2019年05月20日 10:21 弁護士ドットコム
「殴る、蹴るがないと性的DVにはならないのですか?」。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
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相談者の女性は3、4年前から、夫との性行為が苦痛で、何度も拒否をしてきました。最初の頃は拒否すると逆ギレし、しまいには寝込みを襲ってきたり、水仕事をしていて手がふさがっているのをいいことに無理やり行為に及んできたりしたこともありました。
また、生理痛がひどいことなどから、ピルを飲み始めると、夫は「避妊せず最後まで行為をし放題である」と言い放ったそうです。女性は「気持ち悪く思いました」と打ち明けます。
夫は、殴る蹴るなどの行為をしていないことから、「性的DVにはならない」と主張します。果たしてこうした言動は性的DVにならないのでしょうか。長瀬恵利子弁護士に聞きました。
どのような行為がDVになるのでしょうか。
「DVとは、配偶者や恋人など親密な関係にある人、または、かつて親密だった人からなされる暴力を言います。
ここで言う暴力には、殴る蹴るなどの身体的暴力はもちろんですが、相手を怒鳴るなどの精神的な暴力や、性行為を強要するなどの性的な暴力も含みます。そのため『性的DV』は、DVの一種になります。殴る蹴るだけがDVではありません」
相談者は襲われたり、無理やり性行為を強要されたりしているそうです。
「性的DVの具体例としては、性行為を強要する事例の他、避妊に協力しない、裸の写真や動画を撮影する、嫌がる相手にポルノ写真や動画を見せる、などがあります。
相談者の場合、嫌がっているのに無理やり性行為をされているので、まさに性的DVの典型例です。
また、相談者は生理痛がひどいためピルを飲んでいたとのことですが、それ以外にコンドームなど他の方法での避妊を希望していたのに、協力せずに性行為がなされていたとすれば、その点も性的DVに当たります」
「離婚事由や慰謝料の原因として、相談者が経験したような性的DVを主張することもできます。その場合、性的DVを主張する側は、性行為を嫌がっていたこと、避妊を希望していたことを立証していく必要があります。
裁判は、客観的な証拠が重要ですので、性行為を拒否している旨が記載されたメール、会話の録音などがあると有効です。性的DVが原因で身体的・精神的不調を医師へ相談していた場合は、その旨が記載されたカルテ、診断書なども証拠になりえます。
それ以外にも、性行為を嫌がっていたにもかかわらず、何度も同じことが繰り返されたことを示すものとして、日々の状況が記された日記も有効な場合があります。
性行為の強要が離婚原因の間接事実として認定された裁判例も存在します。性的DVに悩まれている場合は、早めに弁護士に相談し、対策を検討されることをお勧めします」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
長瀬 恵利子(ながせ・えりこ)弁護士
東京弁護士会所属。得意分野は、離婚、遺言・相続、労働問題、その他一般民事。
事務所名:弁護士法人遠藤綜合法律事務所
事務所URL:https://www.endo-law.jp/