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EXILE SHOKICHIが語る、ソロ作『1114』で目指したもの 「今はトレンドを意識してない」

2019年05月15日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 EXILE SHOKICHIの2ndアルバム『1114』には、EDM、ヒップホップ、トラップ、オルタナティブR&Bなど、欧米のポップミュージックのトレンドが詰まっている。ところが本人に話を聞くと、特に最新のものを志向しているわけではなく、ただオリジナルな音楽を制作することを目指しているという。そのポイントは、ライブでファンと一緒に楽しめることだ。EXILE、EXILE THE SECOND、そしてソロでJ-POPのメインストリームに身を置きながらも、EXILE SHOKICHIは自身を客観的に見て強みを発揮する。このインタビューは、シンガーのみならず、ソングライター、プロデューサーとしてのEXILE SHOKICHIの言葉だ。(宗像明将)


参考:EXILE SHOKICHIが語る、写真集『BYAKUYA』への自信「身体で表現するアートというイメージ」


■オリジナルな音楽を作りたい


――『1114』には最新のダンスミュージックの要素が入っていて、2014年にSHOKICHIさんがソロ活動を始めた頃よりも、さらに尖っている印象を受けます。ふだん聴いている音楽は、どんなものでしょうか?


SHOKICHI:幅広く聴いてます、ヒップホップ、ポップ、R&Bも聴きます。クラブミュージックだと、最近はテックハウスを聴いていますね。EDMのバズりがあって、その流れがテックハウスにシフトしてきているのかなと感じます。


――『1114』にはEDMやヒップホップの要素もありますし、トラップが鳴っている楽曲や、ボイスの入ったオルタナティブR&Bのようなサウンドも入っていますね。「プラトニック・ラブ」は、ボイスが入っていてトラップも鳴っていますが、どういうイメージで作ったトラックでしょうか?


SHOKICHI:実は最初はピアノだけで作っていたんですけど、スタジオでトラックをプロデューサーと一緒に作ったときに、J-POPとトラップが混ざったようなバラードを作りたいなと思って。トラップ要素も強くなって面白い曲になったなと思いますね。気に入っています。メロディもラップもあって、自分のオリジナリティを表現できた曲になりました。「プラトニック・ラブ」はEXILE SHOKICHIの真骨頂なのかなと思っています。


――「EXILE」という名字が付いているなかで、EXILE的なイメージとSHOKICHIさんのソロ活動のバランスはどのように考えていますか?


SHOKICHI:特にEXILEだからどうのこうのとか、違うEXILEを見せられるようにとか、そういうことはあんまり考えていないですね。それより、オリジナルな音楽を作りたいと思うんです。一番気にしてるのは、「こういう曲だったらライブで一緒に楽しめるかな」とか「こういう曲だったらわかりやすく喜んでもらえるかな」とか、そういうことなんです。


――これからツアー『EXILE SHOKICHI LIVE TOUR 2019“UNDERDOGG”』も始まりますけど、『1114』はそれを意識した作りになっているわけですね。


SHOKICHI:もちろんそうです。そこに向けて曲を作ってきた感じですね。


――「Midnight Traffic」にもとても驚きました。オルタナティブR&Bのようで、洋楽のトレンドをつかんでいますね。


SHOKICHI:あの曲に関しては、わりと好き勝手に作ったんです。実は3年前に作った曲なんですよ。


――じゃあ、SHOKICHIさんが作っていたものが、期せずして欧米のトレンドに乗ってしまった?


SHOKICHI:最近のアメリカのソウル事情を見ていて、「今この曲はハマるな」って。この曲だけはストックを使ったんですよ。すごく今の時代に合ってますよね。


――逆に今のJ-POPシーンは、SHOKICHIさんの目にはどう映りますか?


SHOKICHI:オリジナリティがすごいですよね。世界のどこにもない音楽だし、日本が誇るべき文化だと思います。


――そのなかでSHOKICHIさんの『1114』はどういう位置づけだと思いますか?


SHOKICHI:J-POPは多ジャンル化しているので、特に意識することなく、自分はオリジナルの音楽を作っている感じなんです。棲みわけされない音楽になったなと思いますね。以前はアメリカのヒップホップとか、トレンドと言われているものを意識して自分の曲に落としこんでたんですけど、今はそれをまったく意識してないですね。


――SHOKICHIさんほどの人がそこまで振りきれたのは、どういうきっかけだったのでしょうか?


SHOKICHI:成長できたからだと思います。もちろん、「これトレンドじゃん」みたいな曲調や音もあるんですけど、昔のように「この音色使わなきゃ」みたいな感じは今はもうまったくないですね。ただただ、「ファンの人が楽しんでくれるかな」とか「これだったらライブが絶対盛りあがるでしょう」みたいな感じの表現の仕方ですね。


――『1114』では歌の存在感もとても大きいと感じます。「Midnight Traffic」は、このBPMとサウンドで聴かせるとなると、SHOKICHIさんの歌にかなりの艶がないと成りたたないなと感じました。


SHOKICHI:めっちゃくちゃ難しいです。3年前に作ったと言いましたけど、3年前に歌ってたら、こんなに表現できてなかったと思います。もう限界までレイドバックして歌っているけど、今ようやくそれができるようになったんです。つまり、ビートの上に、自分の声をオンで合わせずに、ちょっと後ろにズレているというか。


――それがSHOKICHIさんの歌の色気を引きだしてますね。


SHOKICHI:はい、そういった表現を意識してますね。


■EXILE THE SECONDで成長できた


――その3年間に、EXILE、EXILE THE SECOND、ソロの活動がありましたが、どれが一番大きかったですか?


SHOKICHI:EXILE THE SECONDの活動がすごく大きかったですね。2枚アルバムを出して、2回ツアーをして、そのほとんどの曲を自分でプロデュースできたので。ツアーも自分のアイデアをたくさん試せたし、自分が音楽に向き合える時間をくれましたね。


―― EXILE THE SOCONDでは、ベースミュージックに接近していたことにもとても大きな衝撃を受けたんです。


SHOKICHI:そうですね、曲の作り方はEXILE THE SECONDで成長できたと思います。もちろん自分の歌についても考えました。「自分の武器はここで、自分の良さはここで、そしてここはまだ伸びしろがあるな」とか。


――そうやって客観的に見られるところはSHOKICHIさんの強みですね。


SHOKICHI:確かに自分の強みの1個は、自分を俯瞰して見られるところだなと思います。ソロの最初の頃から比べると、自己プロデュースができるようになりました。


――そうした歌を聴かせる「白夜」はバラードですが、トラップも鳴る。すごく面白い構造ですね。


SHOKICHI:J-POPとR&Bがミックスされて、J-R&Bのおいしいところ取りみたいな感じです。


――SHOKICHIさん自身にとって、本当に刺さる音楽を作っているとも感じます。


SHOKICHI:そうですね。トレンドは意識しなくても、制作は常に新しいものを作ろうとしています。先日はBALLISTIK BOYZのデビュー曲を作曲させてもらったし、そういうプロデュース業も活発にしていきたいですね。


――「君に会うために僕は生まれてきたんだ」はピアノバラードですが、ラウドなドラムも鳴っていて、ビートの作りがヒップホップだと思いました。


SHOKICHI:ははは、たしかに。ちょっとふざけてるかもしれない(笑)。みんなで楽しみながら、「ここでこの音色を入れたら面白くない?」みたいな感じで、自分たちの遊びの一環のようにしてできた曲でもありますね。


――『1114』を聴いていてすごいなと思ったのは、キャッチーな部分と尖っている部分のバランスがちゃんと取れていることなんですよね。


SHOKICHI:どんなジャンルになっても、どんなドープな仕上がりになっても、キャッチーなフレーズを入れたりして、聴きやすいポイントやメリハリをどこかで作ることにはこだわっていますね。


――「Ooo!」も、こんなにタイトなビートが鳴っているトラックをあまりJ-POPで聴いたことがないんです。


SHOKICHI:これは自分のなかでもどういうジャンルの音楽かわからないぐらいの曲ができたなと思っているんです。ブルーノ・マーズと一緒にグラミー賞を獲った、The Stereotypesというプロデューサーチームと一緒に作った曲で、去年EXILEのアルバム『STAR OF WISH』の「STEP UP」という曲を作るときに来日してくれて、一緒にライティングセッションをして。そのときに1時間ぐらい時間が余って、「もう1曲やろうよ」みたいな感じになって。そこに彼らのストックのトラックがあって、自分がメロディをパパッと作って、15分ぐらいでできた曲なんです。アドリブな楽曲だったんですけど、いい完成度で。自分のアドリブ力やキャリアを感じた瞬間でもありましたね。


――自分が培ったものが発揮されている感触というものは、この数年ではありましたか?


SHOKICHI:しばらくはなかったんですけど、『1114』が完成したときにありましたね。


――逆に、この数年なかったというのがすごく意外です。


SHOKICHI:感じる間もなく走り続けてきましたからね。その代わり、ソロプロジェクトでは、これまで培ってきたことを存分に活かして「自分しか歌えないだろうな」という要素もガンガン詰めてますね。ジャンルの幅も広がったし、自分の可能性は無限なんだなと改めて思っています。


■いろんなEXILE SHOKICHIを見せられたら


――「サイケデリックロマンス」ではSALUさんがフィーチャリングされています。2018年のSALUさんとの「Good Vibes Only」も、BPMがゆっくりしたなかにラガマフィンっぽいボーカルが乗って、傑作だと思ったんです。今回は、そこからトロピカルなアプローチになっていますね。


SHOKICHI:「Good Vibes Only」が去年の夏を盛りあげられた感じがしたので、「Good Vibes Only」2019年版のような夏っぽい曲を作れたらいいなという感じでスタートしましたね。ツアーが夏なので、この夏の思い出をこの曲に刻みたいと思っています。ファンのみなさんと一緒に、こういうノリで、こういう動きで、こういう照明でって、すごく細かいディティールを自分のなかでは想像できます。


――ファンのみなさんが付いてきてくれるだろうっていう確信があるんですね。


SHOKICHI:あります。それはキャリアがあるからだと思いますし、自分とファンのみなさんとのつながりがあるからこそだとも思います。


――SALUさんとは、一緒にKOMA DOGGのプロジェクトも進めていますが、KOMA DOGGの今後の展開はどう考えていますか?


SHOKICHI:次の一手にちょっと慎重になりすぎていたんですけど、よりアグレッシブに、いろんなアーティストを入れて、さらに盛りあげて、コンピも出せたらなと思っています。より活発化させていきたいです。新しいラッパーやシンガーに入ってほしいですし、コーラスグループがいても面白いですし。


――そして、「Underdog」ではギターがうなっていて、でもビートはヒップホップっぽいテイストがあります。面白いミクスチャーですね。


SHOKICHI:そうですね、まさにミクスチャーな曲だと思います。自分は中学のときにバンドミュージックから音楽をスタートしているので、一番のルーツを使って、トラップミュージックと一緒に新しいアプローチをできたんじゃないかなと思いますね。


――ちなみに中学生の頃に演奏していたのは何だったんですか?


SHOKICHI:X JAPANのhideさんとかをカバーしていましたね。


――「Underdog」のギターにもその影響が?


SHOKICHI:そうですね。自分の青春みたいなものが詰まっていると思いますね。


――SHOKICHIさんの面白いところは、自分のルーツも、ポピュラーなものも、すごくエッジなものも、躊躇なく掛けあわせるところだと思うんです。


SHOKICHI:そうですね、ルールを設けてないですね。


――ルールを設けたほうが楽じゃないですか。『1114』では、SHOKICHIさんはあえてリスクを取りにいっているイメージもあります。


SHOKICHI:飽き性なので。似たり寄ったりな曲を作りたいと思えないんですよね。インパクトのある曲を作りたくなっちゃう性(さが)というか。あと、やっぱりツアーは自分ひとりなので、2時間以上のショーを飽きさせないぐらいのいろんなEXILE SHOKICHIを見せられたらなって思っています。それがアルバムに表れていると思いますね。


――ファンのみなさんがSHOKICHIさんに求めていることと、自分でやりたいことは一致していると思いますか?


SHOKICHI:一致していますね、総合エンタテインメントです。歌って踊って、楽器を演奏して、アドリブ満載で。ミュージカリティの高いショーを期待していると思うので、僕もしっかり想像を超えられるようなライブにしたいなと。自分の音楽を楽しみにしてくれている感じが強く伝わってくるので、音楽家としてもやりがいがあります。


――そして、「Futen Boyz」は歌モノっぽいですが、ビートはやっぱりヒップホップですね。


SHOKICHI:基本的にヒップホップ好きなビートメイカーと作るので、そういう感じが多いのかもしれないですね。僕がすごくポップなメロディーラインを持っているので、どんなプロデューサーとやっても自分色にできる感じがあるんですよね。


――今後、自分の音楽はどう変わっていくと予想していますか?


SHOKICHI:いろいろとやってきましたけど、さらなる突破口を見つけたいと思います。音楽性は定めてないので、スタジオに入って「ああでもない、こうでもない」とやりながら作っていきたいですね。今、海外にも自分たちのスタジオがあるので、そこを駆使して「よりJ-POPを世界に」という目標もあります。(取材・文=宗像明将/写真=富田一也/ヘアメイク=大木利保/スタイリスト=JUMBO(SPEEDWHEELS))