ベルギーのゾルダーで、5月17~18日にDTMドイツ・ツーリングカー選手権のサポートとして開催された女性フォーミュラのWシリーズ第2戦。二度に渡るオーディションを日本人として唯一勝ち進み、Wシリーズに参戦する小山美姫は2戦目を8位でフィニッシュしたが、ゾルダーでレース後話を聞いた。
──悔し涙を流したホッケンハイムでの開幕戦から、第2戦のゾルダーまで気持ちを切り替えられましたか?
小山美姫(以下小山):ゾルダーの前の週には、タイでF3アジアを戦いました。結果としては残念でしたが、自分のなかではいいレースだったと思います。レース1では下位グループを走っていたのが、レース2ではトップと1秒差以内で戦えるようになったのは良かったと思いますし、自信にも繋がりました。
──ゾルダーでは前回とエンジニアが変わっていますね。
小山:Wシリーズでは、公平にするためにエンジニアもクルマも毎回変更されるんです。クルマとエンジニア、メカニックはワンセットになっていて、どのセットと組むのかは、今回のゾルダーではクジ引きで決まりました。ホッケンハイムは初戦ということで、すでに決められていたエンジニアとマシンに乗るしかありませんでした。前回クラッシュしたドライバーは、そのマシンを次戦でも継続してドライブすることになっています。
──ゾルダーでは予選13番手と思うようなポジションには届きませんでした。
小山:いちばんは言葉の壁が大きいです。私の今の語学力では、深く込み入った話をすることができません。Wシリーズではセットアップを変更できる部分は非常に少ないのですが、小さいからこそ、微妙なニュアンスを表現できる英語力が必要とされるけれど、私にはまだそこまで自分の意思を明確に英語では表現できません。英語力やセットアップのミスをカバーできる自身の実力があればよいのですが、どこも初めて走るサーキットで、自分の引き出しのなさを痛感しています。
──予選での具体的な問題点は?
小山:自分だけがまた他のドライバーと違う方向へセットアップが向いていました。Wシリーズでは、フリープラクティス1はオフィシャルが用意している共通の基本セットアップで走り、2本目からは少しの範囲ですがドライバー自身の意志でセットアップを変更することができます。1本目は探りを入れながら7~8番手あたりを走っていました。他のドライバーの大半はそのままオフィシャルのセットアップで走り、予選をアタックしましたが、私は自分のセットアップに変更しました。トラフィックの状況はエンジニアからは分かるので、「何周目にアタックしようと思うけど、タイミングはどう?」と、連絡が取りながら行うのが通常ですが、無線の状況も悪く、また私の英語の発音双方の理解が足らず、混乱してしまうので、自分の言葉を発するのをためらってしまいました。私が走りはじめた頃はドライだったのですが、アタックしようと思ったころには雨が降り出し……。自分の強みとしていた部分が活かされず、想像して挑んだイメージの違いが出た、というのが正直な感想です。
──レースでは序盤好調でしたが、中盤から上位とのギャップ差が広がっていきました。
小山:ゾルダーはエスケープゾーンが少なく、非常にオーバーテイクが難しいサーキットです。序盤からセーフティカー導入までは順調にタイムを上げ、前との差を少し縮めていましたが、SC解除後にどんどんペースが落ちてきました。特に決勝はニュータイヤかユーズドか、選択が分かれますが、私がチョイスしたのはユーズドでした。すでに“皮むき”が終わっていたので、私にはユーズドでスタートするしか選択肢がなかったのですが、これが凶と出てしまいました。自分の強みとなるはずのレース序盤のプッシュが、SCの導入で狂ってしまった部分もあります。
──Wシリーズの2戦を終えて、自己分析をしてみると?
小山:今回は学んだことが多く収穫も大きかったと思います。ホッケンハイムに続き2回同じミスをしていました。自分のセットアップにするとタイムが伸びないので、次回はWシリーズが用意したセットアップで試してみようと思います。今回に向けて、英語でいくつか文章を作ってきて、言いたいことを準備してきたのですが、それがさらに必要だと気づきました。私が誰よりもうまいと自負できるのは、スタートが得意なのとオーバーテイク。しかしそれに頼っていると、ゾルダーのようなコースでは痛い目にあうことが分かりました。予選で13位だった時も、ここのコースではこのポジションから上位を目指すのは難しいと感じていました。
──次戦ミサノに向けてはいかがですか?
小山:予選のセットアップはオフィシャルの用意するもので挑んで、トップ3を狙います。フォーミュラのレースはいかに予選が大切なのかを痛感しています。例えばアジアF3ならレースウィークに3戦あり、挽回も可能なのですが、Wシリーズは予選1回、レース1戦なので、一発勝負でもあります。欧州出身のドライバーはすでに走ったことがあるサーキットが多いので、私の経験不足では仕方がないことなのかもしれません。多くの方に『君はチャンピオンを獲れる素質があり、2年目にはチャンピオンになれる』と言ってもらっているのですが、2年目にチャンピオンを狙っているわけではないし、続けてWシリーズに参戦できる保証もありませんので、あくまでも狙うのは今季のチャンピオンです。
Wシリーズ全6戦のうち、2戦を終えての小山は10ポイントを獲得している。ポイントランキングではトップのジェイミー・チャドウィックと33ポイント差で現在ランキングは8位だ。第3戦はイタリアのミサノで6月6~8日に開催される。