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flumpool、D’ERLANGER、パスピエ、女王蜂……変化の時期を迎えたバンドの勝負作

2019年05月22日 12:51  リアルサウンド

リアルサウンド

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 山村隆太の復帰により活動を再開したflumpool、結成10周年を迎え、音楽的に大きく変化しつつあるパスピエ、傑作アルバム『Q』をきっかけにしてさらなる快進撃を続けている女王蜂。刺激的な変化の時期を迎えたバンドの勝負作を紹介したい。


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 山村隆太(Vo)の歌唱時機能性発声障害により活動を休止していたflumpoolの約1年半ぶりのニューシングル。タイトル曲「HELP」は山村自身が療養中の葛藤や助けを求めたかった心境をストレートに綴った楽曲だという。弱音を吐けば見放されてしまうかもしれないという怖さ、“大丈夫”と強がっていた自分を見つめながら、〈心つないで 境界線超えて〉というフレーズに結実するこの曲は、彼自身のドキュメントであると同時に、“どんなときも勇気を持って救いを求めてほしい”というメッセージをまっすぐに届けることになるはず。壮大なスケール感を備えたサウンド、大らかな解放感をたたえたメロディを含め、flumpoolの新たなスタートを祝福する記念すべき楽曲だ。


 結成10周年を迎えたパスピエのニューアルバムは、『more humor』というタイトルが示す通り、独創的なポップネスを含んだ“音楽的ユーモア”がダイレクトに反映された作品となった。本作の新しさを象徴しているのが、リードトラック「ONE」。現行のオルタナR&B、ヒップホップのテイストが感じられるアレンジ、中低域を活かしたトラックメイクは、まさに新機軸と言えるだろう。全編を通し、大胡田なつきのリアルな感情が込められた歌詞も本作の聴きどころ。“ニューウェイブ、テクノなどを取り入れたバンドサウンド”“和の要素を取り入れたオリエンタルな世界観”という従来のイメージを基軸にしつつ、新たな音楽世界を切り開くことに成功した作品だと思う。


 「HALF」(TVアニメ『東京喰種:re』EDテーマ)、「火炎」(TVアニメ『どろろ』OPテーマ)などの話題曲を次々とリリースしてきた女王蜂のニューアルバム『十』は、少年性をテーマに据えた前作『Q』とシームレスにつながりながら、現在のバンドのモードをリアルに映し出した作品となった。しなやかなファンクネスを備えたサウンドとともに和の叙情性を感じさせるメロディが響く「魔笛」、少年が自分の力だけを頼りに、都会に向かう情景を描いたバラード「十」。豊かで濃密な精神性をたっぷりと含んだ本作の世界観は、女王蜂の表現が新たな次元に達していることを証明している。ハイブランドのスーツにカジュアルなアクセサリーを合わせたような、ゴージャズにして生々しいサウンドも最高。


 再結成10周年イヤーを終え、次のタームへと突入したD’ERLANGERの9thアルバム『roneve』。耽美な世界観とリアルな現実感が交差する歌詞の世界、ヘビィロック、グランジ、オルタナなどの要素を自在に取り込んだハイブリッドサウンド(ときに変則的なリズムアレンジもカッコいい)、そして、溢れんばかりの色気、狂気にも似た激しさがひとつになったボーカルなど、このバンドの独創性をさらに突き詰められている。唯一無二としか言いようがないスタイルと新たな表現の萌芽が同時に感じられる作品となった。目の前で4人がセッションしているような生々しい音像も印象的。“メンバー4人の音だけで、他にはない音楽世界を創造する”という真っ当なスタンスに貫かれたロックアルバムである。


 初のアリーナ公演(8月10日/横浜文化体育館)が決定するなど、ライブバンドとしてのスケールを拡大し続けているPENGUIN RESEARCHのニューシングル『決闘』。TVアニメ『ゾイドワイルド』(TBS系)の第4クールオープニングテーマに起用された表題曲「決闘」(作詞・作曲/堀江晶太)は、エッジの立ちまくったギターサウンド、ラウドな手触りをキープしたまま疾走するビート、激しくアップダウンを繰り返すメロディラインなど、バンド史上もっとも攻撃的なロックチューンとなった。鋭利なリズムを放ちながら、ドラマティックな旋律と〈御託より 勝ち星 あげてみろってな〉という強い言葉を突き刺す生田鷹司のボーカル、凄腕のメンバーたちによるアグレッシブなアンサンブルも素晴らしい。


■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。