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NHK受信料「カーナビも徴収」 話題の判決、タクシー業界にどう影響?

2019年05月18日 09:11  弁護士ドットコム

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東京地裁は5月15日、テレビが見られるカーナビについても、NHKの受信契約を結ぶ必要があるとの判決を下した。


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裁判を起こしたのは栃木県の女性。テレビは持っていなかったが、ワンセグ機能付きカーナビについて受信契約を求められたため、契約の必要はないとして提訴した。



テレビを見るために車に乗る人はそうそういないだろう。放送法64条1項ただし書には、「放送の受信を目的としない受信設備」は契約の必要がないとしている。



しかし、裁判所は、目的としているかどうかはユーザーの主観ではなく、客観的・外形的に判断するのが相当だとして、カーナビは「放送の受信を目的としない受信設備」には該当しないと判示している。



こうした判断は、今年3月に確定したワンセグ携帯についての訴訟でも見られたものだ。



●復興庁は2018年度から予算化

今回の訴訟当事者は個人だったが、影響範囲が大きいのは官公庁や企業だろう。NHKの規約によると、家庭(世帯)ならば車が複数あっても契約はテレビを含めて1つで良い。しかし、事業所の場合は車1台ごとに受信料を払わなくてはならない。



NHKは元々カーナビからも受信料を徴収している。弁護士ドットコムニュースが過去に取材した例では、復興庁が2017年度までカーナビの受信料を払っていなかった。今現在も支払いのない公的機関や自治体が存在する可能性がある。



2017年12月の最高裁大法廷判決は、受信料について(1)受信設備を設置した月から発生し、(2)消滅時効の始まりは契約が成立したときだとしている。つまり、理論上はワンセグ放送が始まった2006年以降の受信料を請求されうる。



また、タクシーのようにたくさんの車を保有する企業では、ホテルの全室に受信料を請求しているホテル訴訟のような影響が出る可能性もある。



タクシー会社で、テレビ付きカーナビはどのくらい使われているのか。8000台超のタクシーを所有する国内最大手の第一交通産業グループ(北九州市)は、「機能を絞り込んだ業務用のカーナビを選んでいるので、テレビ機能はついていない」と回答する。このほか、複数の大手タクシー会社に聞いたが、同様の反応が多かった。



だが、都内のあるタクシー会社は判決を知らなかったとした上で、「保有するハイヤーには、テレビ機能がついたものもある。納入時からカーナビがついているので」と回答。設置台数や支払い状況についての明言は避けた。



トヨタ自動車によると、車種によっては工場出荷時からカーナビが設置された車も存在するという。ただし、一例としてタクシー専用車種のJPN TAXI(ジャパンタクシー)では、カーナビの有無やどの機種をつけるかは選べるそうだ。



●ほぼ半額の事業所割引は受けられる

なお、事業所では「設置場所ごと」に受信料を払う必要があるが、すべての受信契約を結ぶと、受信料がほぼ半額(正確には2契約目以降が半額)になる「事業所割引」を受けられる。NHKによると、タクシー会社などでもこの仕組みは利用できるという。



この事業所割引が始まったのは2009年のことで、ホテルなどに対する救済策という面があった。



NHKは2004年に相次いで発覚した不祥事の影響で、受信料の支払い拒否や保留の総数が最大128万件(2005年11月末)に。一方、国会や会計検査院などが支払率の向上を求めたため、ホテルなどからの徴収を強化せざるを得なくなったという経緯がある。



受信料は放送法で定められている。国からも徴収率アップを求められている以上、NHKとしても徴収に力を入れなくてはならない事情がある。



(弁護士ドットコムニュース)