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ユーロフォーミュラ・オープン:伝統のポー戦で万璃音、角田が表彰台。名取はチーム判断ミスに泣く

2019年05月22日 13:01  AUTOSPORT web

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第2戦ポーのレース1で3位を獲得した佐藤万璃音(モトパーク)
2019年5月17~19日、フランス・ポーの市街地コースでユーロフォーミュラ・オープン(EFO)の第2大会が実施され、佐藤万璃音(モトパーク)が3位と6位、ホンダ育成ドライバーでレッドブル・ジュニアの角田裕毅(モトパーク)はリタイアと3位、ホンダ育成の名取鉄平(カーリン)は未出走と7位という成績だった。

 1933年の初開催から第二次世界大戦中などを除き開催され続け、今年で78回目を迎えた伝統のポーGP。同じ公道レースとして有名なF1モナコGPやF3マカオGPの市街地コースは、開催前に路面を舗装し直したり、縁石を設置するなど、レーシングカーが走行するにあたって入念な準備がなされる。

 一方、ポーGPはガードレールやタイヤバリアこそ新設されるものの路面はそのまま。赤白に塗られた縁石らしきものは単なる歩道と車道を分かつ段差で、公道レースが開催されるからといって特別な改修は加えられていない。市街地コースという意味ではモナコやマカオよりもポーのほうが純度は高く、危険性も高い。

■第1大会で優勝した万璃音。レース1で3位表彰台も憮然
 EFO開幕大会の決勝レース2で優勝し、意気揚々とポーへ乗り込んできた佐藤。金曜日は雨に見舞われて練習走行1回目は9番手に留まるも、同2回目は盛り返して3番手へ浮上した。

「短いコースで16台がいっせいに走るから、一周で最低1台は遅いクルマに行く手をふさがれる。位置取りや雨の強弱、タイヤを履き替えてプッシュするタイミングもあり、速いタイムを出したくても運に大きく左右されてしまう。せめて明日は乾いた路面で予選を戦いたい」と好天を願っていた。



 土曜日はくもり空ながら路面はドライコンディション。佐藤は予選1回目で2番手グリッドを獲得し、決勝レース1でのホールショットを狙った。しかし、スタートで3番手グリッドのチームメイト(ユリアン・ハンゼス)に先を越され3位に留まった。「(路面が)汚れている側のスターティンググリッドだったので加速が鈍った。表彰台に立ったとはいえモトパーク4台中3番目なのでまったくうれしくない」と憮然とした表情を見せた。

 日曜日もくもり空ながら路面はドライコンディション。しかし、予選2回目は事故による2回の赤旗中断に加えてセッション終盤は雨が降り始め、誰もが不完全燃焼のままタイムアップ。佐藤は3番手グリッドから決勝レース2での表彰台をふたたび目指した。

 一時は止んでいた雨も決勝レース2のスタート直前に雨が降り始めた。グリッド後方ではフォーメーションラップ終了と同時にピットレーンへ駈け込み、スリックからレインへタイヤ交換するドライバーもあった。

 佐藤はスタートでチームメイトのリアム・ローソンに抜かれて4番手へ後退、ペースが上がらずトップ3台から徐々に遅れた。エンジニアからの無線でピットへ呼び戻されてレインへタイヤへ交換。11番手まで後退するも、最後は6位でチェッカーフラッグを受けた。「タイヤ交換がスムーズに行っていたら計算上は4位。でも、最悪な状況のなかでポイントを持ち帰れたことはシーズン全体で見れば大きい」と胸をなで下ろしていた。

■角田はレース2で表彰台。「自信がついたので次戦に活かす」

 角田は金曜日の練習走行1回目で3番手、同2回目で5番手と初めての公道レースながら適応力の高さを見せた。もっとも、土曜日の予選1回目は随所で速さを見せるものの5番手。「スピードはあったので変な欲が出て、2番手に大差をつけてポールポジションを取りたいという気持ちになった。オーバーペースになってしまい、一周をまとめきれずタイムが伸びなかった」と角田はふり返る。

 迎えた決勝レース1ではスタートで順位を落とし6番手へ。さらに4周目には第4コーナーで行き場を失い、タイヤにダメージを負ってしまう。

 すかさずピットインして左側の前後輪を交換、12番手からの追い上げを図った。しかし、10番手まで挽回したところで第6コーナーのガードレールに軽く接触、フロントのアッパーアームにダメージを負ってリタイアを決断した。

 角田は「スタートはホイールスピンが多くて2コくらい順位を落とした。前のクルマとテール・トゥ・ノーズの状態で第4コーナーへ入ったらダウンフォースが抜けて、タイヤがロック気味になりアウト側の縁石に乗ってコントロールを失った。ピットストップのあともけっこういいペースで走れた。結局はオーバーペースでガードレールに接触。このまま走ってもペースは上がらないだろうし、危ないと思ったのでリタイアした」と語った。

 予選2回目は2番手グリッドを確保した角田。決勝レース2でも雨の降る難しいコンディションのなか、先頭を行くチームメイトのハンゼスを追い掛け回した。後ろから迫るチームメイトのローソンには抜かれるも、15周目にハンゼスとローソンが同士討ちでリタイア。この事故によるセーフティカー導入の機会にレインへタイヤを交換して4番手へ後退した角田だが、19周目に1台を抜いて表彰台を手にした

「読めない天気のなかで3位はベストだったと思う。2番手を走行中にリアムに抜かれたけれど、あそこでは自分もブレーキをロックさせるミスもあったし、無理に抑えたらユリアンとリアムのようにクラッシュしていたかもしれない。リスクを取らなかったのはいい判断だった。ポテンシャルはめちゃくちゃあった。予選ではミスもありそれを発揮できなかったけれど、最後は自信がついたのでホッケンハイムで活かしたい」と次を見据えていた。



■名取鉄平はポーに好感触もチームの判断ミスで後退。「もう1周あとにしてくれれば……」
 角田と同じく公道レースは初めてという名取は、練習走行1回目で6番手、同2回目は8番手ながらセッション序盤から、つねにタイミングモニター上位に自分の名前を載せていた。「初めての市街地コース、しかも雨だったけれど、自分にとっては得意なコースという感触を手にできた」と名取は笑顔を見せた。

 しかし、予選1回目は5周目という早い段階で第7コーナーに設置されたタイヤバリアの餌食になり、14番手という不本意な結果に終わった。「まだ攻めていない段階で、第6コーナーの縁石で跳ね飛ばされてタイヤバリアへ突っ込んでしまった。過去のオンボード映像を見ていて、縁石に大きく乗るドライバーが多かったので試してみたけれど……」と予想以上に大きな反応を見せたクルマを制御しきれなかったようだ。

 しかも、決勝レース1を迎えるにあたって見た目こそ修復なっていたクルマは、コースイン直前という段階になってクラッチトラブルが発覚。「クルマがスムーズに発進できず、残念ながらスターティンググリッドにさえつけなかった。日曜日に向けて少しでも走っておきたかった」と名取は肩を落とした。

 予選2回目はうっぷんを晴らすかのような走りで6番グリッドを獲得。迎えた決勝レース2のダミーグリッドでは、名取とエンジニアのちょっとしたやり取りが目に入った。

「僕は人生を賭けているし、自分の判断で失敗しても悔いはない。雨は止みそうになかったから、ダミーグリッドについた時点でタイヤをスリックからレインへ換えてくれと伝えた。でも、エンジニアは聞き入れてくれなかった」と名取はのちに状況を説明した。

 決勝レース2では早めのピットストップが指示されるも、チームメイトが先にいて名取のレインへのタイヤ交換は大きなタイムロスを伴うものとなってしまった。「だったら、もう1周あとにしてくれれば……」という名取の言葉には落胆の色が濃かった。

 結局、こうしたチームの判断ミスで13番手まで後退した名取だったが、ウェット・コンディションでのペースは快調で最後は7位でチェッカーフラッグを受けた。

 EFO第3大会はドイツ・ホッケンハイムリンクで5月24~26日に実施される。