び交っていた。新宿編ではすでに咲太郎に向けて、「川村屋」ウエイトレス・三橋佐知子(水谷果穂)、煙カスミの付き人・土間レミ子(藤本沙紀)からの好意が明らかになっている。女の子に限って、優しさが時々出すぎてしまう咲太郎。その恋路がどのような結末を迎えるのか……というか、まず咲太郎が彼女たちの思いに気づくのかにも注目だ。(渡辺彰浩)