スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアのモータースポーツコラム。今回はF1、FIA F2の“ルーキー”たちについて、その実力は高い評判に見合っているか、前後編に分けて考察していく。
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F1のパドックはまるで独自の生態系のようだ。長年にわたって生態系を構成するものが現れ、育ち、消えていくので、物事は同じ状態で長くは続かない。そのために、注目に値するドライバーが何人か毎年登場するのだろう。
彼らのうちの一部は長く成功したキャリアを築き、一方でその他の者はほんの短い期間しかF1にいられない。毎シーズン、ひとつの疑問がひっきりなしに繰り返される。
「彼は本当に優れたドライバーなのか?」そういうわけで2019年に我々は、スポットライトを浴びているある特定のドライバーたちについて考え、同じことを再度自問自答する必要がある。
F1における“ルーキー”のコンセプトは少々事実が歪められている。結局のところ、以前にF1レース経験がなかったのは、今年はランド・ノリス(マクラーレン)、アレクサンダー・アルボン(トロロッソ・ホンダ)、ジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)のみだ。
一方では2017年に2戦に出場したことのあるアントニオ・ジョビナッツィ(アルファロメオ)と、8年ぶりにF1復帰したロバート・クビサがいる。
そしてもちろん、頭角を現した2018年のルーキーもいる。フェラーリに移籍したシャルル・ルクレールと、レッドブルに昇格したピエール・ガスリーだ。
2019年から参戦したルーキーのなかで、明らかにより多くのポイントを獲得しているのはノリスで、第5戦スペインGP終了時点でチームメイトのカルロス・サインツJr.を上回っている。だが彼らのなかでほぼ間違いなく傑出しているのは、強い印象を残しているアレクサンダー・アルボンだろう。
タイ人とイギリス人のハーフのアルボン(彼の両親が難しい時期にあった時、あるスペイン人家族の世話になったこともある)は、これまでF1マシンの走行経験がなかったにもかかわらず、素晴らしいパフォーマンスを発揮している。
2018年のFIA-F2において、彼はすでにラッセルやノリスに対して高い競争力を見せていたし、2016年のGP3時代には最後のレースまで当時のチームメイトだったルクレールとタイトルを争っていた。
■F1第2戦バーレーンGPでは優勝する目前だったシャルル・ルクレール
ルクレールは元チームメイトであるアルボンについて、これまでで最も手ごわいライバルのひとりであると常に語っている。だが、“新人”として今年のすべての注目をさらったのは、当然ながらルクレールだ。
もちろん彼は今年からF1に参戦したのではないが、彼が今ではフェラーリでレースをしているという事実が、衆目を集めているのだ。
最初のうち、ルクレールが素晴らしい仕事をするだろうことに疑問を持つ者はいなかった。開幕戦オーストラリアGPの後半では、ルクレールはセバスチャン・ベッテルより速く、チームオーダーがなければ彼より上の順位でフィニッシュしていたかもしれなかったし、第2戦バーレーンGPではメカニカルトラブルが起きるまでは優勝する勢いだった。
第3戦中国GPでは、ルクレールはベッテルを先行させるように指示を受けた。その後の彼は、第4戦アゼルバイジャンGPと第5戦スペインGPの予選でミスが続く。(中国GPでのQ3の結果もそれほど良いものではなかった)一方その2戦でベッテルはほとんどの場合、ルクレールよりも高い競争力を発揮していた。
ルクレールは間違いなく、彼に向けられたすべての高評価にふさわしいドライバーだろう。だがF1で1度表彰台フィニッシュを飾った彼は、跳ね馬を率いる準備がまだできていないことは明白だ。
彼は今年学んでいかなければならないし、初勝利を飾れるようなパフォーマンスをSF90が発揮するタイミングを活用しなければならないだろう。そしてフェラーリの先頭に立つようになるのだ。だがそれはすべて彼のマシンの進歩次第だろう。
後編に続く