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Netflix「E3」での発表はゲーム業界を変えるか? “ストリーミング”化する市場との相性を読む

2019年05月23日 07:31  リアルサウンド

リアルサウンド

 アメリカの映像ストリーミング配信大手Netflixが、6月11日から13日に米国ロサンゼルスで開催されるビデオゲーム関連イベント「E3(Electronic Entertainment Expo)」に参加し、ゲームに関する多くの発表を行うことが分かった。


(参考:Netflix、「E3」参加決定で「テレビショーに命を吹き込む」事業が本格化?


■ゲーム業界参入を予告
 E3コロシアムのホストであるジェフ・ケイリーが5月13日、Twitterで「特別e3コロシアムパネルとしてNetflixを迎えます。ゲーム界での計画についてのニュースがあります」と明かした。投稿されたE3コロシアム2019のバナーには「お気に入りのショーに息吹を:Netflixのオリジナルからビデオゲームを開発」と書かれている。これに基づき、米国メディアGameSpotは、「Netflixオリジナルの映画に基づくゲームをつくることについて語るだろう」と報じている。


 Netflixは昨年、インタラクティブ映画「Minecraft: Story Mode」と「Black Mirror: Bandersnatch」をリリースした。一体どのオリジナル映画をゲーム化するのだろうか。


 現在、シーズン3の配信が発表されている人気SFドラマ『ストレンジャー・シングス』のゲームが開発中といわれており、NetflixはTwitterで「もちろんストレンジャー・シングスのゲームについてもですが、まだまだ沢山あります!」と、発表の一部については、『ストレンジャー・シングス』に関連することを認めつつも、更なる発表があると含みを持たせている。


■「異業種のゲーム参入」は、日本で例えるなら……?
 Netflixが携わる事業の主軸である映像配信とゲームは、全く異なる業界であり、もしゲーム産業に本格参入することになれば、これは大きなニュースだ。


 別業界からのゲーム参入は、日本ではmixiの例がよく知られる。同社が運営するSNSのmixiが、海外勢に押されて窮地に立たされると、ゲーム開発に参入し、2013年にローンチしたスマホ向けゲーム『モンスターストライク』が大当たりし、業績を一気に立て直した経緯がある。


 Netflixもmixiもテクノロジーの知見があるということでは共通しているが、参入時点での経営環境は大きく異なる。ゲーム参入時のミクシィは、SNS事業の不振から、事業の方向転換を強いられたが、Netflixは、2019年第1・四半期の売上高見通しが市場予想を下回り、株価の下落がみられたものの、2018年第4・四半期には、有料契約者数の伸び過去最高を記録しており、業績は決して悪くはない。では、なぜNetflixはゲームに向かっているのか。


■Netflixがゲームに参入する真意とは?
 技術の進歩と共にストリーミングに軸足を移してきたが元々、創業時はオンラインDVDレンタルだった。ゲームとは似ても似つかない。


 一方で、ゲームの楽しみ方も近年大きな広がりを見せている。その一つがゲームのストリーミングだ。ゲームは、プレイヤーだけが楽しむモノではなく、それを配信して、多くの人々が視聴するようにもなってきている。これはゲーム界の最新のトレンドの一つと言っていい。


 ゲームのストリーミング、そして映像のストリーミング。ここに元来、無関係だったNetflixとゲームの接点が見いだせるのではないだろうか。ゲームストリーミングは、現在活況を見せており、テクノロジー大手FAANG(Facebook、Apple、Amazon、Netflix、Google)の一角であるGoogleがStadiaを投入し、、ソニーとマイクロソフトが同分野での提携を発表した。これは、ゲームデベロッパーがクラウドで全世界のデータセンターを介してゲームをプレイヤーに配信できるものだ。他にも多くのゲーム関連のストリーミングサービスが乱立しており、春秋戦国の世といった様相だ。


 Netflixは、このトレンドに乗り遅れまいと、今回のタイミングでゲーム業界に新規参入し、そこで存在感を増すことで、ゲームストリーミングに関連する事業領域を拡大させようという意図があるのではないだろうか。


 テクノロジーメディアEngadgetは以前、「ゲームのNetflixになるのはどこか。ストリーミングは、映画やTVを変えたように、ビデオゲーム業界を一変させる」と論じている。


 正式発表を前にして、多くの憶測が飛び交っているが、Netflix の野心的な戦略の全貌が「E3 2019」で明らかになるに違いない。


(Nagata Tombo)