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新卒では大手とベンチャー、どちらに行くべき? 大事なのは「自分ならではの価値を高められるか」ということ

2019年05月17日 07:10  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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就職活動をしている学生や第二新卒の方に「大手とベンチャー、どちらに行くべきか」「一度ベンチャーに行くとその後大手への転身が難しいのではないか」と聞かれることが多々あります。また、給与水準も大手の方が安定して高いのでは? と考える方も多いです。その手の疑問を持つ方々に、本日も事例を交えてお話しさせていただきます。

一般的に世間では、

「ベンチャー企業はリスクが高いが給与は低い」
「大企業は若いうちは安いかもしれないが、安定していて年々昇給していく」

というイメージがあります。また、未だに親世代の間では「こどもは大企業に就職してほしい」「できたら公務員にしたい」という考えが根強く、若い人の中にも「安定した雇用環境こそが正義」だと信じている方が少なくありません。私も二人の子を持つ身ですので、わからないわけではありません。(文:エックスエージェント株式会社代表 飯盛崇)

"大手だから安心"とは言えない時代


しかし最近は、富士通が45歳以上の社員を対象に希望退職者を募集するというニュースが話題になったり、トヨタの社長が「終身雇用を守っていくのは難しい」と発言したりするなど、大企業勤務だからと言って安心はできない状況です。

一方で、スタートアップへの転職者の平均年収が720万円を超えたという調査もあります。これらは高度経済成長の日本を支えてきた労働環境や慣習が崩れ、新たな価値観や働き方が必要なタイミングにきていることを象徴しています。「大企業は給料が高い。安定している」「ベンチャー企業は薄給で忙しい」という画一的な価値観は当てはまらなくなってきている、と言えるでしょう。

私が今もし学生で就職先を考える状況だとしたら、ベンチャーか大企業かという以前に、「自分が今後生きぬく力が身につくか」という点を最重視します。それと同時に「時流」にのったサービスやプロダクトを出しうる会社なのか、という点も考えます。

成長企業にはチャンスが多くあり、ポストや給与も増えますし、何より様々な経験・知見を得ることができます。逆に今時点で就職人気ランキング1位だったとしても、その会社が今後廃れていくマーケットで勝負していたり、需要が減りゆくサービスを主力商品として提供しているのであれば慎重になるべきです。

むしろ今はまだ小さな企業だったとしても、社長のビジョンやサービスの提供価値がすばらしく、かつ今後市場の成長も見込めるのであれば、魅力的と言えます。ただ、今では凋落著しい某総合電機メーカーも、30年前は就職人気ランキングトップ10の常連だったわけで、プロダクトサイクルが短くなり市場が複雑化してきている昨今、会社選びはより難しくなっていると言わざるを得ません。

大手からもベンチャーからも求められる人材

ではどうすればいいのか。これが正解、というものはないですが、参考事例はあります。私が以前経営していたベンチャー企業に新人でとても優秀な社員がいました。学生時代からインターンとして働き、結果として正社員入社したのですが、自ら課題を設定し仕事を創り出せる人間でした。

医療系の有資格者でもあり、サービス企画やマーケティングにも積極的に取り組んでいた彼女は、入社後一年も経たないある日、業界大手からスカウトされ転職してしまいます。ベンチャー企業には大きな痛手ですが、結果として彼女の年収は新卒にも関わらず1.5倍ほどになりました。彼女は「医療系有資格者」が「サービス企画」や「マーケティング」の経験・知見を身につけることで、「市場価値の高い」「希少」な人材となっていたのです。

実はこの手の話は珍しいことではなく、最近は大企業こそ「新規事業」を創れる「スタートアップ思考」を持つ人材をより欲しがる傾向にあります。また、彼女のように、複数の資格や経験を重ねれば、市場で欲しがられる人間になることは企業規模に関わらず可能です。

「ベンチャーから大手に行けるの?」などという短絡的な視点ではなく、「自分ならではの価値をいかに高めていくか」が、今後のビジネス人生を豊かにする大きな鍵なのです。自分のキャリアは自分で切り開いていく時代。さあ、あなたは何で勝負しますか?

【著者プロフィール】飯盛崇

エックスエージェント株式会社 代表取締役。1997年に富士通に入社し営業と人事を経験したのち2005年より株式会社リクルートへ。総合企画部、HR営業、人材育成業務に従事。退職後、慶應義塾大学大学院経営管理研究科に進み在学中に3社創業。うち株式会社iCAREではCEO、COOを歴任し創業から6年間事業を牽引。現在はスタートアップ・ベンチャー企業特化型の人材紹介会社を経営し、起業支援団体「メンター三田会」の事務局も務める。経営学修士(MBA)。