2019年、トヨタの若手ラリードライバー育成プログラム『TOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジプログラム』で腕を磨いている勝田貴元。今季はフィンランド国内ラリー2戦にトヨタ・ヤリスWRCで参戦し、WRC世界ラリー選手権の最上位クラス挑戦に向けて、研鑽を積む1年となる。
5月10~12日に行われたWRC第6戦チリで自身2度目のWRC2クラス優勝を遂げた勝田は、3月頭に行われたフィンランドラリー選手権第3戦イタ・ラリーでヤリスWRCを初めて実戦でドライブし、見事優勝。そして、5月24~25日に行われる第4戦リーヒマキ・ラリーでは、ヤリスWRCで2度目の実戦を迎える。
前戦のイタ・ラリーが雪上を舞台にしたスノーイベントだったのに対し、今回のリーヒマキ・ラリーは未舗装路を舞台にしたグラベル・イベント。またリーヒマキ・ラリーはWRC屈指のハイスピードイベントであるラリー・フィンランドに匹敵する高速イベントでもあり、勝田にとっては新たなチャレンジとなる。
そんなリーヒマキ・ラリーを目前に控えた現地24日、大会への意気込みを聞いた。
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――リーヒマキ・ラリーを前に、ヤリスWRCをどれくらいテストしたのですか?
勝田貴元(以下、貴元)フィンランドのユバスキュラ近郊で2日間テストをしました。メインチームのテストを兼ねて、400kmくらい走りました。
グラベルでちゃんと乗ったのは2018年末以来で、その時は大雨でドライコンディションでは乗れませんでした。今回の2日間も途中で雨が降ったりしましたが、最初の方はドライでしっかり乗れて、フィーリングを確認できました。
スノーでも感じたのですが、やはりクルマの限界が非常に高く、運転はしやすいのですが、スピードレンジも、アベレージスピードも上がるので、集中力がほんの少し切れたりするだけで、クラッシュなど大きなミスにつながりかねない。そういったことを、今回のテストで再確認しました。
――普段乗っているフォード・フィエスタR5から、すんなりとスイッチできましたか?
貴元:フィエスタR5とヤリスWRCは、ハンドリングが真逆だと思います。フィエスタR5は挙動がゆっくりで、クルマのロールを使って曲げる特性ですが、ヤリスWRCは動きがクイックで、WRカーの中でも初動がかなり優れているクルマだと思います。
だから、最初に乗った時はハンドリングの違いに驚きましたが、今はもうすっかり慣れました。ただし、問題は実際のラリーステージを初めて走った時に、パッとそういう走りができるかどうかです。
もしかしたらR5のクセが出てしまうかもしれないので、そこは乗っていきながら修正できたら良いと思います。
――リーヒマキ・ラリーへの出場は初めてですか?
貴元:はい。レッキ(ペースノートを作るための、ステージの下見走行)をして、ナローな道もありますが、基本的にワイドな道が多く非常にハイスピードなコースだと思いました。WRCフィンランドのオウニンポウヤのような、ハイスピードでクレストを越えながら右左に曲がるようなステージもあるので、ヤリスWRCがどのような動きをするのか、とても楽しみです。
一部には時速200キロでアプローチするようなジャンプもあり、WRカーだとどれくらいの飛距離になるか見当がつきません。そういうところは、少し抑えていかなければならないと思います。ここ1~2年ラリー・フィンランドはスピードレンジを意図的に落としているので、リーヒマキ・ラリーの方がスピードレンジは確実に高いと思います。
■ラリー・チリでの優勝で「ネガティブな意味ではない改善点が多く見つかった」
――雪のラリーだった、前回のイタ・ラリーは勝田選手だけがWRカーで出場し優勝しましたが、今回はもう1台WRカーがエントリーしています。地元のヤリ・フッツネンが、ワークス体制でヒュンダイi20クーペWRCをドライブしますね。
貴元:WRカーが2台ということで、いろいろな人が注目しているだろうし、どちらが速いのか比べられると思います。しかし、チームからも言われているのですが、勝敗を気にするのではなく、すべてのステージをきちんと走りきり、ヤリスWRCがどういう動きをするのかを、しっかり学ぶことが重要だと思います。
とにかく、マイレージを稼ぐことが今回の1番のターゲットです。ただし、WRカーがもう1台いる方が、自分がどれくらいのレベルで走っているのか分かりやすいので、それは楽しみです。
相手も今回が初のWRカーなので、抑えてくるのか、それとも今後のためにプッシュしてくるのか分からないですね。とても才能のある速い選手ですし、このラリーには何度か出ていてコースはよく知っているので、渡り合うのは簡単ではないのかもしれませんが、どういうギャップで走れるのか、目安として見れたら良いと思います。
――1デイイベントで、全部で9本のSSを走りますが、どのように戦う予定ですか?
貴元:非常に速いラリーですし、最初に何かあってはいけないので、自分としては最初のステージから全開で行くのではなく、ステップ・バイ・ステップでスピードを上げていつもりです。
――少し前のWRCラリー・チリではWRC2で2度目の優勝を果たしましたが、それによって自信をさらに高めることはできましたか?
貴元:自信よりも、自分が改善しなければならない点が多く見つかりました。それはネガティブな意味ではなくて、今後に向けて自分のドライビングや、クルマの改良点が見え、いろいろな知識が得られたので、そこがアルゼンチン、チリという連戦を終えての1番の収穫です。
ここまでWRC2を戦ってきて、本当に多くを学びました。特に、ペースノートに関しては、チリでは少し情報を入れ過ぎた部分もあったので、今回のリーヒマキ・ラリーではとにかくシンプルに作りました。それがどのように作用するのか、とても楽しみです。