2019年05月15日 10:11 弁護士ドットコム
信号のない道路を横断する人を見て「危ない!」と思ったことはないだろうか。数メートル、数分歩けば横断歩道があるのに、その手前で渡ってしまう横着な行為。これを最近では、「乱横断」と呼ぶようだ。
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交通量の多い都心部でも、乱横断をあらゆるところで目撃する。弁護士ドットコムニュース編集部のある港区六本木でも、高齢者がキャリーを引きずって渡ったり、サラリーマンたちが徒党を組んで走って行ったりする場面に度々、出くわす。
乱横断の法的なリスクとは何か。もし乱横断する人と車が事故になった場合、過失割合はどのように判断されるのか。中川龍也弁護士に聞いた。
ーー乱横断をした場合、過失割合は高くなるのでしょうか
「歩行者は、道路を横断しようとする場合は、横断歩道付近においては、横断歩道で道路を横断しなければなりません(道路交通法12条1項)。
横断歩道ではなく、その付近を横断して衝突された場合、横断歩道により横断した歩行者以上の過失が認められるべきとされています。
そのため、横断歩道を横断せず衝突された歩行者の基本過失割合は、30パーセントと高い過失割合となっております」
ーー交差点付近で横断歩道が設置されていない場所を横断した場合にはどうですか
「交差点付近で横断歩道の設置されていない場所において、歩行者が道路を横断しているときは、車両は歩行者の通行を妨げてはなりません(道路交通法38条の2)。
車両よりも歩行者が優先されるべきと考えられています。そのため、交差点付近で横断歩道の設置されていない場所において歩行者が横断中に事故にあった際は、歩行者の基本過失割合は、10パーセントから20パーセントとされています」
ーー中には、横断歩道や交差点が近くにない場所もあります。こうした場合には、どうなりますか
「横断歩道や交差点が近くにない場所において、歩行者が横断を行った場合は、前述したケースの中間的な過失割合が適用されるべきと考えられています。
横断歩道や交差点付近ではない場所において横断を行った場合、歩行者の基本過失割合は、20パーセントとされています」
ーー乱横断による事故では、過失割合が高くなることがあるとはいえ、それでも歩行者が有利とも言えそうですね
「歩行者が車両にひかれたケースでは、歩行者が重大な障害を負うことも少なくなく、そうなった場合には歩行者が多額の損害を被ることもあるため、法的には、歩行者に有利な過失割合が設定されています。
また、歩行者が幼児・児童・高齢者であった場合や、事故現場が住宅街・商店街であった場合には、更に歩行者に有利に過失割合が修正されることになります」
ーー悪質な乱横断では、過失割合がより高くなる可能性はありませんか
「夜間、車両の見通しの悪い中での『乱横断』や、高速で車両が行き交う幹線道路上での無謀横断は、歩行者に不利に過失割合が修正されることもあります。
このような『乱横断』の場合には、50パーセント近くの過失が歩行者に認められることもあります。車両との事故で歩行者が重大な障害を負うと、その障害の治療のために必要となる治療費や介護等の費用が十分保障されない事態にもなりかねません。
青信号で安全に渡ろうとしていても、車両運転者の著しい不注意により不測の事故に巻き込まれるケースもよく目にしますので、歩行者があえて自ら危険な横断行為を行わないようにして欲しいものです」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
中川 龍也(なかがわ・たつや)弁護士
立命館大学卒。平成22年弁護士登録(京都弁護士会所属)平成28年11月に中川龍也法律事務所を設立。主な取り扱い分野は交通事故(主に被害者側)事件。
事務所名:中川龍也法律事務所
事務所URL:http://nakagawa-lawyer.com/