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豪州SC:さらなるコスト削減に向け、過給機付きV8エンジンの導入を検討か

2019年05月24日 13:01  AUTOSPORT web

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現状の5リッターV8OHVはチューニングの限界点を迎えており、今後はコスト高騰を招くエリアに突入する
VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーのシリーズCEOを務めるショーン・シーマーは、オセアニアのみならず世界的人気を博すこのツーリングカー選手権のさらなるコスト削減を模索すべく、チャンピオンシップの“魂”ともいうべきV8のエンジン形態は維持したまま、過給機を導入するプランを検討していることを明かした。

 このオーストラリアを代表するVASCでも自動車産業の動向には抗えず、近年はV6や直列4気筒のダウンサイジング直噴ターボを解禁したGen2規定の採用や、将来的なハイブリッド技術の導入も模索する流れとなっていた。

 そんななか、スーパーカーのシーマーCEOはデビッド・レイノルズやマイケル・カルーソらVASC参戦ドライバーがMCを務めるポッドキャストに出演し、現行OHVのV8自然吸気エンジンに、ターボやスーパーチャージャーをはじめとした過給機をアドオンするプランを議題にあげ評価している、と語った。

「エンジンこそがチケット販売に直結する重要なキーアイテムなんだ。ファンのためのショーにマイナスの影響を与えない範囲で、コスト削減に繋がる方策にはすべてトライしたいと思っている」と、展望を語ったシーマーCEO。

「もちろんその上でレースの進化も実現しなくてはならない。その点に関してはすでに取り組みが進んでいて、(今季から導入した)リニア・スプリングなどはスーパーカーの技術的到達点を示すその完璧な事例だと言える」

 現在シリーズに参戦するフォード、ホールデン、ニッサンのV8エンジンは約7万6000ユーロ(約940万円)と、レーシングエンジンとしては非常に安価な製造原価を維持しているという。

「オーバーヘッドカムを採用するニッサンを除いて、各エンジンビルダーやチームがプッシュロッドエンジンを使用して、これまで積み重ねてきた実績は信じられないほど素晴らしいものだ。彼らのチューニングは限界点を極めており、ここからはとてつもなく高価な競争が待ち受けている。それを回避するためのひとつの方法が、過給機にあるんだ」

■シリーズは最高出力の引き下げも視野に


 2017年から米国のGMと共同でV6直噴ターボの開発を進めていたホールデンだが、現在その計画は棚上げとなり、2019年も引き続き5リッターのV8自然吸気を走らせている。

「GMとホールデンのプロトタイプカーのテストに立ち会った際、V6ターボエンジンは決してV8の代替にはならないことを悟ったんだ」と続けたシーマー。

「アメリカで何が起きているかを見ていると、今は4リッターのV8ツインターボに注目が集まり始めている。私が思うに、レクサスは彼らのGTプログラムのためにこの動向を注視していると思う」

「そしてロードカーでも、街中でAMGのサウンドを聴いてみると、彼らの4リッターV8ツインターボは非常に良い音を発している。それは興奮をもたらす音だ」

「我々はファンに対して、内臓を震わすほどの経験を提供する必要があることを理解している。それはラウド(騒々しく)であることがプラウド(誇り)なんだ」

「でもそれは決して他の方法を否定する話ではない。もし仮に、V8スーパーチャージドが4万豪州ドル(約300万円)の追加コストで実現し、年に2回のリビルドで運用できるとしたら、なぜその方法を検討しないのか……ということだ」

 そしてもうひとつの検討課題が、現在640PSに到達しているという最高出力の引き下げだ。

「これも本当にハードな数字なんだ。(ニッサンをシリーズに誘致した)トッド・ケリーやその他、新たなエンジンを導入した人物にも聞いてみるといい。その数字を達成するのが簡単なことではないのがすぐにわかるだろう」

「もしそれらの数字を少し引き下げた場合、我々はほかに何ができて、何を失うことになるだろう? マシンが遅くなりすぎることはないし、今の迫力となんら変わらないレースが見られるはずさ。これらの議論は現在も進行中だよ」