F1モナコGP、ル・マン24時間、そしてインディ500と世界三大レースの制覇、トリプルクラウンを狙うフェルナンド・アロンソが、2017年に続き今年の第103回インディアナポリス500にも出場し注目を集めている。
一昨年の出場と大きく違うところは、2017年はアンドレッティ・オートスポートからのエントリーでホンダエンジンを使用していたが、今年はマクラーレン・レーシングとして独自のエントリーを行い、シボレーエンジンを使用している。
もちろんマクラーレンはイギリスに本拠を置くチームで、そこのテクニカルセンターでマシンの組み上げなどを行い、アメリカ側での受け入れ体制はカーリンが行っている。だがレースのオペレーションはマクラーレンそのもので、ジル・ド・フェランがディレクターを務め、ザック・ブラウンもインディに赴いている。
2017年は常勝アンドレッティ・オートスポートの1台ということもあり、予選では5番手を獲得。決勝ではマシントラブルでリタイアしたものの、ラップリーダーを取って優勝争いに加わるなど、2度のF1世界チャンピオンの実力をおおいにアピールしてアメリカのモータースポーツファンに鮮烈な印象を与えた。
2018年はトヨタで悲願のル・マン24時間の優勝を達成し、アロンソはトリプルクラウンに王手をかけて、今年インディ500に帰ってきたが、2017年ほど順調な出足ではなかった。
4月にインディアナポリス・モータースピードウェイでの合同テストでも電気系のトラブルが発生したと言われていたが、このプラクティス初日にもマシントラブルが発生し、初日は50周にとどまり、224.162mphで32番手だった。
この日トップだった昨年のインディ500チャンピオン、ウィル・パワーは229.745mphを出しており時速5マイル以上の遅れを取った。
プラクティス2日目の水曜日は、想定される最も悪い事態に陥った。
午後になってコースインしたアロンソは、ターン3の立ち上がりでウォールに激突し、その反動でイン側のウォールにも飛ばされ、さらにコースに戻ってマシンが止まった。
220mphで壁に激突したにも関わらず、アロンソに怪我はなく、メディカルセンターでチェックを受け、リリースされた。
「ターン3の進入でアクセルを戻していれば、こんな事にはならなかっただろう。フロントのグリップを失って当たってしまった。チームには本当に申し訳ないことをした」
アロンソは謙虚に自分のミスを認めたが、大破したマシンはすぐには直らない。
マシンはガレージに戻り、すぐに修理作業が始まったが、チームはモノコックの交換を決め、またマシンを作り直す事になった。
翌木曜日、プラクティス3日目にアロンソのカーナンバー66がピットレーンに姿を見せるのはいつかと待ち侘びていたが、ついにマシンとアロンソはピットに来ることはなかった。
一見マシンの作り直しは簡単なように思われているが、220mph(350km/h)を超えるマシンの組み立てには繊細な作業が要求される。ましてやモノコックの予備を使えば、2度目のクラッシュは許されない。あわよくば予選落ちの危険さえある。
万全を期したマクラーレンは、木曜日の走行をせずに、金曜のプラクティスに登場した。
アロンソは準備を早々に始め、コクピットに座りプラクティスを走り始めた。最初の確認走行を終えると連続走行を開始したが、金曜日は予選を想定した走行が主となるため、単独でのランで全体のスピードが上がる。
アロンソは徐々にスピードを上げつつ、ガレージでのセッティング変更も繰り返してタイムを上げていく。この日は77周を走行し229.328mphをマーク、全体の24番手で走行を終えた。
しかし、ノートウ(前車のスリップの影響がない走行)では、30番手だった。
マシンを作り変えてから急ピッチでプログラムを進めて229mph台までスピードを戻したのは、さすがマクラーレンとも言えるが、1日の走行時間を失ったのは大きい。
アロンソの手腕を持ってしても、解決できないことはある。こと世界三大レースでは、それを痛感しているだろう。
「ポジティブな日になった。コースに戻ることができ、異なる方向性のセットアップも試すことができた。今日はブーストが上がって、スピードも速く、レースセットアップよりも予選準備だったが、僕たちにはたくさんのニュータイヤがある。たくさんの走行を可能にしたよ。この情報は、予選に向けて少し自信になるだろうね」とアロンソ。
明日と明後日の予選で33台のグリッドが決まる。アロンソは果たして何番手のグリッドに着くのだろうか。