いまやネット広告の主戦場となっているインスタグラムなどのSNS。フォロワー数が多いほど影響力が大きいとされ、仕事の依頼や報酬、就職で差が出ることさえある。
インスタグラムの利用規約では、アカウントの売買は禁止されているが、水面下ではフォロワーの売買が横行している。5月22日放送の「クローズアップ現代+」(NHK総合)では、フォロワー売買の実態に迫った。調査はブラジルまで及び、ネット上で「さすが(NHK)」と話題になっている。(文:okei)
日本人の、何も投稿していないアカウントを世界中の人々がフォロー
1万5000人のフォロワーがいる30代の主婦は、フォロワー数を「1万の大台に乗せるために1回使いました」と明かす。主に化粧品について投稿し、化粧品会社から月10万~20万円の報酬を得るという。「お小遣いの足しにする。いまはフォロワーを買うのが普通」と悪びれず語る。
ある読者モデルは、
「フォロワー1万人を6000円ぐらいで買いました」
「3か月ごとに買ってます。有名な先輩たちもやっているので」
と証言した。水増し分は徐々に減るため、追加購入する必要があるのだ。
フォロワーを販売する業者は、「注文数は1日100以上あり、高くて1人当たり6.5円ですね」「(フォロワー)1億は行ける。今の時代で言うと数があれば正義」などと説明。
「自分達は法律を害してないわけだし、使うか使わないかは利用者の判断。需要があってうちはやっています」
と答え、罪悪感はないという。
フォロワーは1万人につき約1万円で販売されており、番組では、検証のため3つのインスタアカウントを作成。それぞれ別の業者から、全部で3万人のフォロワーを買った。フォロワーを調査すると、1つは95%がブラジルの乗っ取りアカウントで、1つは中東が多いbot。もう1つは世界150か国からだった。日本人の、何も投稿していないアカウントを世界中の人々がフォローしていたのだ。
NHKは、勝手にフォローに利用されたアカウントの主をブラジルまで追った。連絡が取れたのは16歳の女子学生と34歳の理容師男性だ。2人とも、フォローした覚えのない100人近くの日本人アカウントが見つかり憤っていた。
驚きの利用規約 「あなたのアカウントで他人をフォローする場合があります」
さらに恐ろしいことに、購入したフォロワーには150人の日本人も含まれ「勝手にフォロー」に利用されていた。連絡先が分かった50人すべてに取材すると、海外の無料ソフトの存在が浮上。インスタをパソコンから投稿できるようにするソフトだが、英語の利用規約に、
「あなたのアカウントで他人をフォローする場合があります」
とある。フォローが勝手に増えていった人のほぼ全員がこのソフトを利用しており、地方自治体も4つあった。これらの自治体は、アカウント削除やパスワードを変更するなどして対応したという。
作家の石井光太さんは、ISなどテロ集団や反社会的な組織に、知らないうちに「いいね」してしまう危険性を指摘していた。心当たりのある人は、今すぐ何らかの対策をとったほうがいいだろう。
水増しの場合フォロワーが1日で急激に増加するため、無料のサイトですぐに見破れる。ばれたときの恥ずかしさやリスクは大きいし、情報を信頼しているSNS利用者や、宣伝効果のないものにお金を払っている広告主の企業は、大きな損害を被っている。
ツイッターでは、「フォロワー水増しなんてあるんだ」「闇が深い」といった驚きや、実際にツイッターで増やしてみて「簡単に増えたよ」とする人も続出。投稿がバズってもいない無名アカウントにフォロワー10万などがあると指摘し、「フォロワー数はアテにならない」といった声も出ていた。
もちろん多くのインフルエンサーは自分の投稿でフォロワーを増やしているが、水増しすることで、却って個人の信用もSNSへの信頼も落としかねないと、肝に銘じるべきだろう。