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乳児遺棄の実習生に執行猶予判決 「加害者は技能実習制度、日本社会ではないか」

2019年05月22日 18:21  弁護士ドットコム

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川崎市で今年1月、生まれたばかりの男児を民家敷地に放置したとして、保護責任者遺棄罪に問われた外国人技能実習生の中国人女性(22)に対し、横浜地裁川崎支部(江見健一裁判長)は5月22日、懲役1年6月、執行猶予4年の判決を言い渡した。


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男児は現在、児童相談所で保護されている。支援者らによると、技能実習を継続しながら子育てをするのか、帰国するのかは今後検討するという。女性の在留資格は今年8月まで。管理団体や受け入れ先企業との交渉を進めているという。



●来日費用、親が支払い気兼ね

判決などによると、女性は妊娠5カ月だった2018年8月に来日。送り出し機関からは「妊娠禁止」を伝えられていたが、親が実習生としての費用(約4万元=約64万円)を払っていたことに気兼ねし、黙っていたという。



2019年1月29日に、寮で男児を出産。そのまま毛布にくるみ、大きめのビニール袋に入れて、川崎市内の民家の玄関付近に置いた。



本人は発見されやすい場所を選んだそうだが、通行人が発見するまで30分ほどを要したことなどから、男児は低体温症等で入院。裁判所は安全確保が十分だったとは言えないなどと判断した。



裁判所は女性の行動について、病院にも行かず実習を優先したと指摘し、場当たり的だと述べた。一方で、女性が事実を認めていることや、今後子どもと一緒に暮らす準備をしていることから、執行猶予がついた。





●「支援は終わっていない」

判決後、女性を支援する各団体が共同で記者会見を開いた。外国人技能実習生権利ネットワーク運営委員の旗手明さんは、判決は出たものの「(支援は)まったく終わりではない」と述べた。



というのも、女性と男児が一緒に暮らすには、2人の親子関係を確認しなくてはならないからだ。現在、横浜家裁に調停を申し立てているという。



親子関係が認められても、ハードルはまだある。男児は現在、児童相談所で保護されている。果たして女性の元に戻せるのか。引き渡されたとしても男児が中国国籍を取れるのか、今後の生活をどうしていくのか、という問題もある。



●妊娠・出産を理由とした不利益取扱いは違法

妊娠した技能実習生が、強制帰国や中絶を迫られることは珍しくない。2011年には富山県の中国人実習生が強制帰国させられかけ、拘束の結果、流産した。民事裁判で管理団体の責任が認められている。



最近では2018年12月、愛媛県の製紙工場で働く予定だったベトナム人実習生が、妊娠2カ月であることが分かり、事前研修を担当する講習センターから中絶か強制帰国を迫られたことが報道されている(朝日新聞、2018年12月2日朝刊)。



こうした状況から、法務省などは3月11日、受け入れ機関や管理団体に対し、技能実習生にも労働関係法令が適用されると文書で注意喚起している。妊娠・出産を理由とした解雇など、不利益取扱いは許されないという内容だ。



一方で今年4月17日には、福岡県で働く技能実習生のベトナム人女性が死産した男児をそのままにし、死体遺棄の疑いで逮捕されている。当事者である実習生にどこまで伝わっているかは不透明だ。





今回、実習生の中国人女性は、男児に対する「加害者」という立場で裁判を受けた。しかし、移住労働者と連携する全国ネットワーク(移住連)代表理事の鳥井一平さんは「加害者は技能実習制度、私たちの社会なのではないか」と述べる。



「技能実習生が妊娠して、産休、育休、子育てをする権利。あるいは安全に中絶する権利がちゃんと担保されているのか。受け入れ先や実習生に周知されているのかを改めて訴えたい」(鳥井さん)



(弁護士ドットコムニュース)