WRC世界ラリー選手権で2018年までシトロエン・ワークスに所属し、今季は各国選手権でR5カーを走らせているアイルランド出身のクレイグ・ブリーンが、ベルギーが誇る伝統のイベント、イプルー・ラリーに参戦。自身初めてフォルクスワーゲン・ポロGTI R5のステアリングを握ることが明らかになった。
2019年シーズンは、地元アイルランドのターマック・ラリー選手権に参戦し、フォード・フィエスタR5でここまでの4戦すべてを制覇してポイントスタンディングのトップに君臨するブリーン。さらに、並行してチャレンジするイタリア・ラリー選手権ではシュコダ・ファビアR5を操り、先日のラリー・サンレモでは地元のスタードライバーを抑えて勝利を飾るなど、さながら“R5マイスター”と呼ぶべき活躍を演じている。
加えて、欧州域内を中心に争われるラリークロス選手権にもフル参戦を決めるなど、精力的な活動を続けている29歳のブリーンだが、あくまでもその目標はWRC復帰にあると強調する。
そのブリーンが参戦を決めたイプルーは、ベルギーが誇る高速ターマック・イベントとして名を馳せ、かつてはERCヨーロッパ・ラリー選手権の1戦にも組み込まれて55年もの歴史を誇る名物ラリーとして知られてきた。
2019年は6月28~29日にBRCイギリス・ラリー選手権に組み込まれての開催となる同ラリーに向け、かつてWRCではルノー・クリオMaxiなどで活躍を演じ、イプルーで幾度もの優勝経験を持つベルナルド・ミュンスター率いるBMAオートスポーツからエントリー。
本格デリバリー初年度ですでにWRC2でも成功作として実績を残しているフォルクスワーゲン・ポロGTI R5で、全23ステージ、280kmに挑むことになった。
■イプルー・ラリーにはヒュンダイのエース、ティエリー・ヌービルも参戦
「まずはこのチャンスをくれた支援者のみんなに心からの感謝を捧げたい。イプルーで勝てると信じているし、もちろんそのつもりでラリーに臨むよ」と、意気込みを語ったブリーン。
「もちろん、僕の最終的な目標はできる限り早くWRCに戻ることだ。そのために意識的にこうしたビッグイベントへの挑戦を続けているわけだし、それが参戦の動機なんだ」
「僕らはいつだってイプルーに魅了されている。今季BRCに組み込まれたこのラリーはもっとも美しいイベントであるだけでなく、ヨーロッパでもっともタフなターマック・イベントのひとつでもある」
過去にもイプルー参戦経験のあるブリーンは、2013年にプジョー207 S2000でポディウムを獲得。しかし、その後の2年間はメカニカルトラブルでリタイアを喫している。
「でも今年は多くのR5カーを経験し、そのいずれでも好成績を残すことができている。イタリアでシュコダに乗った後、すぐに地元のアイルランドに戻ってフォード・フィエスタをドライブした。そしてイプルーに向かい、ポロR5のシートに座る」
「まだこの新型モデルをドライブしたことはないけれど、それがトップマシンであることを確信しているよ」
自信をみせるブリーンに対し、2019年大会はタフなコンペティションになることが予想され、同大会11勝を誇るベルギーのレジェンド・ドライバー、フレディ・ロイクスが2016年の引退表明以来、2年ぶりの復帰参戦を決意。
さらに母国の現役WRCスター、ティエリー・ヌービルも3年連続でのエントリーがアナウンスされており、これまでのヒュンダイi20 R5から今回は現行スペックWRカーのヒュンダイi20クーペWRCにスイッチしての出場となる。
ただし、ヌービルはブリーンやロイクスとは直接の競合とはならず、同じステージを使用する別イベント、イプルー・ラリー・マスターズにエントリーし、WRC黄金時代を支えたGr.AマシンやF2キットカーなど、総勢15台の新旧ラリーカーとの勝負に挑むことになっている。