インディカー・シリーズ第5戦インディカーGPで優勝したシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)は満面の笑顔だった。
2016年にチャンピオンになったパジェノーだが、昨年はチームメイトふたりがチャンピオン争いを行なう中で1勝も挙げることができず、その能力に疑いを持たれるようになっていた。
そうした声を吹き飛ばす、見事なウエット・ドライビング・パフォーマンスだった。2017年最終戦ソノマ以来の優勝。彼はようやく重くのしかかっていたプレッシャーから解き放たれた。
「他のドライバーたちは燃費セーブをしているのか?と感じるぐらい僕らのマシンは速かった。雨が降り出し、チャンスと思ってプッシュして走ると、ブレーキのパフォーマンスが非常に良いとわかり、次々オーバーテイクを実現、自信を持って攻める走り続けた」
「すると、ライバルたちの苦戦ぶりも見えてきた。乾いてきた路面でタイヤの磨耗が進んでいたようだ。僕のタイヤは減っていなかったからプッシュし続けた」とパジェノーは饒舌だった。
今回のレースに向け、マシンを非常に高いレベルに仕上げられたところにも彼は自信を深めたのだった。ふたりのチームメイトたちを上回る走りを今回の彼はレースで見せていた。
トップを走るスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)はポイントランキング3番手で、6度目のタイトルを狙えるポジション。対するパジェノーはランキングが11番手。しかも長いこと勝ち星から遠ざかっている彼は失うものが少なく、リスクを承知でプッシュし続けることができ、それが功を奏した。
幸運も重なった。エリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)のスピンによるフルコースコーションが出た時、彼はピットに入らずトップに立ちはしたが、その作戦は明らかに失敗だった。
履いていたのはスリックタイヤでゴールまで燃料が持たない状況だったからだ。カストロネベスのマシン除去に思わぬ長い時間が必要とされている間にパジェノー陣営は作戦の失敗に気づき、ピットしてレインタイヤに交換し、燃料も補給した。
まんまと作戦修正に成功したのだ。そして同時に、ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)、グラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)ら多くのトップコンテンダーたちが同じタイミングでレインタイヤに交換するためピットイン。パジェノーはリスタートを6番手で迎えることができた。
ここから5台をパスして優勝したのだから、彼のウエット・ドライビングは見事だった。そして、フルコースコーションの長さも絶妙だった。あともう1周イエローが続いていたら、彼のラスト2周での大逆転は不可能となっていた。2時間ルール適用で規定の85周ではなく、83周でチェッカードフラッグが振られていたからだ。
「2018年は新しいエアロパッケージを理解するのに費やしてしまった。優秀なチームメイトたちと、エンジニアたちと一緒に問題解決に全力を投入」
「僕らは基本に立ち返ってエアロの理解に努めた結果、レースを重ねる度にマシンが良くなっていった。僕は徐々に自信を取り戻して来ている」とパジェノーはレース後に語った。
チーム・ペンスキーは3人を走らせる体制をフル活用、ベストのセッティングを見つけ出すためにレースウイークエンドの3台に異なるセッティングを施し、ドライバーたちにフィードバックをさせている。
そうした多くのセッションで、パジェノーがチームメイト3人の中で最も遅いケースの多い。それは彼がマシンの様々な状況に対応してドライビングする能力でチームメイトたちに劣っているからだ。マシンを自分のものとするのに時間がかかるのだ。
それでもパジェノーは、「今年はもう新エアロパッケージに対する不安を感じていない」と話している。
今年の開幕戦から5レースを振り返ると、昨シーズンと同じで、パジェノーはウィル・パワーとニューガーデンというふたりのチームメイトに対してパフォーマンスで見劣りする状況が続いているのにだ。
パジェノーは、今回の勝利で悪い流れを一気に良い方へ変えることが可能と考えている。その根拠を、「僕のドライビングは、タイトルを獲得した2016年よりレベルが上がっているから」と彼は語っている。
復活の勝利を挙げたパジェノー。その勢いでインディ500でも活躍をみせるだろうか?