F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。今回は2019年F1第5戦スペインGPだ。
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☆ ケビン・マグヌッセン(ハース)
予選=8番手、決勝=7位
ハース対ハース、危険な“黒い匂い”が1~2コーナーに充満、やっぱり接触。どうしてなのか、どうしても当たってしまうこのふたり、誤解をおそれずに言えばどちらも同じクラシックなレーサータイプ。優等生ばかりのいまどき珍しい。
☆ ロマン・グロージャン(ハース)
予選=7番手、決勝=10位
ダブル入賞を喜んだのはメカニック達だろう(ボーナスは出るだろうか)。ビッグアップデート効果を確認できたエンジニア達も。レッドブル・ホンダのピエール・ガスリーに迫る予選1分16秒911は、3月テストでの自己ベストを0.165秒上回った。ようやく今季初ポイント、傷つきながら後方から迫るトロロッソ・ホンダの新人アレクサンダー・アルボンを抑えこむ。
☆☆ アレクサンダー・アルボン(トロロッソ・ホンダ)
予選=12番手、決勝=11位
混乱したダブル・ピットストップの前まで入賞圏内をしっかりキープ、4台ホンダ勢そろい踏み入賞も可能だった(誕生日のホンダ田辺豊治F1テクニカルディレクターはそれをいちばん期待していただろう)。この4戦に9位、10位、11位、11位、激戦区のなかで並べている。
☆☆ シャルル・ルクレール(フェラーリ)
予選=5番手、決勝=5位
ここでのSF90アップデートの効果を引き出すのが難しそうに見えていた。マシンバランスが安定しないアンダーステア傾向にラインが乱れ、予選でベッテルに0.3秒及ばなかった。ワン・ストップ戦略で第2スティントはハード、これが機能せず終盤苦戦。ずっと乗りにくかった週末・・・。
徐々に調子を上げてきたピエール・ガスリー
☆☆☆ ピエール・ガスリー(レッドブル・ホンダ)
予選=6番手、決勝=6位
ターン・アウトでいろいろな工夫をトライ、勤勉な性格がラップごとに感じられた。フェルスタッペンに0.351秒差の予選6番手、ここまでくればあともう少しの“課題”が自覚できたはず。終盤にルクレールを攻めたてた6位、5戦目の階段を這い上がる。
☆☆☆ セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)
予選=3番手、決勝=4位
開幕前テストより遅くなったフェラーリ。テスト最速の1分16秒221から1分16秒272に下落した予選タイムが、現状をはっきりものがたる。新スペックのパワーユニット(PU/エンジン)も空力アップデートも結実しなかった。であれば大胆な賭けいくしかない。
ベッテルはスタート勝負に(ルクレールは異なる戦略に)、結果的にどちらも成功しなかった。あえて言うなら“負け戦(いくさ)”に挑み、敗れたと総括するしかない。中低速エリアで曲がらない今のSF90のアンダーステア病を、フェラーリのマッティア・ビノット代表(技術責任者)はどう改善していくのか。一刻も早くとベッテル(の走り)に焦りが見られる。
☆☆☆ ルイス・ハミルトン(メルセデス)
予選=2番手、決勝=1位
フリー走行も予選も、まるでテストのように自己調整を進める。土曜フリー走行3回目トップタイムは開幕戦以来4戦ぶり、こんなハミルトンは見たことがない。王者は敵情を読み、スタートダッシュに集中力を傾け1コーナーを獲ると、トップラン・クルーズ。汗もかいていなかった。これで76勝、今年中にミハエル・シューマッハーの91勝記録にあと一桁まで迫るか。
■速さはあるものの、レース運がないダニール・クビアト
☆☆☆☆ カルロス・サインツJr.(マクラーレン)
予選=13番手、決勝=8位
マクラーレン・チームが“1-2”、ピットストップ・タイム最速サインツ2.07秒、つづいてノリス2.14秒。これはちょっと珍しい。元ポルシェチームで指揮をとっていた敏腕アンドレアス・ザイドルが現場に合流、オーガナイズに変化が起きつつある。
母国GPに強いサインツが終盤、セーフティカー導入時からスパート、ダニール・クビアト(トロロッソ・ホンダ)、グロージャンを次々にとらえ8位に。接近戦でのオーバーテイクがフェルナンド・アロンソのようで、地元ファンを喜ばせた。この4点でランク4位堅持、名門チームがじょじょに“地力”を見せ始めている。
☆☆☆☆ ダニール・クビアト(トロロッソ・ホンダ)
予選=9番手、決勝=9位
ピットの『コミュニケーションミス』が大事な場面で起きてしまった。マシンパフォーマンスではハースと対等にやりあえたのに、こういうミスは痛い。F1第4戦アゼルバイジャンGPではリカルドに“バック追突(?)”されるなど、レース運がない。現在わずか3ポイント、彼の実走力はこの程度ではないが。
☆☆☆☆ バルテリ・ボッタス(メルセデス)
予選=PP、決勝=2位
コースタイプが異なるだけに、3戦「ハットトリックPP」を決めた一撃能力は素晴らしい。完璧なマシンバランスに仕上げているのは、担当エンジニアと彼自身の協業による。スタートでわずかに遅れ、1コーナーで引かざるを得ず、ハミルトンの後方で“2位キープ”。チームプレイヤーに徹するほかなかった。
☆☆☆☆☆ マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
予選=4番手、決勝=3位
グリップとパワーを99.9%レベルでコントロール。綺麗なF1ドリフトをあちこちで見せてくれる。稀にラインが膨らみコース幅から外れかけても瞬時に反応、決して乱れない。超速マシンのパフォーマンスと彼のベスト・ドライビングが際立つ今シーズン。いよいよ最大の注目戦、モナコGPを迎える。