採用難時代において、多くの企業が「できる採用担当者」を探しています。弊社にも「いい採用担当者、いませんかね?」という相談がよく来ます。
ただ、条件を伺うと「こういう採用経験が何年以上で」などと、たいてい経験者を要望されます。採用がプロフェッショナルな仕事と認知されていることは喜ばしいのですが、あえて断言すると、「できる採用担当者」が欲しいのであれば経験を問わない方がよいと思います。
できる人事を左右する「パーソナリティ」
一つ目の理由は、人事部員だけが人事をしているわけではないからです。人事部にいたかどうかではなく、これまでの仕事において「人事的な業務」をしていたかどうかが重要です。
経営者やマネジャーであれば「人を見極め、適した仕事をアサインし、成果を評価し……」といったことを日々やっているでしょう。その仕事の半分は、まさに人事です。
役職に就いていなくても、営業もできる人ならクライアントのことをよく見極めて提案しています。また、どんな職種でも後輩がいる職場であれば、モノを教えることは普通にしているものです。
二つ目の理由は、人事や採用の仕事においては、知識やノウハウよりも「パーソナリティ」(性格や基礎的な能力、志向や価値観)が重要になるからです。
採用ツールやメディア、労働法や人事制度などに関する知識など、3か月も一生懸命勉強すれば一通り実務レベルにはなります。採用の仕事では、知識では差がほとんどつきません。
「未経験者を採って鍛える」のがおすすめ
採用担当者の「できる/できない」は、人に対する興味関心の強さ(モチベーションリソース)や対人の理解力や影響力(面接や動機付けの基礎)、自分が経験していないことを想像する力(いろいろな職種を採用するため)などのベーシックな部分が大きく左右するのです。
経験者に限って採用担当者を採用しようとすると、そもそも優秀な採用担当は転職市場にはなかなかいないので採れません。
お勧めは、ポテンシャル重視で「未経験者可」で募集を行い、採用をする方法です。その際に、選考は前述したパーソナリティを中心とした基準で行うことが大事です。
これまで、営業しかしたことのない人がすぐにトップ採用マンになったようなケースを山ほど見てきました。入社したら、すかさず知識やノウハウ系をきちんとインプットしていけば、3か月も待てば「できる採用担当者」になるのです。
【筆者プロフィール】曽和利光
組織人事コンサルタント。京都大学教育学部教育心理学科卒。リクルート人事部ゼネラルマネジャーを経てライフネット生命、オープンハウスと一貫として人事畑を進み、2011年に株式会社人材研究所を設立。近著に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)。
■株式会社人材研究所ウェブサイト
http://jinzai-kenkyusho.co.jp/