セーフティカー4度の導入と、荒れに荒れた今年のスーパーフォーミュラの開幕戦。その第1戦の鈴鹿サーキットで、悔しい思いで走行を眺めていたのがREAL RACINGの塚越広大だ。チームのアドバイザーとして同行していた塚越だったが、この2戦目からは急きょ、トリスタン・シャルパンティエに変わってスーパーフォーミュラに参戦することになったのだ。その塚越に聞いた。
「本当に今シーズン、スーパーフォーミュラに参戦したい思いがありましたけど、それが叶わなくて、じゃあ翌年にSFに復帰するにはどうしたらいいかと考えていたなかで、こうして早いタイミングで戻ってくることができたので本当にうれしいです」と、参戦が決まったときを振り返る塚越。第2戦オートポリスでの金曜専有走行を終えて、その喜びはひとしおのようだった。
「今年はチームにアドバイザーとして一緒にサーキットに来ていながらも、やはりドライバーとして来たいという思いが強くなっていたので、ドライバーとして戻れて本当に素直にうれしいですし、今日走行して、やはりフォーミュラカーを運転することは楽しいなと改めて思いましたね」
アドバイザーとして見ていた新型車両SF19での開幕戦は、どのように見ていたのか。
「予選から決勝まで結構、波乱の展開だったので、ドライバーからすればすごく大変な開幕戦になったと思います(苦笑)。チーム、ドライバーの作戦というよりも、その状況でのタイミングの問題だったり、実力以外の要素が絡み合うような開幕戦だったと思います。ただ、多くのドライバーにイレギュラーのチャンスがあったなかで、結局、上位に来たドライバーたちはこれまで実績を残してきたドライバーたちだったことを考えると、結果的には実力があるドライバーが上に来るレースだったのかなと思いました」
塚越は昨年、SUGOでSF19のメーカーテストに参加し、開幕前には富士での合同テストで半日SF19をドライブした経験があるが、他のレギュラー陣に比べると明らかに走行時間が少ないなかでの参戦となった。
「今シーズンに対しての走り込みはもちろん、十分な状態ではないですので、まずはクルマのセットとかいろいろなものを、昨年乗っていたとはいえ、もう一度インプットさせて体の感覚を改めて取り戻すという感じのセッションになりました」
そのオートポリスの金曜専有走行では一時トップタイムをマーク。最終的には9番手となったが、走行時間の短さを感じさせない走りを見せた。
「まあ、金曜日の走行なので、タイヤの状況はみんなそれぞれだと思います。程度のいいソフトタイヤがありましたので。でもまだクルマのフィーリングはコーナーによって感触がいいコーナーと、違うコーナーがあって戸惑っているので、そのあたりをこれからしっかりと修正していきたいと思います」と塚越。
当然、新型車両SF19の走行時間に加えて、ワイドになったフロントタイヤへの適応などなど、慣れない部分はまだまだ多い。ベテランの域に入りつつある塚越にとっても、不安があってもおかしくはない。
「当然、そういう思いもあるし、今シーズンの準備でいくと十分ではない部分もあるので、その部分を埋めなきゃいけないところもある。自分のキャリア、経験をしっかり活かして少しでも早く、みんなと戦えるところにもっていかないと、と思っています。今日もこうして久しぶりに乗ってみると、去年乗っていたとはいえ、あっという間に1時間が経ってしまったりで目まぐるしく終わってしまった(苦笑)。でも、不安というよりも走るのが楽しいですし、まずは今からスタートして、今シーズンここからどう良くしていくかで頭がいっぱいです。ですので、悩みと言うよりも楽しみの方が大きいです」
しかしその復帰戦の最初の予選日は雨の模様。いくら雨が得意の塚越といえども、やはり少ない走行時間を補うためにもドライで周回数を走りたい。
「できれば雨は嫌ですね(苦笑)。ドライですっきり走りたいです」
「こうやってチャンスが来て、そのチャンスをしっかり活かすことが大切ですので、チームにとってもできる限りの結果を残して、このチャンスをくれた感謝の気持ちを返したいなと思います」と締めた塚越。まずは明日の予選、雨でもドライでも、存在感を見せる走りで復帰を祝いたいところだ。