2019年05月22日 10:41 弁護士ドットコム
山間部の片側一車線の道路で、前をノロノロ走る車に追いついてしまった場合の法律問題について取り上げた弁護士ドットコムニュースの記事「『前の車どいて!』田舎道をノロノロ走る車に不満…車間距離を詰めたら、あおり運転?」(https://www.bengo4.com/c_2/n_9583/)に対して、読者の皆様から様々なコメントが寄せられました。
【関連記事:「殺人以外なんでもされた」元AV女優・麻生希さん「自己責任論」めぐり激論】
この記事では、後続車が、車間を狭めすぎると、車間距離保持義務違反として違反点数が加算され、繰り返すと免許停止処分が科される可能性があることについて言及しています。
これに対して、コメント欄では、ノロノロ走る側の問題について指摘する声もありました。「30km/hを規則どおり走るのはノロノロか?というと、そんなはず無いですが、60なのに30とかは迷惑します」「田舎では、通勤時間帯にも関わらず片側1車線追い越し禁止国道を法定速度-20㌔位で走っている車(先頭を)がいます。-10㌔は結構います!」といったものだ。
山間部には高齢者が多く、あまりスピードを出せないというケースもありそうだが、後ろに車列ができるほどノロノロ走り続けても、法的な問題はないのでしょうか。(監修・濵門俊也弁護士)
結論から申し上げますと、一般道の場合、基本的に最低速度に関する規制はなく、時速何キロメートルで走ったとしても問題はありません。
まず、最低速度については、道路交通法23条に「自動車は、道路標識等によりその最低速度が指定されている道路(第75条の4に規定する高速自動車国道の本線車道を除く)においては、法令の規定により速度を減ずる場合及び危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その最低速度に達しない速度で進行してはならない」と定められています。
では、最低速度が指定されているのはどのような場合でしょうか。道路交通法75条の4では、高速自動車国道の本線で速度指定がない場合、最低速度は政令で定めることとされており,その最低速度は、時速50キロメートルとされています(道路交通法施行令27条の3)。
他方、道路標識で、最低速度を定めるケースもあります。これは、時速80キロメートル以上の最高速度規制が行われている高速自動車国道以外の道路で、必要と認められる区間で規制されます。原則として時速50キロメートルとされています(警察庁・交通規制基準より https://www.npa.go.jp/laws/notification/koutuu/kisei/kisei20181214-2.pdf )
もっとも、この基準で規制されるのは、「橋梁部、観光地、名勝史跡等を通過する自動車の低速走行により、一般交通に著しく支障を及ぼす区間に限定して行う」場合とされており、山間部の片道一車線の道路をノロノロと走る車を規制することは基本的に難しいでしょう。
このように一般道では基本的に最低速度の規制はないといえますが、別の観点からの問題もあります。道路交通法27条では、他の車両(法文の規定が少し複雑なので、今回は全て普通自動車と仮定します)に追いつかれた場合の義務が定められています。まず、後続の車両が追いついて、追い越しをしようとする場合、前の車両は速度を増してはならないというものです(道路交通法27条1項参照)。
つぎに、道路(片側1車線以下)の中央との間に十分な余裕がなく状況で、追いつかれた車両が遅い速度で引き続き進行しようとする場合、なるべく左側に寄って、進路を譲らなければならないとされています(道路交通法27条2項参照)。
ちなみに、あまりにノロノロ走っていると、後ろに車列ができているくらいですから、臨場した警察官にしてみれば不審事由があると判断し、職務質問を受けることもあり得るのではないでしょうか。その際、警察官の指示を無視してノロノロ運転を続けたりしますと、公務執行妨害等の罪に問われるおそれはあり得ます。
【取材協力弁護士】
濵門 俊也(はまかど・としや)弁護士
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えている。依頼者の「義」にお応えしたい。
事務所名:東京新生法律事務所
事務所URL:http://www.hamakado-law.jp/