TCRシリーズを統括するWSCグループが2020年からのシリーズ創設を目指している世界初の電動マルチブランドツーリングカーレース『ETCR』に向け、ウイリアムズ・アドバンスド・エンジニアリング社がバッテリーと車両制御モジュール(VCM)の設計、開発、製造、供給の契約を締結したことが発表された。
激動の自動車業界と未来のモビリティ社会に向け、モータースポーツの世界でも電動化の技術開発に貢献すべく、EV技術研究のプラットフォーム的役割が期待されているETCRシリーズ。
内燃機関による現行TCR規定ツーリングカーと同様に、市販ロードカーでのボリュームゾーンでもあるCセグメントのハッチバックやセダンモデルを基本とし、モータースポーツをより広範囲の量産車に関連させること目指している。
シングルシーターレースの世界で先行するFIA ABBフォーミュラE選手権と同様に、100%電気自動車による世界初のツーリングカーレースを標榜するETCRシリーズは、ヨーロッパを中心にアジア、北米での選手権開催を計画。
データロガーを含むレース情報をリアルタイム配信することで、ユーザーやファンが積極参加できる環境をオンライン上に構築し、市街地やパーマネント双方のレーストラックでのイベントごとに、新たなデジタルフォーマットを駆使したユーザーエクスペリエンスを提供するとしている。
このETCRシリーズに電動コンポーネントを供給することになったウイリアムズ・アドバンスド・エンジニアリングは、F1で使用されたKERSの基礎開発やモジュール供給、そしてフォーミュラEの第1~4シーズンでバッテリーサプライヤーとして選手権を支えた経験を持ち、そのレースでの信頼性は99.5%を越える数値を記録した。
同社のビジネス開発ディレクターであるイアン・ワイトは、ETCRとの供給契約締結に際して「WSCグループのチームと協力してモータースポーツでの技術開発を継続し、電気自動車の進歩と持続可能なモビリティの未来をともに作り出していけることを光栄に思う」と語った。
「モータースポーツでの成功は我々のバックボーンであることは間違いない。それ以外にも、路面電車やその他の民生技術を通じて電動化のノウハウを蓄積してきた。ETCRのように野心的なビジョンを掲げるシリーズに、ウイリアムズの名を関連づけることができてうれしく思っている」
そしてTCRカテゴリーを創設し、わずか数年間でグローバルに展開する巨大シリーズに育て上げたWSC代表のマルチェロ・ロッティも、実績あるサプライヤーとの供給契約に「満足している」と、電動ツーリングカーでの新規展開にも自信を見せた。
「モータースポーツについてすべてを知っていると言っても過言でない企業と、こうしてまったく新しい未来を目指したシリーズの発展に力を合わせることができてうれしく思う」と、喜びを語ったロッティ。
「TCRブランドを運営するWSCとしては、間違いなくここ数年で最も勢いのあるモータースポーツカテゴリーを創設したと自負しており、世界のツーリングカー事情を再定義したとさえ感じている。そのベースに加えて、ウイリアムズの有する電動化の技術ノウハウを新たなシリーズで活用することは、TCRにとっても論理的なステップだと考えている」
現時点で、ETCRに向け公式に参加をアナウンスしているのはセアトのモータースポーツ部門であるクプラ・レーシングのみとなっているが、今後はドイツ勢を中心に多くのマニュファクチャラーが関与を表明するとみられている。