元F1ドライバーのデイビッド・クルサードは、フェラーリではふたりのドライバーに寄せられる期待値が異なるため、シャルル・ルクレールはチームメイトのセバスチャン・ベッテルよりも楽な立場にいると述べている。
2019年シーズンこれまでのところ、フェラーリは最大のライバルであるメルセデスの後塵を拝している。5戦連続での1-2フィニッシュを達成したメルセデスは、非の打ち所がないほどの強さを見せている。
しかしフェラーリがメルセデスをしのぐこともある。ルクレールとベッテルは、バーレーンGPではフリー走行セッションだけでなく、予選においてもグリッドでより上位につけていた。
こうしたパフォーマンスに続き、ルクレールは決勝レースでもエンジントラブルで後退するまではレースを支配していたため、最終的には若いルクレールがベッテルを凌駕し、フェラーリの事実上のリーダーになるのではないかと多くの人々が考えるようになった。
しかしながらクルサードは、それぞれのドライバーは大きく異なる考え方をしているのだと説明している。
「シャルルは、やらなければならないことをしている。彼は速くなりたいのだ。隙を見つければ、そこに飛び込んでいくだろう」とクルサードは『Auto Bild』誌に語った。
「セバスチャンには別の目標がある。それはフェラーリを勝てるマシンにすることだ。つまり、二種類のプレッシャーについて考えなければならないのだ」
「セブ(ベッテル)は勝たなければならない。その他のすべてのことは取るに足らないことだ。シャルルはもっと楽だろうね。彼はセバスチャンより速くなる必要があるだけだ。4度のF1世界チャンピオンに打ち勝つことができ、素晴らしい将来があることを証明すればいい」
「セバスチャンはキミ(・ライコネン)とはストレスのない時期を過ごしていた。けれどもフェラーリは彼を残留させなかった」
「シャルルは興奮をもたらす。それこそフェラーリが、その歴史において求めるものだ」と13回のグランプリ優勝経験を持つクルサードは語る。
「我々は皆、チームメイト同士の激しい戦いを望んでいる。(アイルトン・)セナと(アラン・)プロスト、ルイス(・ハミルトン)とニコ(・ロズベルク)のようにね。そして今はシャルルとセブだ」
「今シーズンのレッドブルに目を向けよう。マックス・フェルスタッペンは、結果を出していないピエール・ガスリーから、まったくプレッシャーを受けていない。これは良くないことだ」
現在はメルセデスが圧倒的優位にあるものの、クルサードはフェラーリが状況を好転させられると考えている。
「彼らには非常に優れた人材がそろっていて、そのための予算もある。だが問題は、メルセデスがこれほどまでに素晴らしい仕事をしていることだ」
しかし元マクラーレンのドライバーであるクルサードは、ルクレールがフェラーリで頭角を現したからといって、ベッテルが2019年シーズン末に負けを認めてF1を引退することにはならないと考えている。
「セバスチャンが若返ることがないのは確かだが、今も偉大なチャンピオンだ。彼は今でもとても速い」と48歳のクルサードは語った。
「シャルルはマックス・フェルスタッペンとともにF1の未来であると言えるかもしれないが、彼はセバスチャンより速くはない。それは事実だ」
「私が言ったように、セバスチャンにはより大きなプレッシャーがあり、彼もそのことを分かっている。セバスチャンは世界選手権でタイトルを勝ち取らなければならないが、シャルルはセバスチャンよりも速くなればいいだけだ」
「当然だがその方がずっと簡単だ。だが私は、セバスチャンがそのことに対処できると確信している」