F1チーム代表4名が、フェラーリだけに新たな規則やレギュレーション導入への拒否権が与えられ続けている現状について、揃って批判の声を上げた。
過去数十年の間、フェラーリはF1での新ルール導入に対する拒否権を保持し続けている。これはF1史上最も名声があり、そしておそらくは最も重要なチームに対して、将来にわたり長くこのスポーツにとどまってもらう目的で作られた取り決めの一部を成すものだ。
2週間前、フェラーリF1チーム代表のマッティア・ビノットは拒否権について、F1の全チームにとって有益な仕組みであり、彼らに損害を及ぼしかねないルール変更に対してフェラーリが“擁護者”としての役割を担えるものだと語った。
だがこの主張は、木曜日にモナコで開かれたFIA公式記者会見に出席した何人かのF1チーム代表からは、冷やかな目で見られている。
「正直に言うならば、本当に馬鹿げた話だと考えています。私は、過度に民主的であることがこのスポーツの問題なのだと感じています」と、ウイリアムズF1の副チーム代表であるクレア・ウイリアムズは語った。
「ひとつのチームだけが拒否権を持つべきだとは思えませんし、どう考えてもおかしな話です」
「F1とFIAがレギュレーションについてもっと主導権を握るべきだろうと思います。今は合議制に頼り過ぎていて、各チームにそれぞれ固有の計画があるという実情に鑑みれば弊害が出ています」
「F1のことや、将来にまでわたる存続の可能性、それを守ること、そしてF1の真のDNAを保つことについて、私たちは考える必要がありますし、それを委員会形式で行うことはかなり難しいのではないかと思います」
レッドブル・ホンダの代表を務めるクリスチャン・ホーナーはこれに同意し、フェラーリが保持し続けている拒否権を含む現行の制度は「かなり時代遅れだ」と述べた。
「私の理解では、この拒否権はもう何十年も前のレギュレーション変更を止めるために導入されたものだ」とホーナーは説明した。
「フェラーリはV12エンジンを持っていて、それを禁止されたくないと考えた」
「当時はイギリスの小規模コンストラクターが多数参入してきており、ルールの変更が求められていた。だがそれは60年代の話であって、それ以降、状況は明らかに変化した」
「私が間違っていなければ、これは最も歴史の長いチームのための権利だ。何もフェラーリだけを指し示すつもりはない。彼らは実際に、最も歴史あるチームだ」
「彼らがすべてのチームを代表すると言うのならば、安全を見て例えば2週間までは、彼らに委ねることもできるかもしれない。だが結局のところ、彼らはフェラーリとしてその場にいる」
「おそらく、白紙の状態で議論することを目指すなら、彼らだけというのはおかしいし、クレアが言うように、全チームに同じ権限が与えられるべきだ」
■「フェラーリの価値は、商業面に反映させるもの」とルノーF1代表
ルノーF1のマネージングディレクターであるシリル・アビテブールも、ウイリアムズやホーナーのふたりと概ね同じ意見をメディアに対して語った。
「私も(彼らの意見に)同意する。F1は、防衛的ではなく進歩主義的な姿勢であるべきだと思う。適正な手続きを妨げる力が、スポーツにとって建設的だという認識や判断があるとすれば、それは多分良くないことだろう」
「とはいえ、このスポーツにおいてフェラーリが持つ特別の価値は十分に認識している。ただしそれは商業協定に反映させて良いものであって、組織運営上で反映させるものではないはずだ」
マクラーレン・レーシングのCEOを務めるザク・ブラウンは、フェラーリの持つ拒否権がF1のすべてのチームを守ってきたというビノットの発言について聞かれると、「彼が全チームの利益を代表すると申し出てくれるのはとても素晴らしいことだと思う」と答えつつ、さらに以下のように続けた。
「しかし、私よりも前に発言があったとおり、我々はそれぞれ異なる利害関係にある」
「クレアの言うように、F1自身がこのスポーツにおける最善の利益を追求しようとすれば、結局は我々全チームにとって最善の利益になるのだと思う」
「我々は、もし適正だと思う機会が生じれば、そのときに各々が個別に交渉を行えば良い。そしてシリルが言ったように、フェラーリがF1にもたらすとてつもない価値は、別の方法で認識され得るものだと考えている」
だが、この議論に引きずり込まれたくないと考える唯一のチーム代表者が、レーシングポイントのテクニカルディレクターであるアンドリュー・グリーンだ。彼は、「F1の政治的駆け引きにはできるだけ巻き込まれないようにしている」と述べた。