前回の第2戦富士の記憶がまだまだ新しいなか、スーパーGT第3戦鈴鹿がいよいよ今週末に鈴鹿サーキットで開催される。開幕戦の岡山、そして第2戦富士とウェットコンディション絡みのレースとなってしまったが、今週末は最高気温31℃と、今季一番の暑さを伴う快晴のドライコンディションとなりそうな見込みだ。今週末に向けてのGT500クラスの展望をまとめた。
この第3戦鈴鹿のGT500見どころは、大きくふたつに分けて考えられる。まずは優勝争い。これまでの2戦のパフォーマンスとウエイトハンデ(WH)を考慮すると、17号車KEIHIN NSX-GT(WH12kg)、12号車カルソニック IMPUL GT-R(WH11kg)、そして37号車KeePer TOM'S LC500(WH8kg)が本命になりそうだ。
特に17号車はホンダNSXがこの鈴鹿がホームコースで走行データも多く、前回第2戦富士を得意とするレクサスのZENT CERUMO LC500が制したように、ホンダ陣営にとっての地の利は大きい。
昨年はARTA NSX-GTとRAYBRIG NSX-GTがワンツーフィニッシュしたように、今年も得意なのは間違いないが、そのARTAとRAYBRIGは現在ランキング3位、4位とウエイトハンデが重めだ。そこで、KEIHINにアドバンテージがある。
しかし、そのNSX陣営にも不安要素がないわけではない。実は前回の富士でも何台かのマシンにタイヤのピックアップ(タイヤかすが取れずに付着した状態になり、グリップを著しく失う状況)が起きてしまっていたのだ。
ARTAの伊沢拓也が振り返る。
「前回の富士はセーフティカー中に僕がスピンしてしまってペナルティを受けたのが大きかったですけど、自分のスティントの時にはピックアップが起きてしまって、まったくペースを上げられませんでした。去年はオートポリス以外でピックアップはしなかったんですけど、前回の富士で起きてしまった」と伊沢。
同じく、ブリヂストンを装着するカルソニックもピックアップの問題に悩まされていた。カルソニックの佐々木大樹が話す。
■鈴鹿でも富士のようなピックアップが起きる可能性も。スーパーGT500クラスの悩めるタイヤウォーズ
「富士は37号車と1コーナーで接触してしまって、右側のエアロがほとんど壊れてしまってなくなって、それが影響してドライになってもコンディションとうまくかみ合わせることができませんでした。接触によってエアロが壊れてダウンフォースが減ってしまっているのも影響していると思いますが、ピックアップがひどい状況でした」と佐々木。
ミシュランを装着するMOTUL AUTECH GT-Rも富士では2位となりながら、ロニー・クインタレッリが同じくタイヤのピックアップの問題でZENTとの優勝争いから脱落している。富士が低い気温のレースで持ち込みのタイヤが稼働温度域を外すとピックアップは起こりやすくなると言われているが、ドライバーの運転の仕方にも左右されるようで、原因は分かっていない。
今週末の鈴鹿では気温が予想外に高くなっており、タイヤの問題が懸念されるが、そこは各陣営で見方が異なるようだ。まずはカルソニックの佐々木大樹。
「鈴鹿はダウンフォースが強いサーキットですし、あとは今回、気温が高いというのがあるので、ピックアップはしづらい状況だと思います。一発の速さはあると思っていますが、これだけ暑いのでロングランは普通にタイヤのタレの勝負になると思います」
一方、ARTAの伊沢はピックアップの不安を隠さない。
「気温が高いですが、2年前の鈴鹿1000kmの時にも僕はピックアップが起きて普通に走れなくなってしまったので、僕にとってはそうならないのが一番大事ですね」と伊沢。
どうやら富士でピックアップの問題が起きなかったのはレクサス陣営だけのようだが、果たしてこの鈴鹿ではどうなるか。37号車KeePer TOM'S LC500は昨年の鈴鹿でも3位になっており、ウエイトハンデわずか5kgのau TOM’S LC500とともに、レクサス陣営のなかでの今回の優勝候補に挙げられる。
その優勝争いとともに、もうひとつ注目したいのがラインキング上位組のポイント争いだ。近い将来のチャンピオン争いにもつながるだけに、23号車MOTUL GT-R(WH49kg)、38号車ZENT(43kg)、8号車ARTA(24kg)、1号車RAYBRIG(22kg)のレース中の順位関係がどうなるのか楽しみだ。ZENTの立川も当然、今回のターゲットに23号車MOTUL GT-Rを挙げる。
■GT500クラスのランキング上位陣の戦いと、レクサス陣営が狙う中盤戦の戦い方
「今回は重くて大変ですよね。苦しい戦いにはなると思うんですけど、1ポイントでも多く持って帰りたい。1、8号車もそうですけど、特にランキングトップの23号車よりは、できれば前でゴールしたいですね」と立川。
ZENTは前回、2年ぶりの優勝を飾ったが、良くも悪くもチーム状態は変わらないという。
「チームの雰囲気は特に開幕の時と変わっていないですね。いい意味で言えば変に浮かれていない。今年、チームの体制が新しくなって勝ったのは良かったですし、僕も嬉しかったですけど、まだまだチャンピオンシップを考えたらスタートラインに来たところですから」と、勝って兜の緒を締める立川。
「ここからが大事なところで、ここから2戦くらいはまだウエイトハンデが軽いクルマが多いので、重いクルマは苦しい戦いが続きそうですが、そこでどれだけ頑張れるかだと思います。この2戦を頑張れば、その次にまたレクサス陣営が得意の(第5戦)富士が来る。この2戦、なんとかうまくポイントを獲って、また富士で頑張るという流れが理想ですね」と、現実的なシリーズ戦略を見据える。
ウエイトハンデが軽めのチームが優位なのは間違いないが、速いだけでは勝てないのがスーパーGTの難しいところ。この2戦、予選で上位に入り、何度も優勝のチャンスがありながら決勝で低迷してしまったカルソニックの佐々木は、特にこの鈴鹿に懸ける意気込みが強い。
「今年、ここまで悔しい思いもありますし、ちゃんとレースをしたい。今年は予選2番手、3番手と上位にしっかりといるので、決勝では予選の順位を獲れるようにしたいですね」
「富士は正直、自信があまりなかったのですが、鈴鹿に関しては本当にクルマのバランスが良くて、今年2回、鈴鹿でテストをしましたが、2回とも順調でこの鈴鹿は一番自信があるサーキットですので、ここでは必ず獲りたいなという気持ちがあります。今週末は純粋に速さを競えるレースになりそうなので、やっと自分たちの立ち位置が見えるかなと思っています」と佐々木。
優勝争い、そしてランキング争いと、これまで雨がらみで分かりづらかった各メーカー、各チームのパフォーマンスが、ようやく今週末、明らかになりそうな気配だ。[/caption]