今年もインディ500の予選はドラマティックだった。世界三大レースのトリプルクラウンを狙うために今年もインディ500に出場していたマクラーレンのフェルナンド・アロンソが、なんと33台のグリッドからバンプアウトされ予選落ちを喫してしまったのだ。
2度のF1世界チャンピオンが、インディ500を制すどころかスターティンググリッドにも並べないという事態に、世界中が騒然としている。
すべてはプラクティス2日目のクラッシュから、大きく流れが変わってしまった。2017年の初出場の時は、事も無げにプラクティスを毎日こなし、予選も5番手で通過していたアロンソ。
レースも一時はリードラップを取っていたのだから、今年の出場に関しても心配する声は多くはなかった。
しかし、今年のエントリーはマクラーレン・レーシングから。そこがこのトリプルクラウンプロジェクトの特徴でもあり、弱点であったかもしれない。
アロンソはプラクティスから躓いた。プラクティス初日には電気系と思われるトラブルが発生。プラクティスの半分の時間でガレージ戻り、翌プラクティス二日目はターン3のウォールにクラッシュ! マシンを台無しにしてしまった。
スペアのモノコックから再生された66号車は1日のインターバルを置いてファストフライデーに戻ってくるが、周りがスピードを上げる中、アロンソのペースはさほど上がらなかった。
土曜日の予選1日目は、アテンプト順が20番目で気温が上がったやや不利な条件でタイムアタックに出た。
最初のアタックでは右リヤタイヤにパンクチャーが見つかったが、2度目のアタックでも十分なスピードを見せることができず、アロンソとチームは予選時間の終了間際までアテンプトを続けた。
計5回のアテンプト、タイムアタックをしたものの4周のアベレージのベストは227.224mphにとどまり、上位30台の中に入れず予選2日目のラストロウシュートアウトに出なければならなかった。
「難しい予選だった。単純にスピードが足りなかった。最初のアタックで右リヤタイヤにパンクが見つかったが、残りの6台にならないようにしたかった。風も強かったし、難しくて、タイムが出せずフラストレーションのたまる予選だった……」とアロンソ。
今年の予選ルールでは、エントリー36台中上位30台に入れなかった6台で再度ラストロウのシュートアウトを行ない、31~33番の最終列のグリッドを決めるというもの。6台中上位3台のスピードを出さなければ、予選落ちとなる。
しかも、予選2日目は雨予報で予選が成立するかさえ危ぶまれる天候だった。
朝のウォームアッププラクティスに出たアロンソだったが、走行中に雨が落ち始め途中で中断。マシンの状態を確認する作業も完全にはできなかった。
アロンソはどうなるのか……。これがラストロウシュートアウトの最大の注目だった。
幸いにも雨が上がり、少し時間がずれ込んだものの路面が乾いたところで、予選が始まった。
最初のアタックに出たジェイムズ・ヒンチクリフは4周平均が227.543mphのスピードを出した。2番手のマックス・チルトンはやや失速し226.192mphにとどまる。
3番手のアタックとなったアロンソは227.343mphを出して、残りの3人のアタックを待った。
4番目にシュートアウトに登場してきたセイジ・カラムは228.501mphでトップに立ち、まずはチルトンがバンプアウトされた。5番目のパトリシオ・オワードはやや失速し227.092mphでバンプアウトが確定。アロンソが通るかどうかは、最後のカイル・カイザー次第となった。
カイザーもプラクティスでクラッシュしておりマシンを再生。また発表するスポンサーにも降りられてしまい、この週末最も厳しいチームだった。
だが若いカイザーとユンコス・レーシングが予選の最後で意地を見せ、4周のアベレージを227.372mphでまとめ、わずかにアロンソを上回って、見事に33番目のグリッドを獲得した。
これでアロンソのバンプアウトが決定し、アロンソは今年のインディ500に出場できなくなった。
潤沢な資金を準備し事前にプライベートテストも行ってインディ500にやってきたマクラーレンとアロンソだったが、インディの難しさ、怖さ、厳しさ、すべてを味わって
スピードウエイを去ることになった。
F1でチャンピオンを2回も取り、ルマン24時間を制した男でさえ乗り越えられなかったインディアナポリスの高き壁。
アロンソは「あとひとつ足りなかった。昨日は30台中31番手だったし、今日は33台中の34番手。本当にわずかな差だったがスピードが足りなかった。残念に思っている」
「来週のレースに出たかったよ。でもそれは叶わなかった。僕は帰ることになるけど、インディカーのみんなとファンにもお礼を言いたい。予選を通過したすべてのドライバーとチームにおめでとうを。安全にレースをしてほしい」
「来週はTVでレースをエンジョイするよ。インディ500に戻ってくるかどうかは、今すぐ約束できないけれど、またここに戻ってレースで勝てるなら、これ以上の喜びはないよ」と語り、ブリックヤードを後にした。