オートポリスは天候が悪化するとホントに悪くなる。雷もなるし雨も降る。一番すごいのは霧で、クルマから下りようとして足下が見えずびっくりするほど濃いことがある。駐車場から見渡す限り真っ白でどっちへ向いて歩きだせばいいのかわからなかったこともある。今回、スーパーフォーミュラ第2戦の観戦にいらっしゃったファンの皆さんも、雨と風で大変だっただろう。でもレースが良かったから元は取れたかな?
オートポリスを取材する際には、熊本空港との間にある肥後大津の町にあるホテルを使うと便利だし佐賀・呼子のイカがおいしい店もあるので良いのだが、例によってめぼしいホテルは有力関係者にさっさと押さえられてしまうので我々弱小メディアにはめったに回ってこない。
そういう場合はみんな、菊池温泉だとか山鹿温泉だとか日田温泉だとか、近辺の温泉街に分散する。阿蘇山だけあって近辺にはいろいろ温泉街が点在していて中には安い宿もあるので泊まる場所には事欠かないのだ。オートポリスは、主要サーキットの中では観戦用の温泉宿が一番充実しているかもしれないなあ。
ぼくはこの15年ほどは外輪山の中へ下りて内牧温泉に泊まっている。箱根やら別府やらという有名温泉とは違って、少々古ぼけた田舎の小さな温泉町だけど、素泊まり5500円温泉掛け流し、みたいな嬉しい温泉宿がいくつかあるうえ、夜の町も暗いんだけれど探せばぽつぽつ店がある。オートポリスへのアクセスも30分ほどと便利なのでお気に入りなのだ。
金曜の夜は、温泉宿にチェックインした後、これまで行ったことのない店に飛び込んでみた。実は先日、たまたまこの地域の市民活動がメディアで紹介されているのを見て、そのメンバーが打ち上げに使っていたのがこの店であることに気づいた。映像を通して「おや? いつも前を通り過ぎるあの店じゃないか? 店頭はなんだかぱっとしないけど、店内、いい感じだなあ」と興味を持って、今度は自分で入店してみようと決めていた。なにしろ店名が「ニュー大吉」だ。ぼくの経験では「ニュー」系にはあまり良い店はないのでこれまで敬遠していたのだった。
入店してみると、いかにも地元の店である。お通しが気の利いた3点盛り。生ビール中、ちくわの磯辺揚げ、もつ鍋1人前、燗酒2合を注文。おなかいっぱいで3560円。お値段リーズナブルで大満足だ。地元の店はいいなあ。「ニュー」系にも良い店があるじゃないかと感服した。
土曜日はいつもの隠れ家居酒屋「筍ん子」へ行った。10年以上前に飛び込んだ店だけど、「よくここへ入ってきたね」と店主が驚くような、路地の一番奥に店がある。非常に入りづらいロケーションだけど、店内は店主手作りの飾り付けがしてあり料理も大変おいしい。聞けば、オートバイでツーリングする人たちの宿があって、そこの指定食堂だとか。そういえば路地の壁にはライダーたちが残していったメッセージカードが山ほど貼り付けてあった。
内牧温泉はこれまで大水害や大地震など、大きな災害に見舞われてきた気の毒な地域だ。店主はそういう災害をどうやって乗り越えてきたかをいろいろ記録している人で、手が空くと体験談を語ってくれる。ただ、いつも週末は混んでいて、場合によっては入店を断られたりもするから要注意だ。
今回は、何年か前にこの店でたまたま知り合ったレース雑誌の読者や、同業者に出くわした。調子に乗って少し呑みすぎたかな? オススメは油揚げ焼きと阿蘇の地酒だ!