F1第5戦スペインGP決勝レース後の山本雅史F1マネージングディレクターは、ホンダ製パワーユニット(PU/エンジン)搭載車全4台の入賞を逃したことが本当に悔しそうだった。しかし一方で、レッドブルが実力でフェラーリを破って3位表彰台を獲得したこと、しかもマシンの実力が如実に出るカタロニア・サーキットでの達成は、素直に喜んでいた。
──開幕戦以来の表彰台獲得でした。
山本雅史F1マネージングディレクター(以下、山本MD):開幕戦より、もしかすると嬉しいかもしれません。もちろん初表彰台はすごく嬉しかったですが、メルボルンは非常に特殊なサーキットで、戦闘力の正確な指標にはなりえない。それに対してここはオーソドックスなコースですし、各チームが走り尽くしている。そこでフェラーリと、互角で戦えたわけですからね。
まあ互角というか、マックス(フェルスタッペン)に頼りすぎていた部分もありますけどね(苦笑)。それも含めての総合力ということで、さすがレッドブルという印象を改めて持ちました。感謝ですよ。
──いっぽうでメルセデスには、まだかなわない状況です。
山本MD:ええ。さらに差が開いたという方が、正確でしょうね。ヨーロッパラウンド初戦の今回がいわば第二の開幕戦ですが、メルセデスの強さを改めて思い知らされました。次はモナコで去年までだったらレッドブルの独壇場でしたが、今年はよほど何か手立てを考えないと。
──このサーキットの低速区間セクター3でのメルセデスの速さはすごいです。
山本MD:でしょう。実は決勝日の前夜、(バルテリ)ボッタスがポールポジションを取った時の車載映像を繰り返し見ていたんですよ。本当にドライビングに無駄がない。踏まなきゃいけないところで踏めていますしね。予選ラップの速さは尋常じゃないのに、それであれだけスムーズに運転できる。
──カウンターステアが皆無でした。
山本MD:そう。何度も見ながら、相当頑張らないと追いつけないなと思いました。
──メルセデスの1強体制は、想定外でしたか?
山本MD:完全に想定外でしたね。今の技術レギュレーションは、今年ある程度変わったとはいえ、かなり成熟の域に入っています。各チームのレベルが、いっそう拮抗してもおかしくない。上位のメルセデスは、もはやそこまで大きな伸び代はなかったはずなんですけどね。
■チームの総合力でフェラーリと戦える状態に
──パワーユニットに関しては、差は縮まってますよね。
山本MD:ええ。でもそれ以上にマシンパッケージとしては、メルセデスが何かを見つけて速くなっている。とにかく安定していますよ。速かったですね。
──レッドブル・ホンダは、フェラーリが射程距離に入ってきましたか?
山本MD:そうですね。パワーユニットはまだ負けていますが、車体とチーム力で戦えています。チーム力と言う時はドライバーも含まれますから、まさにマックスがフェラーリ相手にいい戦いをしてくれています。
──次のモナコは、少なくともフェラーリよりも速いのではないでしょうか?
山本MD:僕もそう信じたいですし、レッドブルならやってくれると思います。まずは予選で、少なくとも2列目までにいないと。
──トロロッソ・ホンダは、去年より確実に戦闘力を上げている。しかしそれが今回も、残念ながら結果に繋がりませんでした。
山本MD:今回は、セーフティカーのタイミングもありましたしね。ダブルピットインを強いられて、そこでスムーズにいかなかった。あれがなければ、4台入賞は十分可能でした。クビアトも、7位入賞できたと思いますし。でもとにかくカタロニア・サーキットでの3位表彰台は、意義ある結果です。総合力で、フェラーリを破って勝ち取った。それは、よかったですよ。